「真夏なのに厚手の上着を着たがる」「春なのに真冬の肌着を重ねる」「寒い日なのに薄着のまま外へ出ようとする」。こんな場面に出会うと、家族はつい、どうして分からないの?と焦ってしまいますよね。でも、ここで大事なのは、服装だけを見て決めつけないことです。季節外れの服装は、認知症のサインであることもあれば、暑い寒いの感じ方の変化、見当識障害、こだわり、不安、急な体調変化が背景にあることもあります。しかも2026年4月、日本では今年度の熱中症予防強化キャンペーンが始まり、早い時期から高齢者の暑熱対策が改めて重視されています。服装のミスマッチは、見た目の問題ではなく、脱水、熱中症、低体温、転倒、外出トラブルにつながる生活課題です。だからこそ、叱るより先に、意味を読み解く視点が必要です。
- 季節外れの服装は、認知症そのものだけでなく、見当識障害や感覚のずれ、急な病気でも起こりうるという視点。
- 無理に脱がせるより、本人の安心を保ちながら安全を確保するほうが、介護はうまく進みやすいという原則。
- 受診の目安、家でできる環境調整、家族が言ってはいけない言葉まで分かる実践的な対応策。
- まず知っておきたい!季節外れの服装はなぜ起こるのか
- 認知症だけではない!似た症状を起こす見逃せない原因
- 家族が最初にやるべき対応は、脱がせることではなく整えること
- 家でできる!季節外れの服装を減らす7つの対応策
- 実はこれが盲点!服装の乱れから見える認知症のタイプ差
- 2026年春に意識したい!日本の最新事情と介護現場の注意点
- 受診の目安はいつ?迷ったらここを見る
- 服を替えてくれない日の本当の困りごとは、服そのものではなく「切り替え」が難しいこと
- 介護者がいちばん悩みやすい「不潔に見える問題」への向き合い方
- じつは多い!服の違和感の裏にある身体トラブル
- 外出前に揉める家ほど、朝の流れを見直したほうがいい
- 家族間で意見が割れると、本人はもっと混乱する
- 施設やデイサービスに伝えると助かる、服装トラブルの共有ポイント
- 記録すると見えてくる!服装の乱れが起きやすい条件
- 介護者自身が楽になるための「服選びの基準」を持っておく
- 本人の尊厳を守るために、あえて手を出しすぎない場面もある
- 個人的にはこうしたほうがいいと思う!
- 認知症で季節外れの服を着るときの疑問解決
- まとめ
まず知っておきたい!季節外れの服装はなぜ起こるのか

介護のイメージ
認知症のある人が季節外れの服を選ぶとき、背景はひとつではありません。よくあるのは、時間や季節の感覚があいまいになることです。これを見当識障害といい、時間、場所、人の認識が少しずつずれていきます。最初は曜日や日付の混乱から始まり、やがて「いまは何月か」「今日は寒い時期か」が結びつきにくくなります。その結果、真夏に冬服、春に厚手のコートといった服装が起きやすくなります。
もうひとつ見逃せないのが、体感温度のズレです。高齢になると、もともと暑さ寒さを感じにくくなる人がいます。認知機能の低下が重なると、室温、外気温、服の厚さの関係をうまく調整できません。本人は本気で「寒い」と感じていることもあれば、反対に薄着でも平気だと思っていることもあります。2026年4月から政府の熱中症予防強化キャンペーンが始まり、クーリングシェルターの活用も広がっていますが、こうした公的な動きは、高齢者の暑さ対策は夏本番前から始めるべきというメッセージでもあります。
さらに、認知症の人には安心できる服への強いこだわりが出ることがあります。昔から着慣れた一着、お気に入りの肌ざわり、いつも同じ順番で身につける習慣。家族から見れば「またその服?」でも、本人にとっては自分を保つためのよりどころです。ここを乱暴に崩すと、不安が強まり、かえって着替えが難しくなります。
認知症だけではない!似た症状を起こす見逃せない原因
ここはとても大切です。季節外れの服装が目立つからといって、すぐに認知症と決めつけるのは危険です。実際には、せん妄、うつ状態、難聴、薬の効きすぎ、甲状腺機能低下、慢性硬膜下血腫などでも、受け答えや判断が不安定になり、服装を含む行動の乱れが出ることがあります。とくに、転倒後しばらくしてから「なんだか様子がおかしい」「歩き方が変」「服の合わせ方がおかしい」という変化が出るなら、頭の病気も疑ってください。
急に始まった、一日の中で良いときと悪いときの差が大きい、発熱や脱水、便秘、寝不足、入院や引っ越しのあとに悪化したという場合は、認知症の進行だけではなく、せん妄などの急性変化の可能性があります。せん妄は対応を急ぐべき状態です。「最近おかしい」で済ませないことが、本人を守る近道です。
| 見分ける視点 | 考えやすい背景 | 家族の対応 |
|---|---|---|
| じわじわ増えてきた | 認知症やMCI、見当識障害 | 記録を取り、かかりつけ医へ相談する。 |
| 急に始まった | せん妄、感染、脱水、薬剤、副傷病 | 早めに医療機関へ相談し、急変として扱う。 |
| 転倒後に変わった | 慢性硬膜下血腫など | 頭部外傷の有無を伝えて受診する。 |
| 聞こえにくさが目立つ | 難聴による理解不足 | 大きめでゆっくり話し、聴力も確認する。 |
家族が最初にやるべき対応は、脱がせることではなく整えること
家族がいちばんやりがちなのは、「その服は違うよ!」「暑いから脱いで!」と正面から修正することです。でも、これがうまくいかないことは少なくありません。本人にとっては、いま選んだ服が正解だからです。そこで最初の鉄則は、否定より安心。まずは「寒かったんだね」「その服が落ち着くんだね」と受け止め、そのうえで安全へ寄せていきます。
たとえば真夏に厚着をしているなら、いきなり服をはぎ取るのではなく、室温を下げる、水分を勧める、汗の状態を確認する、外出時間を短くする。薄着で寒そうなら、ひざ掛けや羽織りをさっと足す。つまり、本人の選択をゼロにせず、環境側で事故を防ぐのです。これだけで衝突がかなり減ります。
見当識障害が関わる場合は、声かけにもコツがあります。長い説明は伝わりにくいので、短く具体的に言います。たとえば「今日は4月だけど風が強いね。これならちょうどいいよ」「今は外が暑いから、こちらの薄い上着にしようか」と、季節、気温、行動をひとまとまりで伝えると通りやすくなります。
言ってはいけない声かけ
「なんで分からないの?」「前も言ったでしょ」「変な格好で恥ずかしいよ」。この3つは、本人の自尊心を傷つけやすい言葉です。認知症の人は、記憶が抜けても傷ついた感情だけは残ることがあります。服装の修正が目的だったのに、結果として不信感だけが残る。これが介護を難しくします。
通りやすい声かけ
「こっちのほうが楽そうだね」「外は暑いみたいだから一枚軽くしよう」「一緒に選んでくれる?」。ポイントは、命令ではなく提案、訂正ではなく共同作業にすることです。着替えを「させる」より、「一緒に整える」に変えるだけで、本人の抵抗感はかなり下がります。
家でできる!季節外れの服装を減らす7つの対応策
ここからは、家族が今日から使える実践策をまとめます。大事なのは、本人を変えようとしすぎないことです。選びやすい環境を先に作ると、行動は自然に整いやすくなります。
- 衣替えは一気にせず、その時期に合う服だけを見える場所へ残すことです。冬物と夏物が同じ引き出しにあると、本人は混乱しやすくなります。
- 上下を組み合わせてハンガーに掛け、一式で選べる形にします。「上着だけ厚い」「下だけ薄い」といったミスマッチを減らせます。
- 服の前に、今日の気温や季節感が分かる視覚情報を置きます。大きなカレンダー、天気表示、窓際の外気確認が役立ちます。
- お気に入りの服は無理に捨てず、似た色、似た形、似た肌ざわりで複数そろえます。好みを尊重すると着替えが進みやすくなります。
- 外出前は「服」だけでなく、汗、手足の冷え、表情、室温を見ます。服装の正誤より、身体の状態確認を優先してください。
- 着替えを拒む日は、全部を変えようとせず、一枚だけ替える方法を使います。下着だけ、上着だけでも十分前進です。
- 家族内で対応をそろえます。ある人は叱り、ある人は黙認、では本人が混乱します。否定しない、短く伝える、安全優先の3原則を共有しましょう。
実はこれが盲点!服装の乱れから見える認知症のタイプ差
季節外れの服装は、どの認知症でも起こりえますが、現れ方には少し違いがあります。アルツハイマー型認知症では、記憶障害や見当識障害、段取りの悪さが重なり、「季節に合わせて服を選ぶ」という手順そのものが難しくなります。以前はおしゃれだった人が急に服装へ無頓着になるのも、このタイプでは珍しくありません。
レビー小体型認知症では、日によって調子の差が大きく、幻視やパーキンソン症状、自律神経症状が重なることがあります。暑さ寒さの感じ方や体調がぶれやすく、服装選びの不安定さとして見える場合があります。
前頭側頭型認知症では、服装そのものの理解よりも、こだわりや常同行動が強く出ることがあります。「その服しか着ない」「場に合わなくても同じ服を通す」といった形です。家族から見るとわがままに見えやすいのですが、性格の問題と片づけない視点が必要です。
2026年春に意識したい!日本の最新事情と介護現場の注意点
2026年4月、日本では今年度の熱中症予防強化キャンペーンが始まりました。4月から9月まで、時季に応じた予防行動の呼びかけが行われ、クーリングシェルターも全国の7割超の市町村で、合計2万3千以上の施設が指定済みと示されています。つまり、いまの日本の高齢者ケアでは、暑くなってから考えるでは遅い、という前提に変わっています。季節外れの厚着は、本人の自由を尊重しつつも、熱中症リスクとして具体的に見なければいけません。
さらに、2026年3月の気象庁のまとめでは、北日本の気温はかなり高く、地域によっては春先から平年とのズレが大きい状況でした。季節の移り変わりが早い年は、認知症の人にとって「体感」と「実際の気温」の差がいっそう大きくなります。家族が昔の感覚で「まだ春だから大丈夫」と見ていると、服装のミスマッチを見逃しやすくなります。
また、2026年3月には消費者庁が高齢者の認知機能障害に応じた消費者トラブルと対応策に関する研究公表を行いました。これは一見、服装と関係なさそうですが、重要な示唆があります。認知機能が落ちると、服装だけでなく、買い物、契約、外出判断、安全管理まで連鎖して弱くなるということです。季節外れの服装を見つけたときは、衣類だけでなく、水分管理、火の元、通院、金銭管理、外出リスクも同時に点検したほうが安全です。
受診の目安はいつ?迷ったらここを見る
家で様子を見るだけでいいのか、病院へ行くべきか。ここは多くの家族が迷うところです。結論から言うと、季節外れの服装だけで受診を決める必要はありません。ただし、次のような変化が重なるなら、相談をおすすめします。
服装の乱れに加えて、同じ話を何度もする、約束の日時を間違える、慣れた家事ができない、探し物が増える、怒りっぽい、無関心、外出で迷う、幻視がある。このように、複数の生活変化が並んできたときは、認知機能低下の可能性が高まります。また、頭を打ったあと、急にぼんやりした、歩き方が変、昼夜逆転が強い、熱がある、食べない、眠れないといった場合は、早めの受診が安心です。
受診を勧めるときは、「認知症の検査に行こう」と真正面から言うと、拒否されやすいものです。いつもの内科のついで、血圧や薬の確認、最近ちょっと疲れやすいから相談しようという入口のほうが、本人のプライドを守れます。地域には、認知症初期集中支援チームや地域包括支援センター、認知症カフェなど、家族ごと支える仕組みもあります。困ったら家族だけで抱え込まないことが大切です。
服を替えてくれない日の本当の困りごとは、服そのものではなく「切り替え」が難しいこと

介護のイメージ
現場で本当によくあるのは、季節外れの服を着ること自体より、いったん着た服から切り替えられないことです。家族は「暑いのにその服は危ない」と見えているのに、本人は「もう着た」「これで落ち着く」「いつもの順番がある」と感じています。ここで正面から「脱いで」「違う」と入ると、服の問題が一気に自尊心の問題へ変わります。すると、話し合いではなく対立になります。
実際の介護では、服の問題は記憶障害だけでなく、段取りの障害や不安の強さがからんでいることが多いです。たとえば、着替えは「引き出しを開ける」「天気に合う服を選ぶ」「今着ている服を脱ぐ」「順番に着直す」と、思った以上に工程が多い行為です。元気なときは無意識にできていたことが、認知症ではひとつひとつ重い作業になります。だから、家族が感じる以上に、本人は着替えだけで疲れていることがあります。
ここで役立つのは、説得ではなく工程を減らす工夫です。服を二択に絞る。上下をそろえて見える位置に置く。下着から外着まで重ね順に並べる。着替えの前にトイレを済ませる。室温を先に整えておく。これだけで、着替えの成功率はかなり上がります。ぶっちゃけ、認知症介護では「本人に理解してもらって動いてもらう」より、迷わなくても動ける形を作るほうが現実的です。
介護者がいちばん悩みやすい「不潔に見える問題」への向き合い方
家族が誰にも言いにくい悩みのひとつが、いつも同じ服で不潔に見えることです。本人は平気でも、家族は近所の目やデイサービスの送迎時の印象が気になります。でも、ここはかなり本音で言うと、家族が苦しいのは「清潔の問題」だけではありません。ちゃんとしていた親が変わってしまった悲しさと、自分がきちんと介護できていないように見られる不安が重なっていることが多いです。
だから、まず自分に「恥ずかしいと思っているのは誰か」を問い直してみてください。もちろん、皮脂汚れ、食べこぼし、尿臭、汗によるかぶれは放置しないほうがいいです。ただ、見た目の変化すべてを無理に正そうとすると、家族も本人も消耗します。現実的には、清潔の最低ラインを守ることが優先です。毎日全身きれいな着替えを目指して失敗を重ねるより、肌着だけ替える、首回りだけ拭く、上着だけ交換する、汚れた服をさっと回収する。この積み重ねのほうが続きます。
介護の現場感覚で言うと、服が替えられない日は「ゼロか百か」で考えないことが大事です。ズボンはそのままでも下着だけ替えられたら十分前進です。上着が無理でも、汗を拭いて脇だけ清潔にできたら意味があります。介護はきれいごとでは回らないので、全部やるより、続くやり方で七割を取りにいくほうがうまくいきます。
じつは多い!服の違和感の裏にある身体トラブル
現実では、「季節感が分からない」の一言では片づかないケースがかなりあります。たとえば、皮膚が乾燥していて服がこすれる、下着のゴムが痛い、肩が上がらず袖が通しにくい、便秘でお腹が苦しい、むくみでズボンがきつい、尿もれが不安で厚着する。こうした身体の不快感が服へのこだわりとして出ることがあります。
認知症のある人は、不快をうまく言葉にできないことがあります。だから「この服いや!」の裏に、「チクチクする」「締めつけがつらい」「着替えると寒い」「前開きじゃないと腕が痛い」が隠れています。ここを見抜けないと、家族はずっと服の好みの問題だと思ってしまいます。
こんなときは、服だけ見ないで、次のような視点で観察してみてください。
- 首元や脇、背中をかゆがっていないか確認することです。乾燥や汗疹があると、特定の服を嫌がりやすくなります。
- 袖を通すときに顔をしかめないかを見ることです。肩関節痛や拘縮があると、着替えそのものが苦痛になります。
- ズボンの着脱時に手間取らないかを見ることです。トイレ動作が遅れる服は、本人にとって強いストレスになります。
介護では、服の問題を服だけで解決しようとすると詰まります。素材、重さ、前開き、伸縮性、トイレのしやすさ、洗いやすさまで含めて考えると、現場のストレスはかなり減ります。
外出前に揉める家ほど、朝の流れを見直したほうがいい
デイサービス、通院、親族の集まり。外出前になると服装トラブルが爆発する家は少なくありません。これは本人がわがままなのではなく、急かされること自体が負担だからです。認知症の人は、先の予定が見えにくく、急な変更に弱いことがあります。そこへ「早くして」「時間がない」「なんでまだ着替えてないの」と重なると、頭の中がいっぱいになります。
体験ベースで言うと、外出前に成功しやすいのは、朝いきなり着替えさせる方法ではなく、前日から流れを作る方法です。前夜のうちに服をセットする。朝食後ではなく排泄後に着替える。出発一時間前には声をかけ始める。玄関に上着だけ用意して最後に羽織る。こうした小さな段取りで、驚くほど衝突が減ることがあります。
また、家族が見落としやすいのが鏡の使い方です。鏡の前で「ほら変でしょ」と確認させると、本人が混乱したり傷ついたりすることがあります。逆に、昔おしゃれだった人なら、鏡の前でブラシやお気に入りの小物を用意すると、自然に身支度モードに入ることがあります。認知症介護は、正論よりも習慣のスイッチを押すほうが効く場面が本当に多いです。
家族間で意見が割れると、本人はもっと混乱する
これもかなり現実的な問題です。ある家族は「好きにさせればいい」と言い、別の家族は「ちゃんとさせないとだめ」と言う。すると、本人は人によって求められることが違うので、ますます混乱します。しかも、介護の揉めごとはたいてい、本人の前で起きます。本人からすると、「自分のせいで空気が悪い」と感じやすく、それが不安や拒否を強めます。
だから、服装対応では家族会議がとても大事です。大げさなものではなく、最低限、何を優先するかを決めておくことです。たとえば「命に関わる暑さ寒さは調整する」「見た目のズレは多少目をつぶる」「着替えは一日一回成功すれば合格」「デイサービスの日だけは一緒に整える」。この基準があると、介護者同士の摩擦が減ります。
現場で感じるのは、介護がつらくなる家ほど、「正しい対応」を巡って空気が険悪になりやすいことです。でも本人に必要なのは、完璧な理論ではなく、家族の態度が毎回大きくブレないことです。安心できる相手、安心できる順番、安心できる言葉。それが整うだけで、服の問題も落ち着くことがあります。
施設やデイサービスに伝えると助かる、服装トラブルの共有ポイント
在宅だけで抱え込まないために、介護サービス側へ伝えておくとよい情報があります。ここが上手く共有できると、現場はかなり助かりますし、家族も孤立しにくくなります。
伝える内容は難しくありません。「本人が嫌がる素材」「着やすい順番」「お気に入りの服」「更衣を拒否しやすい時間帯」「着替えが通りやすい声かけ」「暑がりか寒がりか」「トイレに行きやすい服かどうか」。このあたりです。認知症のケアは、一般論よりその人のクセ情報が強い武器になります。
また、送迎時に家族が恥ずかしさから「すみません、また同じ服で」と先に謝ってしまうことがあります。でも介護職からすると、知りたいのは謝罪より情報です。「今日は朝から着替え拒否が強いです」「この上着だけは脱ぎません」「午後は暑がるので水分多めでお願いします」と言ってもらえたほうが、ケアはしやすいです。家族は頑張り不足なのではなく、情報提供のしかたを変えるだけで支援を受けやすくなると知っておいてください。
記録すると見えてくる!服装の乱れが起きやすい条件
介護で意外と効くのが、短い記録です。大げさな介護日誌でなくてかまいません。「何月何日、暑い日、厚手の服を選んだ」「便秘三日目」「夜眠れていない」「外出予定あり」「夕方から不穏」といったメモをつけてみると、パターンが見えてきます。
たとえば、便秘の日に厚着が増える、来客前に変な重ね着をする、眠れていない翌日に着替え拒否が強い、デイサービスのある日だけ頑固になる。こうした関連が見えると、対策は一気に具体的になります。服だけに注目していると分からなかった原因が、睡眠、排便、不安、予定変更だったと分かることは珍しくありません。
受診時にもこの記録は役立ちます。医師や看護師に「なんとなく変です」と伝えるより、「二週間前から週三回、外気温20度超でも裏起毛を選ぶ」「夜間不眠の翌日に悪化」「転倒後から増えた」と伝えたほうが、評価しやすくなります。認知症介護は感情が動くので記憶があいまいになりやすいですが、短いメモがあるだけで相談の質が変わります。
介護者自身が楽になるための「服選びの基準」を持っておく
家族が毎回悩むのは、選ぶ基準があいまいだからでもあります。なので、実用的には家庭ごとに服選びの基準を決めておくと楽です。たとえば、「前開き」「伸びる」「洗濯しやすい」「乾きやすい」「ポケットが深すぎない」「トイレで下げやすい」「本人が嫌がらない素材」。この基準で服をそろえると、毎朝の失敗が減ります。
特に見落とされやすいのは、トイレのしやすさです。おしゃれでも、ボタンが多い、ベルトが複雑、重ね着が多い服は、排泄の失敗につながりやすいです。すると本人は不快になり、家族は着替えの回数が増え、双方が疲れます。介護向けの服は、見た目より機能で選んだほうが、日常は回ります。
そして、季節外れの服装が気になるときほど、一軍の服を少数精鋭にするのがおすすめです。服が多すぎると選択肢が増え、認知症の人には負担です。選ぶ自由を増やすより、迷わない自由を作る。これが実生活ではかなり効きます。
本人の尊厳を守るために、あえて手を出しすぎない場面もある
介護では「やってあげる」が優しさに見えますが、いつも正しいとは限りません。季節外れでも、命の危険がなく、本人が落ち着いているなら、すぐに修正しないという選択もあります。なぜなら、服を自分で選ぶことは、認知症が進んでも残りやすい自己決定のひとつだからです。
もちろん、熱中症や低体温の危険があるなら話は別です。でも、介護の本質は「すべてを正すこと」ではなく、その人らしさを壊さずに暮らしを支えることです。家族が気になるズレでも、本人にとっては「自分で選べた」という大事な感覚かもしれません。その感覚まで奪ってしまうと、生活全体の意欲が落ちることがあります。
現場では、服装よりも、笑顔があるか、食べられているか、眠れているか、転ばないか、人と関われているかのほうが、ずっと大事です。服だけに目がいくと、介護の目的を見失いやすいので注意が必要です。
個人的にはこうしたほうがいいと思う!
個人的にはこうしたほうが、ぶっちゃけ介護の本質をついてるし、現場の介護では必要なことだと思うのですが、季節外れの服を着ることを「間違い」として止める前に、「その服を着ないと不安なのはなぜか」を考えたほうがいいです。ここを飛ばして正論で押すと、たいてい関係が悪くなります。介護って、正しいことを言う競技じゃないんですよね。毎日を回しながら、本人の安心と安全を両立させる仕事なんです。
だから、家族が目指すべきなのは、完璧に季節に合った服装へ矯正することではなく、危険は避ける、でも自尊心は潰さないという落としどころだと思います。厚着なら室温を下げる、薄着なら一枚足す、着替え拒否なら全部ではなく一部だけ替える。そういう現実的な工夫こそ、介護では強いです。
それと、もうひとつ大事なのは、家族が「ちゃんとやらなきゃ」に縛られすぎないことです。認知症介護では、毎回きれいに正解を出すのは無理です。うまくいかない日があるのが普通です。でも、そこで責めない、怒鳴らない、翌日に持ち越しすぎない。この積み重ねのほうが、服装を整えることよりずっと大きな意味があります。
結局のところ、季節外れの服装への対応で問われているのは、服の知識だけではありません。観察する力、急がせない力、環境を整える力、本人の気持ちを傷つけずに安全へ寄せる力です。ここができる家ほど、介護が長く続いても壊れにくいです。だからこそ、服を見てイライラした日は、「この人は困らせたいんじゃなく、困っているのかもしれない」と一回立ち止まってみてください。その視点に変わった瞬間から、介護はかなり変わります。
認知症で季節外れの服を着るときの疑問解決
本人が厚着をやめず、汗びっしょりでも脱ぎたがりません。どうすればいいですか?
まずは無理に脱がせず、冷房、送風、水分、日陰で身体を守ってください。そのうえで、「この一枚だけ軽くしようか」と部分的に調整します。顔が赤い、ぼんやりする、脈が速い、返事がおかしいなどがあれば、熱中症も疑ってすぐ対応してください。
同じ服ばかり着ます。洗濯や衛生面が気になります。
お気に入りがあるなら、似た服を複数用意する方法が現実的です。本人にとっては「同じ安心」が保てるので、家族の負担も減ります。見た目の恥ずかしさより、本人の安心と清潔の両立を目指しましょう。
季節外れの服装は、認知症の初期症状ですか?
初期症状のひとつとして見られることはあります。ただし、それだけで判断はできません。見当識障害、生活能力の低下、他の症状の有無を一緒に見てください。単独より、複数の変化がそろうかどうかが大切です。
無理に直さないほうがいいなら、放っておいてもいいのでしょうか?
放置ではありません。安全を確保しながら、無理に争わないという意味です。薄着で寒さが危険、厚着で熱中症が危険、転倒しやすい服装、外出先で著しく不適切な服装なら、環境調整や声かけで整えていく必要があります。
家族が限界です。どこへ相談すればいいですか?
かかりつけ医、地域包括支援センター、自治体の高齢者相談窓口が第一歩です。認知症の疑いがある段階でも相談して大丈夫です。家族の疲労がたまるほど、対応はきつくなりやすいので、早めに外へつなぐほうが結果として本人にも優しくなれます。
まとめ
認知症で季節外れの服を着るという行動は、単なる困った癖ではありません。そこには、季節が分かりにくい、暑さ寒さを感じにくい、不安が強い、いつもの一着に安心したい、あるいは急な病気が隠れている、といった理由が重なっています。だから対応の出発点は、「間違いを正すこと」ではなく、この服を選んだ理由を想像することです。
家族がやるべきことは、叱ることでも、力づくで着替えさせることでもありません。安全を守り、選びやすい環境を作り、短くやさしく伝え、必要なら受診につなぐことです。季節外れの服装は、本人が助けを必要としているサインかもしれません。今日からは、服を見て責めるのではなく、服の奥にある不安や混乱を見つけにいってください。そこから介護は、ぐっとやりやすくなります。


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