「何度すすめても、ひと口しか飲んでくれない」「トイレを気にして、わざと控えている気がする」「むせるのが心配で、こちらも強く言えない」。高齢の家族や利用者さんの水分補給は、ただコップを渡せば解決する話ではありません。実際には、のどの渇きを感じにくい加齢変化、トイレへの不安、嚥下機能の低下、認知症による認識のずれが重なり、本人にも周囲にも負担が大きいテーマです。厚生労働省は、熱中症患者のおよそ半数が65歳以上で、高齢者は暑さや水分不足への感覚機能、からだの調整機能が低下しているため注意が必要だとしています。さらに環境省の熱中症警戒アラートは、令和8年度は2026年4月22日から発表開始予定で、今年も早い時期から備えが必要です。
- 飲まない理由を見抜く、介護現場で本当に効く視点。
- 水だけにこだわらず、食事や好みを使って増やす発想。
- すぐ受診すべき危険サインと、無理に飲ませない判断軸。
2026年3月には、環境省の熱中症対策推進検討会が開催され、消防庁も同月、2025年5月から9月の熱中症による救急搬送人員が10万510人で過去最多だったことを踏まえ、夏を待たずに早期の予防啓発を進める方針を示しました。つまり、真夏だけ対策すればよい時代ではありません。春先から「飲める仕組み」を作っておくことが、今年の介護ではかなり重要です。
- なぜ高齢者は水を飲まなくなるのか?
- 高齢者が水を飲まないときの対処法7選
- 飲ませ方で失敗しないための実践手順
- 受診を急いだほうがいい危険サイン
- 高齢者が水を飲まないときに、家族が見落としやすい盲点
- 見落としやすい本当の原因は、口の中と生活動作にある
- 介護で差がつく観察ポイントは、飲んだ量より前後の変化
- 現実でよくある困りごと別に考える、実践的な解決のコツ
- 介護に特化した知識として知っておきたい、水分不足が招く連鎖
- 家族介護で使いやすい声かけの型
- 介護職や家族が連携するときに共有したいポイント
- 医療につなげたほうがいい、迷いやすい境目
- 水分補給を成功させるための、小さくても効く介護技術
- 個人的にはこうしたほうがいいと思う!
- 高齢者が水を飲まないときの対処に関する疑問解決
- まとめ
なぜ高齢者は水を飲まなくなるのか?

介護のイメージ
ここを外すと、どんな声かけも空回りします。高齢者が水を飲まない理由は、単なるわがままではありません。体の変化と生活上の困りごとが、きちんと背景にあります。加齢とともに体内の水分量は減り、のどの渇きに気づく力も落ちやすくなります。厚生労働省も、高齢者は暑さや水分不足に対する感覚機能が低下していると明示しています。
のどが渇いていないから、必要性がわからない
介護でよくあるのが、「別に飲みたくない」「渇いていない」という反応です。これは珍しいことではありません。のどの渇きは、若い人のようには当てにならないからです。厚生労働省の検討会でも、のどの渇きが収まっても脱水が残る自発的脱水という考え方が示されています。本人の感覚だけに任せると遅れやすいので、時間を決めて飲む発想が欠かせません。
トイレが心配で、あえて控えている
実はかなり多いのがこのタイプです。足腰がつらい、失禁が不安、夜に何度も起きたくない。そうした事情から、本人なりの自己防衛として飲水を減らしているケースがあります。ここで大切なのは、頭ごなしに「飲まないと危ないよ」と言うことではなく、トイレ問題を一緒に軽くすることです。座る場所をトイレに近づける、手すりや動線を見直す、寝る直前のがぶ飲みを避ける。飲水の問題に見えて、実は排泄環境の問題ということは少なくありません。
水だとむせる、飲み込むのがつらい
「お茶は嫌がるけれど、ゼリーなら食べる」「水だけ、やたらむせる」。この反応には理由があります。嚥下機能が落ちると、さらさらした液体ほど気道に入りやすくなり、むせや誤嚥のリスクが上がります。摂食嚥下に関する国内資料でも、嚥下機能の低下は低栄養や脱水だけでなく、誤嚥や窒息にもつながる重要な問題とされています。最近では、農林水産省の2026年3月公開資料でも、加齢で飲み込み時にむせが増えた人に、とろみ調整食品が役立つと案内されています。
認知症や寝たきりで、自分から訴えにくい
認知症があると、飲み物の存在に気づきにくい、飲んだか忘れる、必要性を理解しにくいなどの問題が起こります。寝たきりの方も、自分のタイミングで手を伸ばせないため、周囲の支援が前提になります。だからこそ、「本人が言わないから大丈夫」は危険です。普段より元気がない、ぼんやりしている、食事が進まないといった小さな変化から気づく視点が重要です。
高齢者が水を飲まないときの対処法7選
ここからは、現場でも家庭でも使いやすい方法を、効果が出やすい順に整理してお伝えします。ポイントは、水分補給を本人の努力にしないことです。飲める環境、飲みたくなる仕掛け、飲みやすい形に変えていきます。
まずは一日の摂取量を見える化する
「たぶん飲めているはず」が、一番危ない状態です。コップの大きさを決めて、何時にどれだけ飲んだかを記録すると、足りない時間帯や、飲めるタイミングが見えてきます。一般的には、食事からの水分、飲み物、体内で作られる水を合わせて一日約2.5Lが出入りするとされ、飲み物からは約1.2Lがひとつの目安です。ただし心不全や腎不全などで制限がある人は、主治医の指示を優先してください。
飲める時間を固定して、習慣にする
おすすめは、起床時、朝食時、10時、昼食時、15時、入浴後、夕食時、就寝1〜2時間前のように、生活の流れに組み込むことです。高齢者は「渇いたら飲む」より、時間になったら少量飲むほうがうまくいきます。とくに起床時と入浴後は、飲める人が多い狙い目です。
水やお茶だけにこだわらない
ここが大きな分かれ道です。飲み物の好みは人それぞれで、コーヒー、ココア、麦茶、白湯、味噌汁、スープ、ゼリー、果物のほうが進む人もいます。水だけで勝負すると失敗しやすいので、好きな味で必要量に近づけるという考え方が大切です。飲み物が難しい人には、汁物、ゼリー、果物など「食べる水分」を増やすのが実践的です。
むせる人は、とろみや温度を調整する
むせがある人に普通の水を無理にすすめるのは逆効果です。とろみをつける、ゼリー飲料を使う、冷たすぎない温度にするだけで、驚くほど飲みやすくなることがあります。農林水産省の要配慮者向け備蓄ガイドでも、とろみ調整食品はお茶や味噌汁、スープなど幅広い液体に使えると紹介されています。むせる人ほど、飲み物の形を変えるのが正解です。
トイレ問題を先に解決する
「飲んだらトイレが増える」が理由なら、飲水指導だけでは改善しません。ポータブルトイレの活用、導線の安全確認、夜間の足元灯、失禁パッドの見直しなどで、本人の不安はかなり下がります。夜間頻尿は水分だけが原因ではなく、塩分過多、睡眠の質、薬剤、心不全なども関係します。夜だけ極端に水を切るより、昼間に計画的に飲んで、寝る直前のがぶ飲みを避けるほうが現実的です。
声かけは命令形より、安心を渡す
「飲んでください」だけでは動けない人がいます。そんなときは、「今ならトイレも付き添えるよ」「少し温かいのにしたよ」「一緒にお茶にしようか」と、行動しやすい安心を足すと反応が変わります。見守りや声かけは、熱中症予防の意識向上に役立つと環境省のマニュアルでも示されています。介護は、水分だけを渡す仕事ではなく、飲める気持ちを作る仕事でもあります。
脱水気味なら、飲み分けを考える
普段の水分補給は、水、お茶、汁物、食事で十分なことが多い一方、汗を多くかいた、発熱した、下痢や嘔吐があるときは、水だけでは不十分な場面があります。厚生労働省の資料では、重度脱水の高齢者では成分調整した経口補水液が推奨されています。逆に、スポーツドリンクや経口補水液を毎日のように大量摂取すると、糖分や塩分が過多になることもあります。日常はふだんの飲み物、体調不良時は電解質も意識と覚えておくと迷いません。
飲ませ方で失敗しないための実践手順
家族が今日から動きやすいように、順番を絞ってまとめます。大事なのは、一度に正解を目指さないことです。まずは原因を見極め、ひとつずつ障害を外します。
- 最初に、飲まない理由を観察します。渇きがないのか、トイレ不安か、むせか、好みかを分けて考えます。
- 次に、本人が受け入れやすい飲み方に変えます。温度、味、コップの重さ、ストロー、とろみ、ゼリーなどを試します。
- そのうえで、起床時や食後など飲みやすい時間を固定し、少量ずつ回数で稼ぎます。
- 最後に、飲んだ量と体調変化を記録し、尿量、便秘、元気さ、むせの回数まで合わせて見ます。
受診を急いだほうがいい危険サイン
ここはとても大切です。水分補給の工夫で様子を見てよい場面と、医療につなぐべき場面は違います。環境省の熱中症マニュアルでは、吐き気などで自分で水分をとれない、または症状が改善しないときは、すぐに医療機関を受診すべきとしています。意識がはっきりしない、呼びかけへの反応が鈍い、尿が極端に少ない、ぐったりしている、ふらつきが強い、けいれんがある場合は、無理に口から飲ませない判断が必要です。誤嚥の危険があるからです。
| 様子見ではなく相談を急ぎたい状態 | 家庭や現場での考え方 |
|---|---|
| 意識がぼんやりしている、会話がかみ合わない。 | 無理に飲ませず、医療機関や救急相談につなげます。 |
| 吐き気や嘔吐があり、自力で飲めない。 | 経口補水にこだわらず、早めに受診を考えます。 |
| 尿がほとんど出ない、または半日近く極端に少ない。 | 脱水の進行を疑い、水分量だけでなく全身状態を確認します。 |
| 水で強くむせる、咳き込む、湿った声になる。 | 普通の水を中止し、とろみや嚥下評価の相談を検討します。 |
高齢者が水を飲まないときに、家族が見落としやすい盲点
最後に、現場目線でお伝えしたいのは、水分補給は量だけでなく、質と方法が大事だということです。たくさん飲ませようとして一度にコップ一杯を迫ると、苦手意識が強まる人がいます。逆に、30〜50mLをこまめに重ねるほうが進む人も多いです。さらに、エアコンを我慢して暑い部屋で過ごしていれば、水分だけでは追いつきません。環境省は、涼しい屋内で過ごすこと、こまめな水分・塩分補給、周囲の見守りを一体で勧めています。飲ませるだけではなく、暑さを避けることまでセットで考えてください。
見落としやすい本当の原因は、口の中と生活動作にある

介護のイメージ
現場でかなり多いのに、家族介護では意外と気づかれにくいのが、「飲まない」のではなく「飲めない」という状態です。しかも、その原因はのどだけではありません。実際には、口の中が乾いて痛い、入れ歯が合っていない、座る姿勢がつらい、コップが重い、首が後ろに反りやすい、薬の副作用で口が乾く、便秘や微熱でだるい、気分が落ちて意欲が出ないなど、かなり生活に密着した問題が絡んでいます。
たとえば、口の中が乾燥している人は、水を口に含んだ瞬間にしみたり、ねばついてうまく送り込めなかったりします。すると本人は「飲みたくない」と表現しますが、本音は「痛い」「気持ち悪い」「うまく飲み込めない」です。ここを見抜けると、介護の質は一気に変わります。いきなり飲ませるのではなく、まず口の中を整える。口腔ケアをして、保湿ジェルや湿らせたスポンジで粘膜をやわらげ、口唇の乾燥も整えてから始める。それだけで、さっきまで拒否していた人がすっと飲めることがあります。
もうひとつ盲点なのが、飲み物を持つ道具の相性です。手の力が弱い人に細くて重いグラスは扱いにくく、震えがある人に満杯のコップは怖いものです。介護では「何を飲むか」だけでなく、「どんな容器で、どんな姿勢で、どんな速さで飲むか」まで整えてはじめて対処になります。コップの縁が薄すぎて不安になる人もいれば、ストローだと逆に吸う力が必要で疲れる人もいます。本人の癖を見て、持ち手のある軽いカップ、少量ずつ出るマグ、口当たりのやわらかい器などに変えるだけで、介助量が減ることも珍しくありません。
介護で差がつく観察ポイントは、飲んだ量より前後の変化
水分補給の場面では、どうしても「何ミリ飲めたか」に目が向きます。でも、現実の介護では、量だけ追っても本質を外すことがあります。大事なのは、飲む前後で何が変わるかです。飲んだあとに咳き込みが増えるのか、声がガラッと湿るのか、胸のゼロゼロが出るのか、逆に表情が和らぐのか、口の動きが滑らかになるのか。そこまで見てはじめて、その人に合う方法かどうかが判断できます。
たとえば、飲ませた直後はむせなくても、数分後に湿った咳が増えるなら、うまく飲めたように見えても気道に流れ込んでいる可能性があります。反対に、飲んだあとに言葉がはっきりする、手足の動きが少し軽くなる、便が出やすくなるなら、その水分補給は本人の生活にちゃんと効いています。つまり、介護者が見るべきなのはコップの中身だけではなく、その人の一日の過ごしやすさなんです。
特に朝の観察は有益です。朝は一晩の水分不足が表に出やすい時間です。唇が乾いていないか、舌が白く厚くなっていないか、起きた直後の声がかすれていないか、立ち上がりがいつもより不安定ではないか。こういう小さな変化は、量の記録よりも先に異変を教えてくれます。介護の実感として、脱水は数字より先に様子に出ることが多いです。
現実でよくある困りごと別に考える、実践的な解決のコツ
ここでは、家族や介護職が「あるある」と感じやすい場面ごとに、実際にどう動くと改善しやすいかを掘り下げます。きれいごとではなく、現実にありがちなつまずきに合わせて考えることが、介護ではかなり重要です。
「口を開けてくれない」ときは、飲ませる前の段取りを変える
拒否が強い人にいきなりコップを近づけると、たいてい失敗します。顔の近くに急に物が来ること自体が怖いからです。こういうときは、先に会話で場をつくるほうがうまくいきます。「ちょっと口の中を楽にしようか」「一回唇をぬらそうか」くらいの軽い入り方のほうが受け入れられます。口を湿らせる、スプーン一杯から始める、本人が好きな湯気や香りを先に感じてもらう。これだけでも反応は変わります。
介護では、拒否の強い人ほど、目的を正面から言いすぎないほうがうまくいく場面があります。「水分摂取しよう」ではなく、「口をさっぱりさせよう」「お茶の香りだけどう?」という入口にする。これはごまかしではなく、本人の抵抗感を下げるための技術です。
「飲んでもすぐ口からこぼれる」ときは、姿勢を疑う
この場面で量ばかり増やそうとすると、むせや誤嚥につながりやすいです。まず見るべきは姿勢です。あごが上がっていないか、体が横に傾いていないか、骨盤が後ろに倒れていないか。飲み込みは想像以上に姿勢の影響を受けます。少し前かがみで、足が床や台につき、首が安定しているだけで飲み込みやすさはかなり変わります。ベッド上なら、背を起こすだけでなく、お尻がずり落ちないように骨盤を支えることが大事です。
現場では、クッション一枚で劇的に変わることがあります。だから、こぼれる人に対してすぐに「飲み込みが悪い」と決めつけないことです。介護は医学だけではなく、身体の使い方を整える仕事でもあります。
「一口なら飲むのに、続かない」ときは、疲労を見ている
高齢者の飲水介助では、飲む力の持続性が落ちていることが多いです。最初の一口は入っても、二口目から顔をしかめる、目を閉じる、呼吸が浅くなる。これは嫌がっているというより、疲れている場合があります。そんなときは量を一度に稼ごうとしないことです。介護では「たくさん飲めた」よりも「無理なく続けられた」を優先したほうが長期的に安定します。三口で終える回を増やしたほうが、一回でコップ一杯を目指すより結果的に入ることも多いです。
「家族がすすめると怒る」のに、他人だと飲むときがある
これは本当に多いです。家族だから甘えが出る、注意された感覚になる、長年の関係性が反応を強める。こういうときに家族が傷つく必要はありません。介護の現実では、誰が言うかで通ることは珍しくないからです。もし家族だと拒否が強いなら、訪問看護、デイサービス、ヘルパー、ケアマネジャーなど第三者の力を借りていいんです。大事なのは、誰の言葉であれ本人に入ることです。家族が全部背負う必要はありません。
介護に特化した知識として知っておきたい、水分不足が招く連鎖
水を飲まない問題は、単に喉が乾くかどうかでは終わりません。介護で本当に怖いのは、そのあとに起きる連鎖です。まず便が硬くなります。すると排便時にいきむので疲れます。便秘が続けば食欲が落ちます。食事量が減ればさらに水分も栄養も不足し、動く気力もなくなる。動かないとますます腸が動かず、昼夜逆転や不穏につながることもあります。つまり、水を飲まないことは、生活全体をじわじわ崩す入口になりやすいんです。
さらに、皮膚トラブルも増えます。皮膚が乾燥しやすくなり、かゆみで眠れない、掻いて傷になる、おむつかぶれが悪化する。ここでもまた睡眠不足や不機嫌につながります。現場では「最近なんとなく機嫌が悪い」「落ち着かない」の背景に、便秘や口渇、皮膚不快が隠れていることがあります。だから介護では、飲水量だけでなく、便、睡眠、皮膚、食欲、活動性をひとつながりで見たほうが精度が上がります。
家族介護で使いやすい声かけの型
水分補給は、正しいことを言えば通るわけではありません。相手が受け取りやすい言い方に変えるだけで、反応はかなり違います。言葉の選び方も介護スキルのひとつです。
たとえば、「飲まないとだめだよ」は正論ですが、命令に聞こえやすいです。それより、「これなら飲みやすそうだよ」「ひと口だけ試してみようか」「今のうちに口を楽にしておこうか」のほうが受け入れられやすいです。ポイントは、相手の失敗を責めないことと、選べる余地を残すことです。「温かいのと冷たいの、どっちがいい?」のように二択にすると、自分で決めた感覚が生まれます。
認知症の人には、説明の長さも重要です。理由を長く話すより、短い言葉で、今の行動に結びつく一言のほうが入ります。「まず口をぬらそう」「ここに置いておくね」「一緒に飲もう」のような、今すぐ動ける言葉が向いています。介護の現場では、説得より同調のほうが強いです。
介護職や家族が連携するときに共有したいポイント
複数の人が関わる介護では、「飲めていません」だけの共有だと不十分です。共有するなら、何がだめだったのか、何なら入ったのか、どの時間帯が入りやすいのかまで具体化したほうが、次の人が成功しやすくなります。
| 共有すると役立つ視点 | 実際の伝え方の例 |
|---|---|
| 飲めた条件を残すこと。 | 朝は温かいほうじ茶なら入るが、冷たい水は拒否が強いです。 |
| むせる場面を具体化すること。 | 一気飲みでむせやすく、スプーン一杯ずつだと安定しています。 |
| 拒否の引き金を把握すること。 | 食後すぐは嫌がるが、口腔ケアのあとだと受け入れやすいです。 |
| 量だけでなく変化を伝えること。 | 昼に少し入ると午後のぼんやり感が減ります。 |
この共有があるだけで、介護は感覚論から一歩抜け出せます。「この人は飲まない人」ではなく、「この条件なら飲める人」と見方が変わるからです。
医療につなげたほうがいい、迷いやすい境目
家族介護をしていると、「まだ様子見でいいのか」「これは相談したほうがいいのか」で迷いますよね。こういうときは、飲まないことそのものより、背景に病気や薬の影響がないかで考えると整理しやすいです。最近急に飲まなくなった、口の痛みを訴える、発熱やだるさがある、尿の色が濃い、便秘が急にひどい、薬が変わったあとから飲みにくそう、食事まで落ちた。このあたりがそろうなら、早めに主治医、訪問看護師、薬剤師、歯科、言語聴覚士に相談したほうがいい場面です。
特に、利尿薬、便秘薬、向精神薬、抗コリン作用のある薬などは、口渇や排泄不安、眠気などを通じて飲水行動に影響することがあります。介護では、本人の努力不足に見えるものが、実は治療や薬の影響だったということは本当によくあります。だからこそ、責める前に整理する視点が必要です。
水分補給を成功させるための、小さくても効く介護技術
最後に、派手ではないけれど現場で効く技術をまとめておきます。どれも一見地味ですが、こういう積み重ねが失敗を減らします。
- 飲み物を視界の端ではなく、本人が認識しやすい正面寄りに置くことです。見えていないだけで手が伸びない人は少なくありません。
- 一口ごとに急がせず、飲み込んだ呼吸の戻りまで待つことです。介助側が急ぐと、むせと拒否が増えやすくなります。
- 飲めた量を評価するときは、一回の成功より一日の合計で見ることです。少量を積み重ねたほうが、本人の負担は少なく安定しやすいです。
この三つは、特別な道具がなくても今日から変えられます。そして実感として、こういう基本ができると、本人の表情が変わります。飲ませる場面が戦いではなく、生活の一部に戻っていくんです。
個人的にはこうしたほうがいいと思う!
個人的には、「水分を入れること」だけを目標にしないほうが、ぶっちゃけうまくいきます。介護の現場って、数字だけ追うとしんどくなるんですよ。「今日は何ミリ飲めた」「昨日より少ない」と気になりすぎて、本人の表情とか、嫌がる理由とか、そこに至るまでの生活のしんどさを置き去りにしやすいんです。でも本質はそこじゃないと思っています。
本当に大事なのは、その人が安心して飲める条件を探して、生活の中に自然に組み込むことです。口の中が痛いなら先に口を整える。姿勢が悪いなら先に座り方を直す。トイレが不安なら先に排泄環境を整える。家族の声だと怒るなら、他職種の力を借りる。こういう順番で考えたほうが、介護の本質をちゃんとついています。
それに、介護って「正しいことを言う力」より、相手ができる形に変換する力のほうがずっと大事です。飲めない人に「飲んで」は正しいけれど、現実には弱い。だけど、「このカップならどうだろう」「先に口を湿らせよう」「今は三口で終わろう」と変換できる人は強いです。現場で必要なのは、理想論ではなく、この変換力だと思います。
だから、この記事をここまで読んでくれた人にいちばん伝えたいのは、飲まない相手を責めないでほしいということです。そして、うまくいかない自分も責めなくていいです。水分補給は、声かけひとつで片づくほど単純ではありません。体の変化、病気、薬、気持ち、生活動線、家族関係まで全部が絡みます。だからこそ、ひとつずつほどいていけばいい。今日すぐ全部変えなくていいんです。まずは「この人は、どんなときなら飲みやすいんだろう?」と見る視点を持つ。それだけでも、介護はかなり変わります。個人的にはこうしたほうが、ぶっちゃけ介護の本質をついてるし、現場の介護では必要なことだと思う。
高齢者が水を飲まないときの対処に関する疑問解決
お茶やコーヒーでも水分補給になりますか?
なります。ただし、利尿作用や好み、胃腸への負担を見ながら調整が必要です。本人がまったく飲まないより、飲める形で少しでも入るほうが現実的です。日常では麦茶、白湯、スープ、味噌汁なども十分役立ちます。
経口補水液は毎日飲ませたほうがいいですか?
毎日の常用としてではなく、汗を多くかいた、発熱や下痢がある、脱水が心配という場面で役立つ飲み物です。塩分や糖分を含むため、ふだんの飲水をすべて置き換える発想は避けたほうが安全です。
夜中のトイレが多い人は、夕方以降は飲ませないほうがいいですか?
極端な制限はおすすめしません。夜間頻尿の原因は水分だけではなく、塩分、薬、睡眠、心臓や腎臓の状態など多面的です。昼間に必要量を確保し、寝る直前の大量摂取を避けるほうが現実的です。心不全や腎疾患のある方は、必ず主治医の指示に合わせてください。
ゼリーや果物だけでも足りますか?
補助としては優秀ですが、それだけで必要量を満たすのは難しいことがあります。飲み物、汁物、ゼリー、果物を組み合わせ、トータルで考えるのがコツです。飲み物が苦手な人ほど、食事の中に水分を散らしていくと成功しやすいです。
認知症で拒否が強いときは、どう対応すればいいですか?
無理やり飲ませるのは逆効果です。場所を変える、好きな器を使う、一緒にお茶の時間にする、味を変える、ゼリーにするなど、拒否の原因をずらす工夫が有効です。必要性の説明より先に、安心して受け入れられる空気づくりが大切です。
まとめ
高齢者が水を飲まないときの対処で、いちばん大事なのは「意思が弱いから」と片づけないことです。飲まない背景には、渇きの鈍さ、トイレ不安、むせ、認知機能の変化があります。だから対策も、「もっと飲んで」では足りません。量を記録する、時間を固定する、好きな味を使う、とろみをつける、トイレ環境を整える、暑さを避ける。この積み重ねが、脱水も熱中症も、誤嚥も防ぎます。今年は4月22日から熱中症警戒アラートの運用が始まります。暑くなってから慌てないように、今日から家庭や現場で、その人が飲める仕組みを一つ作ってみてください。



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