「また、物がなくなったって言われた…」「もしかして、うちのスタッフが疑われてる?」もしあなたがそう感じているなら、それは決して他人事ではありません。老人ホームや介護施設では、ちょっとした物の紛失が、入居者やご家族との深刻なトラブルに発展してしまうことが珍しくないからです。それは信頼関係を壊し、スタッフのモチベーションを低下させ、最悪の場合、法的な問題にまで発展しかねない、まさに時限爆弾のような問題です。
でも、安心してください。この問題は「誰が悪い」という犯人探しではなく、未然に防ぐための「仕組みづくり」で解決できることがほとんどです。この記事では、私がこれまで数多くの施設で見てきた、誰もが陥りがちなトラブル事例と、それを根本から解決するプロが実践する5つの具体的な対策を徹底解説します。この記事を読めば、ただ物を探すだけでなく、トラブルを未然に防ぎ、入居者やご家族、そしてスタッフ全員が安心して過ごせる「安全・安心な施設運営」への道筋が見えてきます。
なぜ物がなくなる?老人ホームで多発する「紛失」の3つの落とし穴

介護のイメージ
物がなくなる原因は、単なる「盗難」だけではありません。むしろ、日常のオペレーションに潜む見過ごされがちな「3つの落とし穴」が、トラブルの引き金になるケースがほとんどです。
落とし穴その1ヒューマンエラーによる「うっかり紛失」
介護の現場は常に時間との戦いです。忙しい時間帯には、うっかりミスが起こりやすくなります。例えば、洗濯後の衣類を仕分ける際に、他の入居者の持ち物と混ざってしまうことがあります。特に、似たようなデザインの衣類や下着、靴下などは見分けがつきにくく、別の部屋に誤って届けられてしまう「誤配」が発生しやすいです。また、片付けの際に、本来の場所ではないところに一時的に置いたまま忘れてしまったり、引き継ぎが不十分だったりすることも、「うっかり紛失」につながります。
落とし穴その2認知機能の低下による「ご本人の見当識障害」
入居者ご自身が、物の置き場所を忘れてしまうことによる紛失も非常に多いケースです。これは特に、認知機能の低下が見られる方によく起こります。例えば、タンスの引き出しに入れたはずの財布が見つからず、「盗まれた!」と訴えたり、無意識のうちに別の場所に物を移動させてしまったりすることがあります。この場合、ご本人は本当に「なくなった」と信じているため、ご家族も施設側を疑ってしまい、トラブルに発展しやすいです。
落とし穴その3管理体制の不備による「盗難リスクの増大」
残念ながら、入居者同士や、ごく一部の職員による窃盗が皆無であるとは言えません。しかし、多くの場合は、厳重な管理体制が整っていないことが、盗難リスクを高めていると言えます。たとえば、貴重品や金銭の管理ルールが不明確だったり、誰でも自由に出入りできる場所に貴重品が放置されていたりすると、思わぬ事態を招く可能性があります。このような状況は、「施設が責任を持って管理していない」と見なされ、後々のトラブルの火種となります。
知っておくべき3つの鉄則紛失トラブル発生時の「正しい対応」とは?
もし、入居者やご家族から物の紛失を訴えられたら、慌てて謝罪する前に、まずは冷静に以下の3つの鉄則を実践することが重要です。
鉄則その1感情的にならず、「事実」と「経緯」を徹底的に確認する
「盗まれた」と強く訴えられても、まずは感情的な対応は避けましょう。入居者やご家族の不安な気持ちに寄り添いつつも、まずは事実の確認に徹します。具体的には、いつ、どこで、何がなくなったのか、最後に見たのはいつかなどを、落ち着いてヒアリングします。この時、必ず記録に残すことが重要です。記録は後々のトラブル解決の重要な手がかりとなります。
鉄則その2責任の所在を明確にし、契約内容に立ち返る
物の紛失について、施設がすべて弁償する義務があるわけではありません。重要なのは、入居契約書に記載された「貴重品管理に関する取り決め」です。多くの施設では、貴重品は原則として自己管理とされており、紛失・盗難に対する施設の責任範囲が明記されています。ご家族に疑いを向けられた際には、感情的にならず、まずは「契約内容に基づき、施設の責任範囲外であることを丁寧に説明する」ことが大切です。
もちろん、説明するだけでなく、見つかるまで全力で探す姿勢を見せることも忘れてはいけません。
鉄則その3外部機関との連携を視野に入れる
もし、盗難が強く疑われるなど、事態が深刻な場合は、施設だけで問題を抱え込まず、外部機関に相談することも一つの手です。例えば、以下の機関への相談が考えられます。
- 盗難が疑われる場合警察に被害届を提出する
- 法的・契約上の問題に発展した場合弁護士に相談する
- 中立的な立場での解決が必要な場合国民生活センターや第三者評価機関に助言を求める
特に、防犯カメラの映像など客観的な証拠が残っていれば、警察や弁護士との連携もスムーズに進みます。
事例から学ぶ!9割の施設が知らないトラブル回避のための「5つの予防策」
実際に起きたトラブル事例から学べる、誰もが実践できる効果的な予防策を5つご紹介します。
予防策1持ち物管理台帳の徹底と「衣類への記名ルール」の徹底
紛失トラブルの多くは、持ち物の管理が不十分なことで起こります。入居時には、ご本人の持ち物すべてをリスト化し、「持ち物管理台帳」を作成しましょう。特に衣類は、洗濯時に他のものと混ざりやすいため、全ての衣類にフルネームで記名することを徹底し、ご家族にもその協力を仰ぎましょう。
予防策2ダブルチェック体制の構築と「ヒヤリハット」の共有
洗濯や清掃など、物の移動が発生する業務では、職員によるダブルチェック体制を構築することが効果的です。また、「危うく物を誤配しそうになった」「〇〇さんの持ち物が見つかりにくい場所に置かれていた」といった、些細な「ヒヤリハット」を職員間で共有する習慣をつけましょう。これにより、小さなミスが大きなトラブルに発展するのを未然に防げます。
予防策3貴重品管理と「施設内での現金管理ルール」の明確化
金銭や通帳、補聴器、入れ歯などの貴重品は、紛失時のリスクが非常に高いです。まずは、入居前に「貴重品は原則自己管理」であることをご家族に伝え、そのルールを契約書に明記しましょう。ただし、認知症などでご自身での管理が難しい場合は、施設が預かることもありますが、その場合は「誰が」「何を」「いつ」預かったのかを詳細に記録し、ご家族に定期的に報告する仕組みを整えることが大切です。
予防策4「入居者間のトラブル」を見つけ出すための観察力強化
物がなくなったという訴えは、入居者同士の人間関係のサインであることもあります。例えば、ある入居者が、他の入居者の持ち物を「自分のものだ」と思い込んで部屋に持ち帰ってしまうことがあります。これは認知機能の低下が原因の場合もありますが、その背後に隠されたご本人の心理を理解することが重要です。日頃から入居者同士の関係性を観察し、「いつもと違う様子はないか?」といった視点を持つことが、トラブルの早期発見につながります。
予防策5防犯カメラを「トラブルの証拠」ではなく「安心の証」として導入する
防犯カメラは、単なる監視ツールではありません。紛失トラブルが起きた際に「いつ、誰が、どこで」物を扱ったのかを客観的な証拠として記録できるため、職員が不当な疑いをかけられることから守ってくれます。また、その存在自体が抑止力となり、トラブルの発生を未然に防ぐ効果もあります。なによりも、入居者やご家族にとって、「見守られている」という安心感を提供することにつながります。
老人ホーム入居者トラブル事例集に関するよくある質問
Q1介護保険は、紛失した物の弁償に使えますか?
残念ながら、介護保険は紛失した物の弁償には使えません。介護保険は、あくまでも介護サービスを提供するための制度であり、物の紛失や破損による損害賠償には適用されないことを覚えておきましょう。もし弁償の必要が生じた場合は、施設の責任範囲や加入している損害賠償保険などを確認して対応することになります。
Q2紛失した物が高額な場合は、必ず施設が弁償しないといけないの?
すべての場合において施設が弁償する義務があるわけではありません。弁償義務の有無は、「施設側に過失があったかどうか」で判断されます。例えば、施設が管理を怠っていた場合(金庫に保管すべき貴重品を放置していたなど)は過失が認められ、弁償義務が発生する可能性があります。しかし、ご家族や入居者自身が管理していた物がなくなった場合は、施設に過失がないため、弁償義務は発生しません。契約書に「貴重品は自己管理」と明記しておくことが、このリスクを回避するために非常に重要です。
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まとめ
老人ホームでの物の紛失は、単なる「物がなくなった」という出来事ではなく、信頼関係や施設運営の根幹を揺るがす深刻な問題です。しかし、この記事でご紹介したように、原因を正しく理解し、「予防」「対応」「再発防止」という3つのフェーズで適切な対策を講じることで、多くのトラブルは未然に防ぐことができます。大切なのは、「誰か」に任せるのではなく、「仕組み」として解決することです。
物的管理の強化、スタッフ間の情報共有、そして防犯カメラのようなテクノロジーの活用は、これからの介護施設運営において、もはや欠かせない要素です。この記事が、あなたの施設をトラブルから守り、入居者、ご家族、そしてスタッフ全員が心から安心して過ごせる環境作りの一助となれば幸いです。
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