親の介護が急に現実味を帯びたとき、多くの家族が最初につまずくのが要介護認定の調査です。ところが実際は、必要な支援があるのに軽く見られてしまったり、逆に大げさに伝えてしまって話がかみ合わなくなったりと、ほんの少しのズレで結果が変わりやすい場面でもあります。特に認知症や昼夜逆転、介護拒否、火の不始末のように、その場では見えにくい困りごとは、準備なしでは伝わりません。
しかも直近では、2026年3月13日付の厚生労働省通知で、介護予防ケアマネジメントでも要介護認定調査票や主治医意見書を活用し、本人と家族の意向や生活課題を丁寧に把握する重要性があらためて示されました。さらに2026年3月5日には日本認知症官民協議会総会が開かれ、認知症の人が地域で暮らし続けるための支援や、家族の負担を社会全体で支える視点が共有されています。つまり今は、ただ「できる」「できない」を答えるだけでは足りず、暮らしの中で何に困っているかを具体的に伝える力が、ますます大切になっているのです。
この記事では、認定調査で本当に差がつく準備と伝え方を、家族目線でわかりやすく整理しました。読み終えるころには、「何を、どこまで、どう言えばいいのか」がはっきり見えてきます。
- 認定調査で失敗しやすい家族の共通点と、その防ぎ方。
- 要介護認定のコツとして本当に効く、事前準備と当日の伝え方。
- 認知症や夜間対応のような見えにくい負担を、正しく伝える実践法。
要介護認定のコツで最初に知るべき大前提

介護のイメージ
最初に結論からお伝えします。要介護認定のコツは、うまく見せることではなく、ふだんの困りごとを具体的に見える化することです。ここを勘違いすると、調査当日に親が頑張ってしまい、家族も遠慮してしまい、結果として「思ったよりできる人」に見えてしまいます。
認定は、訪問調査だけで決まるわけではありません。認定調査の内容、主治医意見書、介護認定審査会での二次判定が重なって決まります。つまり、調査で話したことと、主治医が把握している状態がずれていると、不自然さが出やすいのです。だからこそ、家族は調査対策だけでなく、主治医との共有も同時に進める必要があります。
また、申請から結果通知までは法定上30日以内が原則ですが、実務では主治医意見書の入手や審査会の日程で遅れることもあります。近年は迅速化の議論が進み、認定調査は依頼から7日以内、主治医意見書は依頼から13日以内、審査会は書類がそろってから12日以内を目安にする考え方も示されています。だからこそ、家族側の準備が早いほど、手続き全体も進みやすいのです。
よくある誤解は「できるかどうか」だけで答えてしまうこと
たとえば「座れますか」と聞かれたとき、本人は「座れます」と答えるかもしれません。でも実際は、手で支えないとふらつく、10分もすると崩れる、立ち上がりでは介助が必要、ということがあります。認定調査で大事なのは、一瞬できたかではなく、安全に安定して続けられるかです。
この視点が抜けると、家族は本当は困っているのに、言葉だけ軽くなってしまいます。だから返答は、単語ではなく場面つきで伝えるのが鉄則です。
本当に見るべきなのは「介護の手間」です
調査では身体機能だけでなく、生活機能、認知機能、精神や行動の問題、社会生活への適応などが幅広く見られます。特に家族が意識したいのは、何にどれくらい手がかかっているかです。夜中に何回起きるのか。排泄介助に何分かかるのか。同じ説明を一日に何度繰り返すのか。こうした具体性があると、調査員も特記事項に落とし込みやすくなります。
調査結果を左右する事前準備7つの鉄則
ここからは、実際に差がつく準備を整理していきます。焦って全部やろうとしなくて大丈夫です。まずは次の順番で整えると、かなり伝わりやすくなります。
- 家族が同席できる日時で日程調整をします。本人だけに任せると、遠慮や見栄で実態より軽く伝わることが少なくありません。
- 最低でも1週間、できれば2週間の介護記録を残します。食事、排泄、入浴、移動、服薬、睡眠、問題行動の頻度を書き出します。
- 主治医に現状を先に共有します。診察時に家族も同席し、生活上の困りごとまで伝えると意見書との整合性が取りやすくなります。
- 本人が嫌がりそうな話題を整理します。認知症症状や失禁など、本人の前では言いにくい内容は事前に調査員へ配慮を相談します。
- 住環境の困りごとを確認します。段差、手すりの有無、トイレの狭さ、浴槽のまたぎにくさは、介助量に直結します。
- 写真や記録を用意します。散乱したゴミ、焦げたフライパン、買いだめ、服薬ミスなどは、客観資料として強い説得力があります。
- 調査票の項目をざっと見て、家族の答えを揃えておきます。「だいたいできる」「見守りが必要」「一部介助」などの差を意識すると本番でぶれません。
最強の準備は「時系列メモ」です
特におすすめなのが、朝から夜までの流れを書いたメモです。たとえば、「6時に起床。トイレ誘導が必要」「朝食後の薬を飲み忘れるので声かけ3回」「14時ごろ帰宅願望が強く外に出たがる」「夜中2時と4時に起きて排泄介助」などです。これがあると、調査員は生活全体の負担をつかみやすくなります。
「大変です」だけでは、伝わりません。いつ、何が、何回、どれくらいで話すと、一気に伝わります。
認知症があるなら「昼より夜」を記録する
認知症介護は、昼間だけ見ていると軽く見えがちです。昼は穏やかでも、夕方から不穏になる、夜に徘徊する、財布を盗まれたと騒ぐ、同じ確認を何度も繰り返す。こうした負担は、短時間の訪問だけでは見えません。だからこそ、夜間や夕方の困りごとを数字で残すことが大切です。
たとえば「この1か月、週5日は夜間に2回以上起きる」「帰宅願望が1日3回ある」「尿取りパッドをトイレに流したのが今週2回」のように書けると、介護の大変さが伝わりやすくなります。
調査当日に家族がやるべき伝え方
当日は、うまく話そうとしすぎないことが大切です。意識するのはたった3つです。ふだんの状態を基準にすること、具体例で話すこと、本人の言葉を家族が補足することです。
本人が「できます」と言ったときこそ補足する
高齢の親は、他人の前で弱さを見せたくないものです。調査員の前だと、いつもよりしゃんとする方も珍しくありません。だから本人が「ひとりでできます」と言っても、家族は遠慮せずに続けてください。
「一応できますが、立ち上がるときは手すり必須です」「ズボンは上げられますが、下着は介助しています」「食事は食べられますが、薬は毎回飲み忘れるので管理しています」といった形で、どこまで自力で、どこから介助かを分けて話すのがコツです。
調査員に伝わりやすい言い方と伝わりにくい言い方
同じ内容でも、言い方で伝わり方は大きく変わります。次の違いを意識してください。
| 伝わりにくい言い方 | 伝わりやすい言い方 |
|---|---|
| 足腰が弱いです。 | 洋式トイレでも手すりがないと立ち上がれず、毎回支えています。 |
| 認知症が大変です。 | 財布がないと1日2~3回興奮し、見つかるまで20分以上対応が必要です。 |
| 夜が大変です。 | 夜中に2回起きてトイレ介助があり、介護者は連続で眠れません。 |
| ひとりでは無理です。 | 浴槽をまたげず、入浴は毎回家族が体を支えています。 |
ポイントは、抽象語をやめて、場面と頻度を足すことです。これだけで、調査員の理解度はかなり変わります。
見えない負担は「特記事項に書いてもらえる形」で話す
認定では、基本調査だけで拾いきれない事情を特記事項で補うことが重要です。だから家族は、調査員が書きやすい材料を渡すつもりで話すといいです。たとえば、夜間不眠、帰宅願望、買い物の重複、服薬管理の難しさ、介護拒否、介護者の就労との両立の難しさなどは、特記事項に載ると実態が伝わりやすくなります。
認定が軽く出やすい人ほど知っておきたい盲点
要介護認定で見落とされやすいのは、寝たきりではないけれど介護負担が大きいケースです。特に、歩ける認知症は典型です。歩けるから軽いのではなく、歩けるからこそ目が離せず、徘徊や転倒、外出、火の不始末につながりやすいのです。
また、独居や老老介護では、家族が限界まで頑張ってしまい、表面上なんとか回っているように見えることがあります。しかし本当は、介護者の睡眠不足、仕事への支障、通院の付き添い負担、感情面の疲弊が積み重なっています。ここも遠慮せず伝えるべきです。要介護認定は、本人の状態だけでなく、現実にどれだけの手間が発生しているかを見てもらう場面でもあるからです。
部屋を完璧に片づけすぎない
調査前に慌てて家を整えたくなる気持ちはよくわかります。でも、ふだんは物が積み上がりやすい、服が散らかる、同じものを何度も買ってしまう、という状況なら、無理に取りつくらないほうがいいこともあります。生活の乱れそのものが支援の必要性を示す場合があるからです。
午後や夕方のほうが実態に近い人もいる
高齢者の中には、午前中は比較的しっかりしていて、午後から疲れや混乱が強くなる人もいます。毎日同じ傾向があるなら、日程調整の段階で相談してみる価値があります。大事なのは演出ではなく、一番実態に近い時間帯で見てもらうことです。
申請前より前に動くと、あとで一気に楽になること

介護のイメージ
検索する人がいちばん見落としやすいのが、申請書を出す前の下ごしらえです。現場感覚でいうと、認定調査の出来不出来は、当日よりもその前にほぼ決まっています。なぜなら、困りごとを言葉にできないまま申請だけ先に進めると、本人も家族も「何が大変なのか」を整理できず、調査でぼやけた説明になりやすいからです。
実際には、家族が困っているのは「歩けるかどうか」だけではありません。朝の着替えに時間がかかる、薬を飲み忘れる、夜中に起きる、通帳や財布をしまい込んで大騒ぎになる、風呂に入るまでの説得が長い、トイレは間に合わないのに本人は失敗を認めない。こういう生活の摩擦こそが、介護の本当の重さです。調査に強い家族は、病名ではなく、生活の摩擦を言葉にしています。これは過去記事群でも繰り返し出てきた重要な共通点で、認知症介護の負担は見た目で伝わりにくく、数値化や具体例が必要だと整理されています。
直近では、厚生労働省が2026年3月13日に示した資料の中で、介護予防ケアマネジメントでも要介護認定の調査内容や判定結果、主治医意見書を活用して本人の状況を把握する重要性を明確にしています。つまり、認定は単なる入口ではなく、その後の支援の質まで左右する土台として、いままで以上に重視されています。
地域包括支援センターは、申請窓口ではなく作戦会議の場だと思ったほうがいい
現実では、「とりあえず申請だけしたい」と思って窓口に行く家族が多いです。でも、ここで一歩踏み込んで、どんな生活で困っていて、何が限界なのかまで相談できると、その後がかなり違います。地域包括支援センターは、単に制度を案内するだけの場所ではありません。申請のタイミング、受けるべき支援、認定後にどのサービスにつなぐかまで一緒に考える場所です。
たとえば、親が転倒を繰り返しているのに本人が介護を拒否しているケースでは、「いきなりデイサービス」よりも、まず見守りや福祉用具、短時間の通所から入ったほうがうまくいくことがあります。逆に、家族がもう夜間対応で限界なら、最初からショートステイを視野に入れた認定準備をしたほうがいい。ここを整理しないまま認定だけ通しても、サービス導入で再びつまずきます。
家族が現実でよくぶつかるのに、意外と誰も教えてくれない場面別の対処法
退院したら急に介護が始まった。何から手をつけるべき?
これ、かなり多いです。骨折や肺炎、脳梗塞で入院して、病院では何とか見えても、家に戻ったら立ち上がれない、トイレが間に合わない、夜が不安で家族を起こし続ける。こういうときに大事なのは、退院前に病院の医療ソーシャルワーカーや退院支援看護師へ、家では無理なことを遠慮なく言うことです。
現場でよくある失敗は、家族が「家なら何とか頑張ります」と言ってしまうことです。すると病院側は在宅可能と判断しやすくなります。でも現実には、介護者が仕事を休めない、階段が多い、風呂が危ない、夜は一人で見られない、という事情があるはずです。ここを隠すと、退院後すぐに崩れます。退院前の面談では、「昼間は一人になる」「トイレまで10歩でも転ぶ」「浴槽はまたげない」「食後の服薬管理ができない」と、家で起きる場面で話してください。すると、申請、暫定ケアプラン、福祉用具、訪問看護などの導線がつながりやすくなります。
本人が元気ぶってしまい、家族が悪者になるときはどうする?
これも本当によくあります。第三者の前では急にしっかりする。質問されると反射的に「できます」と言う。家族が補足すると不機嫌になる。こういう親御さんは少なくありません。こういうときは、正面から否定しないことが大切です。
体験ベースでいうと、家族が「違うでしょ、できないでしょ」と返すと、その場が対立になります。そうではなくて、「一応できます。ただ、終わるまで見守りが必要です」「日によって差が大きいです」「朝はできますが、夕方は難しいです」と、本人の自尊心を傷つけずに実態を補足する言い方がいちばん通ります。本人の嘘を暴くのではなく、本人の“その瞬間の頑張り”と“日常の平均”を分けて話す感じです。
遠方介護で、毎日は見られない家族はどうすればいい?
遠方介護は、本当に情報戦です。毎日見ていない家族ほど、感覚ではなく記録で勝負したほうがいいです。おすすめは、1枚で見える介護共有メモをつくることです。電話した回数、夜間の呼び出し、通院付き添い、配食の食べ残し、冷蔵庫の傷み、同じ買い物の重複、近隣からの連絡などを時系列で並べます。
ひとりで抱えると「私が神経質なのかな」と思いやすいのですが、記録にすると現実が見えます。週に3回同じ話で混乱している、1か月で3回転倒しかけている、電気やガスの消し忘れが増えている。そこまで見えると、包括支援センターにも主治医にも相談しやすくなります。遠方介護でいちばん危ないのは、会った日だけの印象で判断してしまうことです。
認定が出たあとに差がつく!制度の使い方の本音
検索ユーザーの多くは、認定が出れば一安心と思っています。でも本当はここからが本番です。介護の現場では、認定結果そのものより、認定後に何を組み合わせるかで生活のしんどさが変わります。
住宅改修は、手すりだけで終わらせるともったいない
介護保険の住宅改修は、原則として生涯20万円までが支給限度基準額で、保険給付は原則9割、所得に応じて8割または7割です。対象は手すりの取付け、段差解消、床材変更、扉の取替え、便器の取替えなどです。しかも一定の条件では、要介護度が大きく上がったときや転居時に再度20万円の枠が設定される仕組みもあります。
ここで大事なのは、工事そのものより、どの動作が危ないのかを先に整理することです。たとえば玄関の一段より、実はベッドからトイレまでの導線のほうが危ないことがあります。浴室のまたぎより、脱衣所の方向転換で転ぶこともあります。現場で多いのは、目につく場所に手すりをつけて満足してしまい、本当に負担が大きい動線が残ることです。
ぶっちゃけ、住宅改修は「家を整える制度」ではなく、介助の手間を減らす制度として考えたほうがうまくいきます。家族の腰痛、夜間の付き添い、トイレ誘導の焦りまで含めて考えると、改修の優先順位が変わってきます。
福祉用具は、借りるか買うかを何となく決めない
福祉用具も、使い方を間違えるとお金だけかかって生活が楽になりません。厚生労働省では、固定用スロープ、歩行器、単点杖、多点杖の一部について、2024年4月から貸与と販売の選択制が導入されています。利用者には、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員が情報を集めたうえで提案することになっています。
現場感覚でいうと、状態が変わりやすい時期は借りるほうが柔軟です。退院直後、認定直後、リハビリ途中は、必要な道具が変わりやすいからです。逆に、排泄や入浴で毎日確実に使うものは、清潔面や使い慣れも含めて購入が向く場合があります。大事なのは、その用具を使うことで誰の何分が減るのかまで考えることです。本人が少し楽になるだけでなく、家族の介助が10分減る、夜のヒヤヒヤが減る、転倒リスクが減るなら、それはかなり大きい価値です。
実はかなり大きい、高額介護サービス費の見落とし
介護が長引くほど、地味に効いてくるのがお金です。介護保険では、1か月に支払った利用者負担の合計が一定の上限を超えた場合、超えた分が払い戻される高額介護サービス費という仕組みがあります。介護保険の解説ページでも、所得区分ごとに負担上限が整理されています。
現実では、家族がこの制度を知らず、「デイサービスを増やしたいけど高くて無理」とブレーキを踏んでしまうことがあります。もちろん食費や居住費など対象外のものもありますが、上限があるとわかるだけで、使えるサービスの選び方が変わることは多いです。しかも2026年1月末の全国厚生労働関係部局長会議資料でも、高額介護サービス費の在り方は引き続き制度論点として扱われており、負担感への関心は高いままです。
状態が変わったのに、そのまま我慢してしまう家族へ
介護でいちばん危ないのは、前の認定のまま現実だけ悪化していくことです。歩けていたのに転びやすくなった。トイレの失敗が増えた。昼夜逆転が強くなった。食事介助が必要になった。こういう変化が出たのに、「次の更新まで待つしかない」と思っている家族はかなり多いです。
でも実際には、状態が変われば区分変更申請を検討できます。サービス利用までの公式解説でも、新規や変更申請の認定有効期間は原則6か月で、状態に応じて3か月から12か月まで設定されると示されています。状態が変わるのは珍しいことではなく、制度もその前提でつくられています。
ここで大事なのは、「うちは本当はもう一段階上だと思う」と言うより、何が変わったかを言うことです。転倒が増えた、風邪や入院後に体力が戻らない、立ち上がり介助が必要になった、見守りでは足りず手が出るようになった。こういう変化は、家族の主観ではなく生活事実として伝わります。過去記事群でも、結果に納得できないときは感情論ではなく、状態変化や記録をもとに専門職へ相談する流れが繰り返し示されています。
認知症介護で、本当にしんどいのに説明しづらいこと
認知症の介護は、介助量だけでは測れません。現場でつらいのは、先の見えない緊張です。火をつけっぱなしにするかもしれない。夜中に外へ出るかもしれない。お金をなくしたと責められるかもしれない。こういう「起きるかもしれないこと」に神経を張り続ける疲労は、経験した人しかわからない重さがあります。
だから、調査や主治医への相談では、起きた事実だけでなく、その対応で家族がどれだけ拘束されるかまで伝えたほうがいいです。たとえば「財布探しに毎回30分かかる」「夕方はひとりにできないので仕事を早退している」「ガス確認で毎晩3回見に行く」などです。過去記事でも、徘徊、妄想、火の不始末、介護拒否、夜間対応などは介護者の精神的・身体的負担が大きいと具体的に整理されています。
2026年3月の全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料でも、認知症地域支援や社会参加、地域の居場所づくりなど、認知症の人と家族を地域で支える方向性が引き続き打ち出されています。つまり今後は、「家族が全部背負う」のではなく、地域資源につなぐ発想がさらに重要になります。
仕事、きょうだい、親族関係。制度だけでは解決しない問題のさばき方
きょうだいで温度差があるときは、感情より事実で話す
介護あるあるですが、一緒に住んでいないきょうだいほど「まだ大丈夫じゃない?」と言いがちです。悪気があるというより、日々の摩擦を見ていないからです。ここで「私ばっかり大変」と言うと、たいてい関係がこじれます。
おすすめは、介護タスクを見える化して共有することです。1週間で何回電話が来るか。受診付き添いは何時間か。夜間対応は何回か。排泄や入浴の介助は誰がしているか。費用はいくらか。数字にすると、やっと現実が共有されます。介護は気持ちの問題に見えがちですが、実際は業務量の問題でもあります。ここが見えないと、きょうだい間の不公平感だけが大きくなります。
仕事を辞める前に、サービス設計をやり切ったかを確認する
親の介護で仕事を辞める人は今もいますが、現場目線では、退職は本当に最後の手段でいいです。なぜなら、一度仕事を離れると収入だけでなく、本人の社会との接点も失われやすいからです。まず見直したいのは、朝夕のヘルプを増やせないか、通所やショートを組めないか、近隣支援や配食や見守りを入れられないか、福祉用具や住宅改修で介助時間を減らせないかです。
介護は気合いで乗り切るほど、後で家族が壊れます。自分が辞めることを検討する前に、制度と地域資源で減らせる負担を全部減らす。これがかなり大事です。
今の制度の流れをふまえて、これから意識したいこと
最近の制度の流れを見ると、介護分野では認定情報や主治医意見書の電子化、情報連携の強化、進捗確認のしやすさが進められています。2025年以降の介護情報基盤では、要介護認定申請の進捗状況や認定情報をケアマネジャーが確認しやすくなり、主治医意見書の電子的送付も視野に入っています。2026年1月30日版の介護保険システム標準仕様書でも、主治医意見書作成料支払処理の電子化や介護分野のDX対応が盛り込まれています。
これ、家族にとって何が大事かというと、伝えたはずなのに伝わっていないを減らせる可能性があることです。ただし、仕組みが整っても、元の情報があいまいなら意味がありません。結局最後は、家族がどれだけ生活実態を整理して専門職へ渡せるかにかかっています。制度が便利になるほど、家族の情報整理力の価値はむしろ上がる。ここは意外な盲点です。
個人的にはこうしたほうがいいと思う!
個人的にはこうしたほうが、ぶっちゃけ介護の本質をついてるし、現場の介護では必要なことだと思う。まず、要介護認定を「点数を取りに行くイベント」にしないことです。そう考えると、どうしても上か下か、得か損か、みたいな話に引っ張られます。でも本当に見るべきなのは、親が家でどう暮らしていて、家族が何に削られていて、何を減らせば生活が回るのかです。
その意味で、いちばん強い家族は、介護を美談にしない家族です。「まだ頑張れる」は、だいたい危ないです。夜に起こされてつらいならつらい。仕事に支障が出ているなら出ている。怒ってしまうなら怒ってしまう。そこを正直に言える家族ほど、結果的に親にも優しい支援につながります。
あと、もうひとつ大事なのは、できないことだけを並べないことです。何ができて、何が難しくて、どこに手を入れると暮らしが保てるのか。ここまで見られると、認定もケアプランも福祉用具も住宅改修も全部つながります。制度って、知っているだけでは足りません。生活の現実に翻訳して初めて役に立ちます。
だから、これから動くならおすすめはシンプルです。親の一日を書き出す。家族のしんどさも書く。主治医と包括に同じ話をする。そして、認定後こそ遠慮せずサービスを組む。ここまでやると、介護は急に楽勝にはならなくても、少なくとも「わけがわからないまま消耗する状態」からは抜けやすいです。介護の現場で本当に必要なのは、完璧な家族になることじゃなく、ひとりで抱え込まない仕組みを早く作ることだと、私は本気で思います。
要介護認定のコツに関する疑問解決
本人が調査を嫌がるときはどうすればいい?
正面から「介護認定のため」と言うと拒否が強まることがあります。その場合は、「体の様子を見に来る人だよ」「使える支援を確認するためだよ」と、本人が受け入れやすい言い方に変えるのが有効です。認知症の話題を本人の前でしにくいなら、事前に家族だけで伝えたい内容を調査員へ共有しておきましょう。
調査のときだけ調子が良い場合はどう伝える?
これは珍しくありません。だからこそ、ふだんの記録が効きます。「今日はたまたま受け答えがしっかりしていますが、普段は曜日も言えない日が多いです」のように、その日の様子と日常の様子を分けて伝えてください。その日のできばえではなく、普段の平均像で見てもらう意識が大切です。
主治医には何を伝えればいい?
診断名だけでは足りません。生活で困っていることを伝えてください。転倒、失禁、睡眠障害、服薬ミス、物盗られ妄想、帰宅願望、介護拒否、入浴困難、通院付き添いの負担など、診察室の短時間では見えにくい日常の問題を共有することが重要です。
結果に納得できないときはどうする?
まずは担当のケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村の介護保険担当へ相談してください。状態変化が大きいなら区分変更申請が検討されますし、通知に対する不服が強い場合は審査請求という方法もあります。焦って感情的に動くより、どこが実態とずれていたのかを整理し、記録と医療情報をそろえて動くほうが結果につながりやすいです。
まとめ
要介護認定のコツは、特別な裏ワザではありません。家族がふだんの困りごとを、具体的に、短く、ずれなく伝えることです。できることを隠す必要も、悪く見せる必要もありません。必要なのは、本当の暮らしをそのまま伝える準備です。
家族同席で臨むこと。時系列メモをつくること。認知症や夜間対応の負担を数字で示すこと。主治医と情報をそろえること。この4つを押さえるだけで、調査の質は大きく変わります。
「これくらいで言っていいのかな」と迷うことほど、実は大事な情報です。遠慮せず、でも大げさにせず、生活の現実を言葉にしてください。その一歩が、これからの介護を少し楽にし、本人に合った支援へつながります。ここまで読んだ今が、準備を始めるいちばんいいタイミングです。



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