知られざる在宅介護の延命治療「やめたい」と家族が願うとき、9割が知らない5つの真実

「いつか来るその日のために、どうすればいいんだろう…」

大切な家族が病気で倒れ、入院。医師からは「これ以上の回復は見込めない」と告げられ、人工呼吸器や胃ろうといった延命治療を続けている。在宅介護への移行を考えるものの、ご家族から「延命治療をやめてほしい」と突然言われたら、あなたはどうしますか？「それって介護放棄になるのでは？」「法律的に問題はないの？」と頭の中がぐるぐるしませんか。

終末期医療や延命治療は、多くの人にとって未知の領域です。ましてや、ご家族から「延命治療の中止」を求められることは、想像を絶する重圧かもしれません。この記事では、そんなあなたが抱える不安や疑問を解消し、ご家族の意思を尊重しながら後悔のない選択をするための道しるべをお伝えします。在宅医療のプロとして、これまでに数多くの終末期を支えてきた経験から、あなたが今知るべき「5つの真実」を余すことなくお伝えします。

在宅介護における「延命治療」の定義を再確認する

介護のイメージ

まず、延命治療とは何を指すのか、その定義を明確にしておきましょう。一般的に、延命治療とは病気の回復を目的とせず、生命の維持だけを目的とする医療行為全般を指します。具体的には、人工呼吸器の装着、人工栄養（胃ろう、経鼻胃管チューブ）、人工透析などが含まれます。

延命治療は、患者さんの尊厳やご家族の意向を無視して行われるものではありません。しかし、予期せぬ事故や病気で意思表示ができない状況になった場合、あらかじめ意思を伝えていなければ、延命治療が開始されるケースが少なくありません。今回の記事で登場するスミコさんのケースも、まさにこの典型例と言えます。本人は延命治療を望んでいなかったにもかかわらず、救急搬送されたことで延命治療が開始されてしまったのです。

ここで重要なのは、延命治療の中止は単なる医療行為の中止ではなく、患者さんの人生観や価値観、そしてご家族の深い思いが複雑に絡み合う、極めて個人的な問題だということです。だからこそ、ご家族から延命治療の中止を求められたときは、安易に結論を出さず、慎重に向き合う必要があるのです。

家族から「延命治療をやめたい」と申し出があった時に、まず確認すべき2つの重要ポイント

ご家族から延命治療の中止を求められた場合、在宅医療の現場で私が真っ先に確認するのは、以下の2つのポイントです。

①患者さん本人の意思をどこまで把握しているか

最も重要なのは、患者さん本人が本当に延命治療を望んでいなかったのか、その意思を可能な限り確認することです。もし、意思表示ができない状態であっても、これまでの会話や人生観から推し量れることがたくさんあります。

スミコさんの場合、実父の胃ろうを見て「自分はそこまでして生きていたくない」と話していたことが、娘さんの延命治療中止の決断を後押ししました。このように、過去の発言や本人の価値観は、現在の選択を決定する上で非常に重要な手がかりとなります。

②介護放棄や経済的な理由だけで判断していないか

次に、ご家族が延命治療の中止を望む理由に、介護疲れや経済的な負担、またはご家族間の対立といった、患者さん本人のためではない要因が絡んでいないか、慎重に確認する必要があります。

例えば、「在宅介護になったら、自分が仕事を辞めなきゃいけないから」「他の兄弟は協力してくれないから、もう無理」といった理由で延命治療の中止を希望しているケースもゼロではありません。もしそうした背景がある場合は、延命治療の中止だけが解決策ではありません。在宅医療チームとして、介護負担を軽減するためのサービスの提案や、ご家族間の話し合いをサポートすることも大切な役割です。

後悔しない決断のために！在宅介護のプロが教える3つのステップ

ご家族の申し出を真摯に受け止め、患者さんにとって最善の道を見つけるためには、以下の3つのステップを踏むことを強く推奨します。

ステップ1患者さんの意思決定能力を評価する

まず、現在の患者さんに意思表示能力があるのかを正確に評価します。完全に意思表示ができない状態か、それともわずかでも反応や感情表現があるのか。専門家である医師が評価することで、今後の話し合いの進め方が見えてきます。

ステップ2多職種チームでじっくり話し合う

延命治療の中止は、医師だけで決めることではありません。多職種チーム、つまり医師、看護師、ケアマネジャー、理学療法士、ご家族が一体となり、時間をかけて話し合うことが不可欠です。

この話し合いでは、単に医療的な見解を述べるだけでなく、患者さんがこれまでの人生で大切にしてきたこと、ご家族が抱える感情や葛藤を共有する場として機能します。お互いの思いを理解し合うことで、より納得感のある結論にたどり着くことができるのです。

ステップ3具体的な代替案と「希望の医療」を探す

延命治療を中止する、という選択は、ただ「何もしない」ということではありません。患者さんの苦痛を和らげるための緩和ケアや、安らかに過ごすための看取りケアといった、新たな「希望の医療」へと移行することです。

例えば、経鼻胃管チューブを抜去して栄養摂取をやめる代わりに、口から少しでも好きなものを食べられるようにサポートする。人工呼吸器を外して呼吸が苦しくなった場合、医療用麻薬などを用いて苦痛を取り除く。これらはすべて、患者さんの尊厳を守り、安らかな最期を迎えるための大切な医療です。多職種チームと連携し、具体的な代替案を検討しましょう。

在宅介護に関する延命治療の疑問Q&A

在宅介護における延命治療に関して、よくある質問とその答えをまとめました。

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まとめ｜後悔しない在宅介護の延命治療、その選択は「愛」と「対話」から生まれる

大切な家族の延命治療について、中止するかどうか決断を迫られることは、人生で最も重い選択の一つかもしれません。しかし、それは決して「残酷な決断」ではありません。それは、患者さんの人生観と尊厳を尊重し、残された時間を穏やかに過ごしてほしいと願う、深い「愛」から生まれる決断なのです。

そのためには、ご家族や多職種チームとの対話が不可欠です。一人で悩まず、思いを言葉にして伝えること。これが、後悔のない選択をするための第一歩です。この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、前に進むための力になれば幸いです。