介護の仕事に就いたばかりの方、またはこれから介護士として活躍したいと考えている皆さん、こんな悩みを抱えていませんか?「移乗介助って腰を痛めそう…」「利用者さんの体を傷つけないか不安…」「どうすればもっと効率よく、安全にできるんだろう…」。移乗介助は、食事や着替えの介助とは異なり、身体的な負担が大きいと感じやすいですよね。特に、毎日繰り返すとなると、自分の腰や肩、そして利用者さんの安全も心配になるはずです。でも安心してください。実は、ちょっとしたコツと考え方を身につけるだけで、誰もが驚くほど負担を減らし、もっと楽に、もっと安全に移乗介助ができるようになります。この記事では、現場のプロが実践している、9割の人が知らない「移乗介助の極意」を、誰にでもわかるように徹底解説します。
移乗介助と移動介助、その決定的な違いとは?

介護のイメージ
まず、よく混同されがちな「移乗介助」と「移動介助」の違いを明確に理解しましょう。この二つの違いを把握しておくことは、適切な介助方法を選ぶ上で非常に重要です。
移乗介助の役割と本質
移乗介助は、ベッドから車いすへ、車いすからトイレへ、といった「ある場所から別の場所へ乗り移る動作」をサポートするものです。この介助の本質は、利用者さんが自分の力だけでは難しい「起点から終点への身体の移動」を助けることにあります。対象となるのは、麻痺があったり、筋力が著しく低下していたりして、自力で身体を起こしたり、向きを変えたりすることが困難な方々です。介護の場面では日常的に行われる行為ですが、利用者さんと介護者の双方が身体的な負担を感じやすいデリケートな介助でもあります。利用者さんは体を動かすことで痛みを感じることがあり、介護者は不適切な姿勢で腰を痛めるリスクを伴います。
移動介助の役割と目的
一方、移動介助は、歩行が困難な方や、車いすの操作が難しい方が「目的地へ向かって移動する」のをサポートするものです。例えば、病院の廊下を歩いたり、スーパーマーケットの中を車いすで進んだりする場面がこれにあたります。単に乗り移るだけでなく、歩くことや車いすを操作すること、そしてその道中の安全確保が主な目的となります。段差や混雑した場所など、外部環境による転倒リスクを軽減するため、見守りや補助が中心となります。
「ボディメカニクス」を極める!負担を激減させる黄金の5原則
移乗介助の負担を劇的に減らすためには、ボディメカニクスという考え方が欠かせません。これは、てこの原理や重心移動といった物理学の知識を応用し、少ない力で安全に介助を行う技術です。この黄金の5原則をマスターすれば、もう力任せに介助する必要はありません。
原則1重心を近づけ、より密着させること
介助者と利用者さんの重心をできるだけ近づけることが、最も重要なポイントです。重心がおへそのあたりにあることを意識し、両者の体を密着させるように介助しましょう。体が離れていると、テコの原理が働き、持ち上げる力が余計に必要になります。これにより腰への負担が格段に増えてしまいます。密着させることで、利用者さんの体重を自分の体全体で支えることができ、腕や腰への負担を分散させることができます。
原則2支持基底面を広く、安定させること
立っているときに両足で支えている範囲を「支持基底面」と呼びます。この面積が広いほど、体は安定します。移乗介助を行う際は、両足を肩幅より少し広めに開くようにして、前後にずらして構えるのが理想的です。こうすることで、介助中にバランスを崩しにくくなり、利用者さんをしっかりと支えられます。特に、不安定になりがちな回転動作を行う際には、この姿勢が必須です。
原則3持ち上げない!水平方向の動きを意識すること
多くの人が陥りがちなのが、利用者さんを「持ち上げよう」とすることです。上方向への持ち上げは、自分の体重+利用者さんの体重を支えることになり、腰に大きな負担がかかります。代わりに、「水平方向へのスライド」と「前傾姿勢での引き上げ」を意識しましょう。利用者さんの体を少し前傾させることで、お尻が浮きやすくなり、軽い力で横にスライドさせることができます。このわずかな意識転換が、腰痛予防に大きく貢献します。
原則4足腰の筋肉を最大限に活用すること
移乗介助で最も使ってはいけないのは腕の力と腰の力です。これらだけで介助しようとすると、すぐに疲労が蓄積し、腰を痛める原因になります。代わりに、太ももやお尻、腹筋といった大きな筋肉を使いましょう。スクワットをするように膝を曲げて腰を落とし、足の力で体を持ち上げるように動くのが正しい方法です。これにより、腕や腰への負担が大幅に軽減され、疲れにくく、力強い介助が可能になります。
原則5回転運動と遠心力を利用すること
ベッドから車いす、車いすからベッドへの移乗では、利用者さんの体を回転させる動作が不可欠です。この時、力ずくで体を回すのではなく、遠心力をうまく利用しましょう。自分の体と利用者さんの体を密着させたまま、重心を移動させるようにしてゆっくりと回転します。このとき、膝を曲げた姿勢を維持することが重要です。遠心力を使うことで、小さな力でスムーズに方向転換ができ、利用者さんにも介護者にも優しい介助が実現します。
パターン別・超実践的な移乗介助マニュアル
ここでは、実際の介護現場でよくあるシチュエーション別の移乗介助方法を、さらに詳しく解説します。利用者さんの状態や環境に合わせて、最も安全で効率的な方法を選びましょう。
ベッドから車いすへの移乗(片麻痺のある方の場合)
片麻痺のある方の移乗は、「できることはご自身で」という自立支援の視点が非常に重要です。
- 車いすをベッドの健側(麻痺のない側)に、できるだけ近づけて駐車ロックをかけます。
- 利用者さんに声をかけ、麻痺のない方の腕でベッドを掴んでもらい、前傾姿勢になってもらいます。
- 介護者は利用者さんの麻痺のある方の腕を支え、もう一方の手で腰をサポートします。
- 前傾姿勢になったら、回転の原理を使ってゆっくりと車いすの方へ体を向けます。
- 深く座るように誘導し、安定したことを確認してからロックを解除します。
ポイント麻痺のある側を先に動かそうとすると、バランスを崩しやすいです。常に健側を軸に動くように促しましょう。利用者さん自身が少しでも動ける部分は見守り、転倒しそうな時にだけ手を貸すことが大切です。
車いすから自動車への移乗
車いすから自動車への移乗は、車内という限られた空間での作業になります。
- 自動車のドアを大きく開け、車いすを座席にできるだけ近づけます。
- 利用者さんに座席の背もたれに寄りかかるように誘導し、前傾姿勢になってもらいます。
- 介護者はスクワットの姿勢をとり、利用者の腰を支えながら、座席へゆっくりとスライドさせます。
- 膝を伸ばしたまま前かがみになると腰を痛めるので、必ず膝を曲げて介助を行いましょう。
- 深く座り直してもらい、座席のシートベルトを締めるなど安全確認をします。
ポイント自動車の座席は車いすよりも低いことが多く、介助者はより深く腰を落とす必要があります。
移乗介助に関する疑問を解決!よくある質問Q&A
Q1移乗介助の際に、どうしても利用者さんを引っ張ってしまいがちです。なぜダメなのでしょうか?
A利用者さんを力任せに引っ張るのは、絶対に避けてください。特に腕を引っ張ると、肩関節の脱臼や亜脱臼を引き起こすリスクがあります。高齢者の皮膚は非常にデリケートなため、強く掴んだり、服を引っ張ったりするだけでも内出血や皮膚の剥離につながることもあります。大切なのは、引っ張るのではなく、体を密着させて重心移動をサポートすることです。利用者さん自身の力を最大限に引き出す「自立支援」の視点を常に持ち、ご本人の残存機能を活かした介助を心がけましょう。
Q2介助中に利用者さんが転倒してしまった場合、どうすればいいですか?
Aもし転倒してしまったら、まず利用者さんの安全を第一に考えてください。まずは落ち着いて声をかけ、意識や呼吸の確認、外傷がないかを確認しましょう。無理に起こそうとせず、応援を呼び、専門の知識を持ったスタッフの指示を仰ぐことが重要です。転倒の原因を分析し、再発防止策をチームで共有することも大切です。
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まとめ|今日から実践!移乗介助は「力」ではなく「知恵」で乗り越える
移乗介助は、決して力任せに行うものではありません。今回ご紹介したボディメカニクスの5原則や、利用者さんの状態に合わせた介助方法を実践することで、介護者自身の腰痛リスクを減らし、利用者さんにとっても安全で快適な介助を提供することができます。
- 「持ち上げない、水平にスライド」という意識改革
- 「重心を近づけ、支持基底面を広げる」という基本姿勢
- 「足腰の大きな筋肉を使う」という体の使い方
この3つのポイントを忘れずに、日々の介助に取り組んでみてください。きっと、これまでとは比べ物にならないくらい楽に、そして安全に介助できるようになるはずです。移乗介助は、利用者さんの自立した生活を支えるための重要なスキルです。あなたの「知恵」と「思いやり」が、利用者さんの未来を明るくします。ぜひ、今日から実践して、介護のプロフェッショナルを目指しましょう!
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