「家族が末期がんと診断された…できれば住み慣れた家で最期まで一緒にいたい」。そう願う一方で、「在宅介護って何から始めればいいの？」「介護保険は使えるの？」と不安に思っていませんか？末期がんの場合、病状が急変することもあり、介護の準備を始める間もなく最期を迎えてしまうケースが少なくありません。
実は、国もこの問題の解決に動き出しています。最新の制度変更や活用術を知らないと、受けられるはずだった公的なサポートを逃してしまう可能性が高いんです。
この記事では、「末期がん」の「在宅介護」で知っておくべき、介護保険の超速利用法や、在宅医療・介護連携の具体的な進め方を、日本一わかりやすく解説します。
末期がん患者さんが介護保険を利用できない「残念な現実」とは？
介護のイメージ
「介護保険は65歳から」と思っていませんか？実は、40歳以上であれば、がん（末期）を含む特定疾病と診断されれば、介護保険を利用できるんです。
しかし、国立がん研究センターの調査によると、亡くなる前の6ヶ月間に介護保険を一度も利用できなかったがん患者さんのうち、約23%が「申請したが利用できなかった」、約7.5%が「介護保険を知らなかった」と回答しています。
これはなぜでしょうか？
なぜ介護保険を利用できなかったのか？
申請したにもかかわらず利用できなかった最大の理由は、介護保険の要介護認定に時間がかかることです。通常、申請から認定までには1ヶ月以上かかることが多く、その間に患者さんの容態が急変し、亡くなってしまうケースが後を絶ちません。
また、そもそも「介護保険の対象になること」を知らない、あるいは医療機関からその情報提供がなされないというケースも少なくありません。多くの医療従事者は、患者さんの治療を第一に考えているため、介護保険の申請や連携に関する情報提供が後回しになってしまうことも一因です。
厚労省が動いた！末期がんの在宅介護を支える制度の最新情報
こうした残念な現状を改善するため、厚生労働省は2024年に「がん等の方に対する速やかな介護サービスの提供について」という事務連絡を出し、介護保険の超速利用を全国の自治体や医療機関に要請しました。
これによって何が変わったのでしょうか？私たちが知っておくべき3つの重要ポイントを解説します。
介護保険の申請からサービス利用までを爆速にする「暫定ケアプラン」
以前は、要介護認定の結果が出るまで介護サービスは利用できませんでした。しかし、この事務連絡により、暫定ケアプランの作成が積極的に認められるようになりました。
暫定ケアプランとは、要介護認定の結果が出る前でも、自治体の判断で作成が認められるケアプランのこと。これにより、申請と同時にケアマネジャーがケアプランを作成し、すぐに介護サービスを使い始めることができるようになりました。特に、末期がんのように容態が急変しやすいケースでは、申請したその日のうちに認定調査を実施し、暫定ケアプランを作成してサービスの提供を開始するよう求められています。
入院中の認定調査も可能に！オンライン活用の動き
「入院中だから申請できない」と諦めていませんか？事務連絡では、入院中のがん患者さんに対する認定調査を、オンラインで実施することが可能だと明記されました。
これにより、患者さんが退院する前に認定手続きを終え、退院後すぐにサービスを利用開始できる体制が整えられています。ただし、オンライン調査には、医療従事者が同席するなど、いくつかの条件があります。
医療機関と介護サービス事業所の「連携強化」
以前は、医療と介護の情報共有がスムーズに行われないことが課題でした。この事務連絡では、医療機関に対して、末期のがん患者さんに対して積極的に介護サービスの活用を提案し、地域包括支援センターやケアマネジャーと連携するよう強く要請しています。
特に、入院中の段階から医療ソーシャルワーカーや看護師がケアマネジャーと連携し、退院後の介護サービスを調整することは、診療報酬や介護報酬でも評価されるようになりました。これは、医療機関側にも連携を促す大きなインセンティブになります。
知って得する！末期がんの在宅介護で使える公的サービスの種類
在宅介護を成功させるためには、これらの公的サービスをいかに効率的に利用するかがカギになります。
- 訪問看護看護師がご自宅を訪問し、医療処置や体調管理、服薬指導などを行います。疼痛緩和ケアや点滴管理など、医療的なケアが必要な末期がんの患者さんにとって、最も重要なサービスの一つです。
- 訪問介護ヘルパーがご自宅を訪問し、身体介護（食事、入浴、排せつ介助など）や生活援助（調理、掃除、買い物など）を行います。ご家族の負担を大きく軽減してくれます。
- 訪問入浴介護ご自宅に専門の入浴車が来て、特殊な浴槽で入浴介助を行います。ご自身での入浴が難しい場合でも、自宅でゆっくりと湯船につかることができます。
- 福祉用具貸与歩行器や車いす、ベッド、手すりなどの福祉用具をレンタルできます。患者さんの状況に合わせて適切な福祉用具を利用することで、自宅での生活が安全で快適になります。
- 住宅改修費の支給手すりの取り付けや段差解消など、自宅を介護しやすいように改修する際の費用の一部が支給されます。
これらのサービスを組み合わせて、その人に合ったオリジナルの介護プランを立てていくのがケアマネジャーの役割です。
末期がんの在宅介護Q&A誰も教えてくれない疑問を解決！
ここでは、在宅介護を考えているご家族からよく聞かれる質問にお答えします。
Q1末期がんと診断されたら、まず最初に何をすればいい？
A1医師や看護師に「在宅で最期まで過ごしたい」というご希望をしっかり伝えてください。そして、医療ソーシャルワーカーや、がん相談支援センターに「在宅での生活について相談したい」と声をかけてみましょう。そこから、退院後の生活を見据えた多職種連携が始まります。
Q2ケアマネジャーはどうやって探せばいい？
A2地域包括支援センターに相談するのが一番確実です。在宅介護の専門家であるケアマネジャーを紹介してもらえます。入院中であれば、病院の医療ソーシャルワーカーに相談すると、退院後の生活を考慮したケアマネジャーを紹介してくれるでしょう。
Q3介護保険の申請に必要な書類は？
A3申請には、介護保険被保険者証（40～64歳の方は健康保険被保険者証）、主治医意見書、申請書などが必要です。主治医意見書は医師に作成を依頼するものですが、末期がんの場合は、診断名や一次判定に必要な項目に限定した簡易的なものでも受理できるようになりました。申請手続きの詳細は、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。
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まとめ末期がんの在宅介護は「情報と連携」が命綱
末期がんの在宅介護を成功させる鍵は、いかに早く正しい情報を手に入れ、医療と介護の専門家と連携できるかにかかっています。
この記事でご紹介した暫定ケアプランやオンライン認定調査といった制度の最新情報を知っているか知らないかで、受けられるサポートの質は大きく変わります。
まず、大切なのは「在宅で過ごしたい」という気持ちを、ご本人、ご家族、そして医療・介護のプロフェッショナルが共有することです。
早めに医療ソーシャルワーカーやがん相談支援センターに相談し、退院後の生活を見据えた準備を始めましょう。
一人で抱え込まず、利用できるサービスはすべて活用して、ご本人らしい穏やかな最期の時間を、ご自宅で過ごせるようサポートしてあげてください。
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