在宅で大切な家族の介護をするのは、本当に大変なことですよね。特に、認知症の症状が進むと、予測不可能な行動に戸惑ったり、不安になったりすることが増えます。「徘徊」はその最たる例かもしれません。
「また家から出て行こうとしてる……」「今、どこを歩いているんだろう?」
そう思うたびに、心臓がギュッと締め付けられるような気持ちになったり、介護への疲れからイライラしてしまったりする方も少なくないでしょう。でも、ちょっと立ち止まって考えてみませんか? 認知症の人が徘徊するのは、本当に「あてもなくさまよっている」だけなのでしょうか。実はそこには、私たちが気づいていない、意外な「本当の理由」が隠されているかもしれません。
この記事では、介護経験者の視点から、認知症の祖母の徘徊に付き添ってみて気づいた、見落としがちな3つの真実と、在宅介護を少しでも楽にするための具体的な方法を、深い学びと新しい気づきを交えながらお伝えします。
徘徊は「意味のない行動」ではない!意外な2つの理由

介護のイメージ
多くの介護者が、徘徊を「認知症の症状」として一括りに捉えがちです。もちろん、見当識障害や記憶障害が原因で起こることは事実です。しかし、そこにはもっと人間的な欲求が隠されている場合があるのです。
私の祖母のケースもそうでした。ある朝、玄関で信じられない速さで外に出ようとする祖母に付き添ってみて、私は衝撃的な事実に気づかされました。普段は歩行もままならないのに、その時の祖母はまるで何かに駆り立てられるかのように足早に進んでいくのです。
徘徊の「出発点」にある本当の目的とは?
多くの介護者が徘徊を止めようとしますが、実は「出発点」が重要です。祖母の徘徊に付き添ってみると、彼女が向かっていたのは、なんと近所のスーパーでした。しかも、まっすぐではなく、何度か立ち止まっては道を確認し、まるで記憶の糸をたぐり寄せるように歩いていました。
この時、私は気づいたのです。祖母は単にさまよっているのではなく、「何かを買いに行く」という明確な目的を持っていたのです。後で聞くと、「夕飯のおかずを買いに行きたかった」「冷蔵庫が空だった」と話してくれました。これは、単なる見当識障害ではなく、「かつて当たり前だった日常の役割」を取り戻そうとする行動だったのです。
私たちは、認知症になると「何もわからない」と決めつけてしまいがちです。しかし、実はその人の「役割」や「使命」を求める気持ちが、無意識のうちに徘徊という行動につながることがあるのです。
感情や身体の不調が徘徊を引き起こすこともある
もう一つ、見落とされがちなのが、感情や身体的な不調です。祖母が玄関で鬼のような形相をしていたのは、もしかしたら「外に出られない」ことへの苛立ちや、何らかの不安感があったのかもしれません。
認知症の人は、自分の体の不調をうまく言葉で伝えられないことがあります。例えば、トイレに行きたいのに場所がわからなかったり、足がむくんで辛いと感じていたり。そうした不快感から逃れたい、場所を変えたいという気持ちが、無意識に体を動かしてしまうことがあります。
身体的な不快感トイレに行きたい、喉が渇いた、足が痛い、どこか痒いなど。
精神的な不安「家にいるのが嫌だ」「誰かを探したい」「何かをしなければいけない」といった切迫感。
このように、徘徊は単なる症状ではなく、本人の満たされない欲求やSOSである可能性があるのです。これを理解するだけで、介護者の心持ちは大きく変わります。
徘徊に付き添って見えてきた「新しいコミュニケーション」のヒント
徘徊を止めるのではなく、付き添ってみる。この行動は、祖母との関係を再構築する大きなきっかけとなりました。祖母の歩みに合わせ、世間話をしながら一緒に歩くことで、私は多くのことを学びました。
否定しないことの重要性と具体的な声かけ
徘徊を止めようとすると、祖母は鬼の形相になりました。でも、一緒に外に出ると、その顔は穏やかになりました。この経験から、「否定しないこと」がいかに重要かを痛感しました。
「ばあちゃん、外に行きたいんだね。よし、一緒に行こうか」
このように、まずは本人の行動を受け入れることが大切です。その上で、安全を確保しながら付き添います。そして、歩きながら「今日はいい天気だね」「あのお花、きれいだね」と話しかけることで、祖母の意識を安全な方向へと向けさせることができます。
これは、「行動の修正」ではなく、「共感と誘導」というアプローチです。無理に止めようとすると、本人はさらに抵抗し、介護者との信頼関係を損ねてしまう可能性があります。
「非言語コミュニケーション」で心の状態を理解する
言葉だけでは伝わらないことも多くあります。祖母の表情や歩く速度、手の動きなど、非言語的なサインに意識を向けることで、より深く彼女の気持ちを理解できるようになりました。
例えば、歩行中に急に足が速くなった時は「何かを急いでいる?」、立ち止まってあたりを見回す時は「何かを探している?」と、その時の状況から祖母の心を想像するようになりました。
祖母の在宅介護から学んだ「新しい徘徊対策」3選
徘徊に付き添うことは、一時的な対策にはなりますが、介護者の負担は大きいですよね。そこで、私の経験から得られた、介護負担を減らしつつ本人の安全を守るための具体的な対策を3つご紹介します。
徘徊の「原因」を特定する行動ログをつける
徘徊を単なる症状として片付けるのではなく、その背景にある原因を分析することが重要です。いつ、どこで、どんな時に徘徊が起こるのかを記録してみましょう。
- 時間帯朝方、夜間、食事前など。
- きっかけ誰かが帰ってきた時、テレビを見た時、トイレに行った後など。
- 目的地の可能性いつも同じ場所へ向かおうとしていないか?
このログをもとに、徘徊の原因を特定し、先回りして対応することができます。たとえば、「夕方に徘徊が起こりやすい」とわかれば、その前に散歩に出かけたり、好きなお菓子を用意したりするなどの工夫ができます。
介護保険サービスを最大限に活用する
介護は一人で抱え込むものではありません。介護保険サービスをうまく活用することで、介護者の負担を大きく減らすことができます。
- デイサービス日中、専門の施設で過ごすことで、本人の気分転換になり、介護者も休息をとることができます。
- ショートステイ短期間、施設に宿泊することで、介護者はまとまった時間で心身を休ませることができます。
- 訪問介護ホームヘルパーに自宅に来てもらい、買い物や食事のサポートを依頼できます。
徘徊が頻繁にある場合は、ケアマネジャーに相談して、徘徊の原因を伝え、それに合わせたサービスを提案してもらいましょう。
安全対策を徹底する
徘徊を完全に防ぐことは難しいですが、事故や迷子のリスクを減らすための安全対策は必須です。
鍵の工夫簡単に開けられないようなドアノブや補助錠を取り付ける。
GPS機器の活用小型のGPS機器を身につけてもらうことで、もしもの時に居場所を把握できます。
ご近所さんとの連携近所の人に顔を覚えてもらい、もし見かけたら声をかけてもらうようにお願いしておく。
これらの対策を組み合わせることで、介護者の精神的な負担も和らぎます。
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介護の未来を拓く、心の余裕と新しい視点
介護は長期戦です。完璧を目指そうとすると、心身ともに疲弊してしまいます。
「徘徊に付き添ってみたら、実はスーパーに行きたかっただけだった」
この小さな気づきが、私に「介護は、いかに相手の心に寄り添えるか」という新しい視点を与えてくれました。
認知症の祖母は、もう自分の言葉で明確に気持ちを伝えることはできません。しかし、彼女の行動には、昔の生活や役割、そして満たされない欲求が隠されているのかもしれません。そのヒントを私たちが探し出し、先回りして行動に共感し、安全を確保しながら寄り添うことができれば、介護は単なる「お世話」ではなく、お互いの人生を豊かにする「新しいコミュニケーション」へと変わっていくはずです。
もし今、介護で孤独や不安を感じているなら、あなたは決して一人ではありません。プロの力を借りたり、信頼できる人に相談したり、そして何より、「完璧じゃなくてもいい」と自分を許してあげてください。その心の余裕が、きっと明るい介護の未来を拓く第一歩となるでしょう。
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