「いつも来てくれていたヘルパーさんが来られなくなった」「訪問介護事業所から断られてしまった」——そんな声が、2024年度の介護保険改正以降、全国各地で聞かれるようになっています。実は今、訪問介護の現場で深刻な事態が進行しているのをご存知でしょうか。
厚生労働省の調査によれば、2024年度の介護報酬改定後、訪問介護事業所の約6割が減収という衝撃的な結果が明らかになりました。これは単なる数字の問題ではありません。訪問介護を利用されているご家族、そしてこれから利用を考えている方々にとって、サービスの継続性や質に直結する重大な問題なのです。
この記事では、2024年の介護保険改正が訪問介護に与えた具体的な影響と、事業所や利用者が今知っておくべき対策について、初心者の方にもわかりやすく徹底解説します。現場の最前線で何が起きているのか、そしてこの危機をどう乗り越えるべきか、一緒に見ていきましょう。
2024年介護保険改正で訪問介護に何が起きたのか

介護のイメージ
2024年4月から実施された介護保険制度の改正は、訪問介護サービスに大きな変化をもたらしました。最も大きな影響を与えたのが基本報酬の引き下げです。
これまで訪問介護事業所が受け取っていた基本的なサービス提供料が減額されたことで、同じサービスを提供していても収入が減少するという構造的な問題が発生しました。厚生労働省が2024年9月に実施した調査では、全国約3,300の訪問介護事業所を対象に実態調査が行われ、1,200を超える事業所から回答が得られています。
その結果は予想以上に深刻でした。改定後の2024年8月時点で前年同月比と比較すると、介護保険収入が5%以上減少した事業所の割合が最も高く、特に中山間地域や離島では実に58.7%もの事業所が減収となっています。都市部でも状況は同様で、地域を問わず訪問介護事業所が厳しい経営環境に直面していることが浮き彫りになったのです。
さらに注目すべきは、都市部でも地方でも利用者宅への訪問回数が6割以上の事業所で減少しているという事実です。これは単に報酬が減っただけでなく、サービスの提供体制そのものが縮小していることを意味しています。
減収の背景にある3つの深刻な要因
基本報酬引き下げの直接的インパクト
2024年度の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬が引き下げられました。この改定は、介護保険財政の持続可能性を考慮した措置とされていますが、現場への影響は想定以上に大きなものとなっています。
基本報酬とは、サービスを提供した際に事業所が受け取る基本的な収入のことです。これが減額されるということは、同じ時間、同じ内容のサービスを提供しても、得られる収入が減るということを意味します。事業所の立場からすれば、人件費や運営費は変わらないのに収入だけが減少するという厳しい状況に追い込まれているのです。
深刻化する人手不足の連鎖
訪問回数が減少している最大の理由は、実は人手不足にあります。2025年4月の衆議院厚生労働委員会で立憲民主党の早稲田ゆき議員が指摘したように、「人手不足で依頼が来ても訪問できない事業所が増えている」のが現実です。
この人手不足は単なる労働力不足ではありません。処遇改善が追いついていないことが根本的な原因となっています。訪問介護の仕事は身体的にも精神的にも負担が大きいにもかかわらず、賃金水準が他の職種と比較して低いままです。基本報酬が引き下げられた今、事業所が職員の給与を上げる余裕はさらに厳しくなっており、優秀な人材の確保や定着が一層困難になっています。
地域格差と需要変動の影響
福岡資麿厚生労働相は、訪問回数減少の要因として地域による違いを説明しています。地方部では高齢者人口のピークアウトによるサービス需要の減少が見られる一方、都市部では事業所間の競争激化が要因として挙げられています。
しかし、この説明だけでは現場の実態を十分に捉えきれていません。地方では確かに人口減少が進んでいますが、同時に訪問介護を提供できる事業所自体も減少しており、結果として必要なサービスを受けられない高齢者が増えているという矛盾した状況も生まれているのです。
事業所が生き残るための5つの実践的対策
厳しい経営環境の中でも、工夫次第で事業を継続し発展させることは可能です。ここでは、訪問介護事業所が今すぐ取り組むべき具体的な対策をご紹介します。
まず第一に、処遇改善加算の最大限活用が重要です。基本報酬は引き下げられましたが、処遇改善加算などの加算制度は継続されています。職員の給与アップにつながるこれらの制度を確実に取得し、人材確保と定着を図ることが最優先課題となります。加算取得には一定の要件がありますが、専門家や行政の相談窓口を活用することで、取得への道筋が見えてきます。
第二に、サービス提供体制の効率化です。訪問ルートの最適化、ICTツールの導入による事務作業の効率化、職員のスキルアップによる多機能化など、限られた人材でより多くのサービスを提供できる体制づくりが求められます。特に移動時間の削減は、一日に訪問できる件数を増やすことに直結します。
第三に、他サービスとの連携強化が効果的です。デイサービスや訪問看護、地域包括支援センターなどとの連携を深めることで、より包括的なケアを提供できるだけでなく、新規利用者の獲得にもつながります。地域の中でネットワークを構築することが、長期的な事業の安定につながるのです。
第四に、専門性を高めた差別化戦略も重要です。認知症ケアや医療的ケアなど、特定の分野で専門性を持つことで、他の事業所との差別化が図れます。専門的なサービスは利用者からの信頼も厚く、安定的な利用につながりやすいという特徴があります。
第五に、自治体の支援制度の積極的活用を忘れてはいけません。多くの自治体が訪問介護事業所向けの支援策を用意しています。補助金や助成金、研修制度などの情報を常にチェックし、活用できるものは積極的に活用していきましょう。
利用者・家族が知っておくべき重要なポイント
訪問介護を利用している方、またはこれから利用を考えている方にとって、2024年の改正がどのような影響をもたらすのか、正しく理解することが大切です。
最も注意すべきは、サービスの提供が難しくなるケースが増えているという現実です。人手不足により、新規の利用希望を受け入れられない事業所や、既存の利用者への訪問回数を減らさざるを得ない事業所が増えています。
そのため、早めの相談と計画が重要になります。介護が必要になりそうだと感じたら、できるだけ早く地域包括支援センターやケアマネジャーに相談し、訪問介護が必要になったときにスムーズにサービスを受けられるよう準備しておくことをお勧めします。
また、一つの事業所だけに頼るのではなく、複数の選択肢を持っておくことも賢明です。万が一、現在利用している事業所がサービス提供を継続できなくなった場合でも、すぐに代替のサービスを見つけられるよう、ケアマネジャーと密に連絡を取り合っておきましょう。
さらに、地域の介護資源について日頃から情報収集しておくことも大切です。訪問介護以外にも、デイサービスやショートステイなど、様々な介護サービスがあります。訪問介護が難しい場合の代替案を知っておくことで、いざという時に慌てずに対応できます。
介護保険改正2024訪問介護に関する疑問解決
なぜ訪問介護だけがこれほど厳しい状況なのですか?
訪問介護は他の介護サービスと比較して、もともと収益性が低く人件費の比率が高いサービスです。事業所から利用者宅への移動時間は報酬の対象外であり、効率化にも限界があります。今回の基本報酬引き下げは、こうした構造的に脆弱な部分に直撃した形となっています。さらに、訪問介護職員の給与水準が低いため、人材確保が他のサービス以上に困難という事情もあります。
今後さらに状況は悪化するのでしょうか?
短期的には厳しい状況が続くと予想されます。ただし、政府も現場の声を受けて対策を検討しており、次期報酬改定での見直しや処遇改善の強化などが議論されています。また、事業所側も経営改善や効率化に取り組んでおり、中長期的には淘汰と再編を経て、より持続可能な体制が構築される可能性があります。重要なのは、現場の実態を正確に把握し、適切な政策対応を求めていくことです。
利用者の自己負担額は増えるのでしょうか?
基本報酬の引き下げ自体は、利用者の自己負担額を直接増やすものではありません。むしろ理論的には減少する可能性もあります。ただし、サービス提供体制が縮小することで、必要なサービスが受けられなくなったり、より高額な代替サービスを利用せざるを得なくなる可能性はあります。また、今後の制度改正で自己負担割合が変更される可能性もゼロではないため、制度の動向には注意が必要です。
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まとめ今こそ訪問介護の価値を再認識する時
2024年の介護保険改正により、訪問介護は約6割の事業所が減収という厳しい状況に直面しています。基本報酬の引き下げ、深刻な人手不足、そして処遇改善の遅れが複合的に作用し、サービス提供体制そのものが揺らいでいるのが現実です。
しかし、だからこそ今、訪問介護の価値を改めて認識する必要があります。住み慣れた自宅で安心して暮らし続けるために、訪問介護は不可欠なサービスです。高齢化が進む日本において、その重要性はますます高まっています。
事業所の皆様には、厳しい環境下でも知恵を絞り、効率化と質の向上を両立させる努力を続けていただきたいと思います。処遇改善加算の活用、サービスの効率化、地域連携の強化など、できることから一つずつ実践していくことが、持続可能な事業運営への道です。
利用者・ご家族の皆様には、早めの相談と計画的な準備をお願いします。また、訪問介護職員の方々の献身的な働きに感謝の気持ちを持ち、地域全体で訪問介護を支えていく意識を持つことも大切です。
私たち一人ひとりが訪問介護の現状を理解し、それぞれの立場でできることを実践していくことで、この危機を乗り越え、より良い介護の未来を創っていけるはずです。2024年の改正は確かに厳しいものでしたが、これを契機として、真に持続可能な訪問介護のあり方を社会全体で考えていく必要があるのです。
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