「なんだか最近、親の様子がおかしいな」「同じ話を何度も繰り返すようになった」「物を盗られたと騒ぐことが増えた」。大切な家族が認知症かもしれない、そう感じたとき、不安と戸惑いでいっぱいになりますよね。でも、その不安な気持ちのまま接してしまうと、かえって本人の混乱を招き、状況が悪化することもあります。
認知症は、単なる「物忘れ」とは違います。脳の病気から来る、さまざまな認知機能の低下によって起こる状態です。そのため、ご本人の行動には必ず理由があります。それを理解せず、「なぜこんなことをするの?」と問い詰めてしまうと、ご本人の自尊心を傷つけ、さらなる混乱を生む負のスパイラルに陥ってしまいます。
この記事では、認知症の方への接し方、特に具体的な行動への対応法を、単なる「知識」ではなく「実践」に役立つ形で、具体的な方法と心の持ち方を交えながら徹底的に解説します。この記事を読み終える頃には、ご家族への見方が変わり、心にゆとりを持って接することができるようになるでしょう。
認知症の行動は「意図的なものではない」と理解する

介護のイメージ
認知症の方の行動を理解する上で、最も重要なのがこの視点です。「わざとやっているわけではない」という大前提を心に刻んでください。脳の機能が変化した結果、これまで当たり前にできていたことができなくなり、記憶や判断力が低下したために起こる行動です。
例えば、食事をしたことを忘れて「まだご飯を食べていない」と訴える場合、これは嘘をついているのではなく、「食べた」という記憶が脳から抜け落ちてしまっている状態です。ご本人にとっては、本当に「まだ食べていない」という感覚なのです。
このことを理解すると、怒りや悲しみといった感情を抱くことが減り、より冷静に対応できるようになります。ご本人を否定せず、その行動の背後にある「なぜ?」を考える姿勢が、すべての良い対応の始まりとなります。
認知症の行動と種類を知って対応のヒントにする
認知症にはいくつかの代表的な種類があり、それぞれ特徴的な行動が現れることがあります。すべてを覚える必要はありませんが、ご本人の行動の背景を知ることで、対応のヒントが得られます。
アルツハイマー型認知症
脳にアミロイドβなどの異常なたんぱく質が蓄積し、神経細胞が破壊されることで起こります。最近の出来事を忘れる「近時記憶障害」が初期に現れやすく、それが原因で「物を盗られた」と訴える「物盗られ妄想」などが起こりがちです。
レビー小体型認知症
脳内にレビー小体という異常なたんぱく質が蓄積することで起こります。「幻視」(実際には見えないものが見える)や「パーキンソン症状」(手足の震え、筋肉のこわばり、小刻みな歩行)が現れるのが特徴です。幻視によって、ご本人が恐怖や不安を感じてパニックになることもあります。
脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血といった脳血管障害が原因で起こります。このタイプは、段階的に症状が進行するのが特徴です。また、障害を受けた脳の部位によって、行動の症状が異なります。感情のコントロールが難しくなり、急に泣いたり怒ったりする「感情失禁」が見られることもあります。
前頭側頭型認知症
脳の前頭葉や側頭葉の萎縮が原因で起こります。人格の変化が目立ち、社会的なルールを守れなくなったり、同じ行動を繰り返したりする「常同行動」が現れることがあります。感情の抑制が効かず、思ったことを口に出してしまうこともあります。
9割が知らない!認知症の行動に絶対してはいけないこと
ついついやってしまいがちですが、これだけは避けてほしい、というNG行動があります。ご本人の自尊心を傷つけ、混乱を招く原因になるので注意が必要です。
- 間違いを正すことご本人の言動が事実と異なっていても、「それは違うよ」と正そうとしないでください。ご本人にとってはそれが真実であり、否定されることで自尊心を深く傷つけられます。「ご飯はもう食べたでしょう」ではなく、「そうですか。よかったら、おやつでも食べませんか?」のように、話題を変える方が効果的です。
- 子供扱いすること赤ちゃん言葉を使ったり、すべてを代わりにやってあげたりするのはやめましょう。認知機能が低下しても、一人の人間としての尊厳は変わりません。ご本人ができることはできる限り自分でやってもらい、見守る姿勢が大切です。
- 理由を問い詰めること「どうしてそんなことをしたの?」と問い詰めるのは逆効果です。ご本人はその理由を説明できませんし、逆に追いつめられたと感じて興奮したり、混乱したりすることがあります。行動の背後にある感情(不安、寂しさ、痛みなど)を想像し、共感的に接しましょう。
今すぐ使える!認知症の行動別対応5つの秘訣
ここからは、具体的な行動に対する実践的な対応策を5つご紹介します。
1.「物盗られ妄想」には「共感」と「一緒に探す」で安心させる
「誰かが財布を盗んだ!」と騒ぎ始めたら、まずはご本人の気持ちに共感します。「それは大変でしたね。心配ですよね」と寄り添い、決して「誰も盗んでいない」と否定してはいけません。そして、「一緒に探しましょう」と提案し、ご本人が見つけやすい場所にさりげなく誘導します。見つかったら、「よかったね!見つかったね!」と一緒に喜びましょう。ご本人の不安を取り除くことが最優先です。
2.「徘徊」には「目的」に寄り添い「気分転換」を図る
徘徊は、「家に帰りたい」「昔の職場に行きたい」など、ご本人なりの目的があることが多いです。まずはその目的を尋ね、否定せずに「そうでしたか。では、少し散歩でもしながら行きませんか?」と気分転換を促し、安全な場所を一緒に歩きましょう。ご本人の不安な気持ちを理解し、行き先を否定するのではなく、気分転換や別の行動へ誘導することが効果的です。
3.「暴言・暴力」には「追いつめない」と「場所を変える」
暴言や暴力には、不安や恐怖、あるいは身体的な不調(痛みなど)が隠れていることがあります。まずは安全を確保し、ご本人を追いつめないことが大切です。落ち着いて、「どうしたのですか?大丈夫ですよ」と声をかけ、可能であれば別の部屋に移動したり、散歩に誘ったりして場所を変えてみましょう。それでも興奮が収まらない場合は、無理に止めようとせず、そっと見守り、安全な距離を保ってください。
4.「同じ話・行動」には「別の話題」や「好きなこと」で気分転換
同じ話を何度も繰り返すのは、その話がご本人にとって安心できる話題であったり、記憶に強く残っていることだったりすることが多いです。毎回「さっきも聞きましたよ」と指摘するのではなく、相づちを打ちながら聞き、別の話題にスムーズに切り替える工夫をしましょう。あるいは、好きな音楽をかけたり、お菓子を出したりと、ご本人が喜ぶ別の行動に誘導することも有効です。
5.「失禁」には「プライド」を尊重し「さりげなく」対処する
失禁は、ご本人にとって大きなショックであり、自尊心を傷つける行為です。そのため、叱ったり驚いたりせず、「濡れてしまったようです。新しいものに変えましょうか」と平静かつさりげなく声をかけ、下着や衣類を交換しましょう。その後の片付けも、ご本人に見られないように配慮することが大切です。また、トイレの場所を分かりやすく示したり、定期的にトイレに誘ったりする環境整備も効果的です。
認知症 行動 対応に関するよくある疑問解決
Q1介護者が疲れてしまったときはどうすればいい?
認知症の方の介護は、心身ともに大きな負担がかかります。一人で抱え込まず、外部のサポートを積極的に利用しましょう。地域包括支援センターやかかりつけ医に相談すれば、適切な介護サービスや相談窓口を紹介してもらえます。また、同じ悩みを持つ家族が集まる認知症カフェや家族の会に参加して、気持ちを共有するだけでも心が軽くなります。
Q2初期症状かな?と思ったら、まずはどうすればいい?
まずはかかりつけ医に相談しましょう。かかりつけ医がいない場合は、「もの忘れ外来」のある病院を受診する方法もあります。早期に適切な診断を受けることで、症状の進行を遅らせる薬物療法や、症状に合わせた非薬物療法(リハビリなど)を開始できます。また、若年性認知症の場合は、高齢者の認知症とは異なる課題があるため、専門のサポート制度を利用することも可能です。
Q3最新の治療法や社会の動きについて知りたい
近年、アルツハイマー型認知症の原因物質とされるアミロイドβを取り除く薬の開発が進んでおり、症状の進行を遅らせる治療が期待されています。最新の治療法については、厚生労働省のウェブサイトなどで情報を確認し、専門医に相談してください。また、「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行され、認知症になっても自分らしく暮らせる社会を目指すという「新しい認知症観」が提唱されています。認知症の人が自らの体験を発信する「希望大使」の活動なども、認知症への理解を深める上で重要な動きです。
今すぐ介護の悩みを解決したい!どうしたらいい?
「親族の介護、もう待てない状況になっていませんか?」
介護は突然やってきます。「まだ大丈夫」と思っていても、転倒や急な体調変化で一気に現実となることも。
そんな時、慌てて施設を決めて後悔しないために。
もちろん、今介護で悩んでいる人であってもどの施設であればすぐに入れるのかを事前に情報収集する必要があります。
そんなとき「みんなの介護」なら、業界最大手の安心感と51,000件という圧倒的な選択肢で、あなたがどんな状況でもベストな施設が見つかります。
⭐ 掲載施設数No.1の実績
⭐ 経験豊富な相談員が24時間サポート
⭐ 見学予約から入居まで完全無料でフォロー
「あの時、もっと調べておけば良かった」
そんな後悔をしないために、今すぐ行動を。
複数施設の資料を取り寄せて、ご家族で安心できる選択をしませんか?
▼無料資料請求はこちら▼
資料請求はこちら
まとめ
認知症の方の行動は、ご本人の「SOS」です。言葉や記憶の機能が低下した代わりに、行動で気持ちを表現しているのです。だからこそ、表面的な行動に振り回されるのではなく、その奥にある「本当の気持ち」に寄り添うことが何より大切になります。
「怒り」を「共感」に、「否定」を「受容」に、「問い詰め」を「見守り」に変える。
この意識の変化こそが、ご本人とご家族の生活を大きく変える第一歩です。この記事でご紹介した具体的な対応策が、少しでもあなたの支えとなれば幸いです。
そして何より、一人で抱え込まず、時には助けを求める勇気を持ってください。あなたの優しさと心のゆとりが、ご家族にとって何よりの安心となるのですから。
コメント