在宅で大切な方を看取った後、「この後、何をすればいいんだろう…」と途方に暮れていませんか？ 医師から「ご臨終です」と告げられた瞬間、突然の出来事に頭が真っ白になり、次に何をすればいいのかわからなくなるのは当然のことです。誰にも相談できず、漠然とした不安を抱えているかもしれません。この記事では、そんなあなたの不安を少しでも和らげるために、在宅介護で大切な方を亡くされた後にやるべきことを、具体的な手続きから心のケアまで、9つのステップでわかりやすく解説します。
在宅介護で亡くなった直後、まずやるべき4つのこと
介護のイメージ
ご臨終と告げられた後、悲しみに暮れる時間もあまりなく、すぐに動かなくてはならないのが現実です。しかし、焦る必要はありません。大切なのは、落ち着いて一つひとつ確実に進めていくことです。ここでは、まず最初に行うべき4つのことを順を追って説明します。
かかりつけ医による死亡確認と死亡診断書の受け取り
在宅で亡くなった場合、最初に連絡するのは、いつもお世話になっていたかかりつけ医（訪問診療の医師）です。もし夜間や休日で連絡が取れない場合は、連携している別の医師や訪問看護ステーションに連絡しましょう。医師が到着したら、心肺停止の確認後、死亡診断書が発行されます。
この死亡診断書は、その後の様々な手続きで必要になる、非常に重要な書類です。必ず複数枚のコピーを取っておくことを強くお勧めします。原本は1枚しか発行されないため、手続きのたびにコピーを提出できるようにしておきましょう。
訪問看護師が行うエンゼルケアと遺体への接し方
医師が死亡確認をした後、多くの場合、訪問看護師がエンゼルケア（死後処置）を行います。これは、故人様の尊厳を守り、安らかなお顔に整えるための大切なケアです。具体的には、口腔内や全身の清拭、着替え、お化粧などが行われます。
この時、もし可能であれば、ご家族もエンゼルケアに参加してみることを検討してください。看護師がそっと手を添えてくれるので、故人様のお顔を拭いたり、髪をとかしたりするだけでも、故人様との最期の触れ合いとなり、後悔のないお見送りの時間になります。また、故人様の好きだった音楽をかけたり、お好きだったものをそばに置いたりするのも良いでしょう。
葬儀社への連絡と安置の手配
次に、葬儀社に連絡をします。突然のことで心の準備ができていないかもしれませんが、事前にいくつかの葬儀社の情報を集めておくと、いざというときにスムーズです。連絡をすると、すぐに自宅まで迎えに来てくれ、故人様を安置してくれます。
故人様を自宅から搬送する際、故人様を乗せた寝台車がご自宅の前を出発する前に、合掌してお見送りするのが一般的です。その際、ご近所の方への配慮も忘れずに。葬儀社が到着したら、今後の葬儀に関する相談も行いましょう。
臨終後の連絡親族や関係者への伝え方
訃報の連絡は、まず三親等以内の親族に、電話で伝えます。この時、故人様がお亡くなりになったこと、日時、そして自宅の住所などを簡潔に伝えます。遠方の親戚には、その後の葬儀の日程が決まり次第、改めて連絡することを伝えましょう。
また、在宅介護でお世話になっていた関係者にも連絡をします。
- ケアマネージャー介護保険サービスの停止手続きを進めてもらうために連絡します。
- 訪問介護や訪問入浴サービスなどお世話になった事業所に直接連絡し、サービス終了を伝えます。
- 福祉用具のレンタル業者レンタル品を回収してもらうよう手配します。
特に、ケアマネージャーにはできるだけ早く連絡を入れ、今後の手続きについて相談しましょう。
在宅介護で亡くなった後、見落としがちな3つの手続き
大切な方の死後、悲しみが癒えない中で、やらなければならない手続きは山ほどあります。特に、在宅介護を受けていた場合は、介護保険に関する手続きも追加で発生します。ここでは、見落としがちな重要事項を3つ解説します。
介護保険サービスの利用停止と福祉用具の返却
在宅で亡くなった場合、ご逝去された翌日から介護保険サービスの利用を停止しなければなりません。ケアマネージャーに連絡をすれば、サービス利用事業所への連絡や手続きを代行してくれることが多いので、まずは相談しましょう。
また、レンタルしていたベッドや車椅子などの福祉用具は、速やかに業者に連絡して回収してもらう必要があります。これらの手続きは、期限を過ぎると料金が発生してしまう可能性があるため、できるだけ早く済ませることが重要です。
医療費の精算と訪問診療の解約
故人様が亡くなられた月の医療費は、医療機関や訪問診療の医師から請求書が送られてきます。もし、口座振替にしていた場合は、口座を解約する前に残高を確認しておきましょう。
また、在宅で療養されていた場合、かかりつけの訪問診療医や歯科医との契約も解約する必要があります。多くの場合、死亡診断書の発行時に医師から説明がありますが、確認を怠らないようにしましょう。
世帯主変更届や社会保険・年金の手続き
介護をされていたご家族が故人様と世帯主が同じだった場合、市町村役場に世帯主変更届を提出する必要があります。また、故人様が国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入していた場合は、死亡後14日以内に保険証の返却と、葬祭費の申請を行います。
故人様が年金受給者だった場合、年金事務所で受給権者死亡届を提出する必要があります。これらは期限が定められているため、早めに着手しましょう。
見落としがちな「心のケア」グリーフケアの重要性
手続きに追われる日々の中で、最も見落とされがちなのが、ご自身の心のケアです。愛する人を失った悲しみは、時間が経つにつれて増幅し、心身に様々な影響を及ぼすことがあります。在宅介護で亡くなった後、心の準備を全くしていなかった方もいるでしょう。ここでは、大切な心のケアについて解説します。
グリーフケアは死後から始まるわけではない
グリーフケアとは、死別後の悲嘆からの回復を支援するものです。しかし、在宅介護におけるグリーフケアは、死後から始まるわけではありません。訪問看護師は、看取り期を迎える前から、ご家族の不安や葛藤に寄り添い、悲しみを和らげるような関わりをしています。
例えば、エンゼルケアを一緒に行うことは、悲しみを乗り越えるプロセスの一部です。故人様への最後の奉仕をすることで、ご自身が「できることをした」という達成感と安堵感を得ることができ、グリーフケアの第一歩となります。この視点を持つことで、在宅介護での看取りが、単なる「介護の終わり」ではなく、「新しい心の旅の始まり」になるのです。
孤独にならないで訪問看護師が担うグリーフケアの役割
故人様を失った後、悲しみや孤独感に苛まれるのは自然なことです。しかし、その感情を一人で抱え込んではいけません。訪問看護師は、在宅介護の専門家として、医療的なケアだけでなく、グリーフケアにも深い知識と経験を持っています。
例えば、故人様との思い出話に耳を傾けたり、「よく頑張りましたね」とねぎらいの言葉をかけたりします。大切なのは、悲しい気持ちを話せる場所があることです。もし、訪問看護師に相談しづらい場合は、地域のグリーフケア支援団体や専門のカウンセラーに相談するのも一つの手です。
悲しみは、無理に乗り越えようとしなくても大丈夫です。一人で抱え込まず、誰かに頼ることで、少しずつ前を向く力が湧いてくるはずです。
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まとめ在宅介護の看取り後、あなた自身を大切に
在宅介護で大切な方を亡くされた後、あなたは悲しみと向き合いながら、多くの手続きをこなさなければなりません。それは、故人様を看取ったあなたにしかできない、最後の大きな「仕事」です。この記事で紹介した9つのステップを参考に、一つずつ着実に進めていってください。
しかし、最も大切なのは、あなた自身の心と身体を労わることです。介護という重労働から解放された後、どっと疲れが出てくるかもしれません。訪問看護師やケアマネージャー、そして信頼できる人々に頼りながら、あなた自身のケアも怠らないでください。あなたが元気でいることが、故人様への何よりの供養になります。
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