【具体例付き】介護士がコロナウィルス感染した時の労災の条件とは?

新型コロナウィルスに感染したら労災になるの? 介護職に役立つ情報
介護職に役立つ情報

利用者との接触が基本の介護の現場で働いている人や医療の現場で働いている人は、新型コロナウィルスに感染した場合、明らかな業務外での感染が認められない場合は、原則労災と認められるとの発表がありました。

労災になれば、治療費を全額支給の休業期間の給料の8割を補償してもらうことができます!知っているのと知っていないとでは大きく損をしてしまいます。

しかし、具体例がないとわかりずらいですよね。

今回は、介護士としてコロナウィルス感染した場合に、労災として認められる場合と労災とならないものについて労働基準監督署に聞いてみました。

もちろん、介護施設には、現場の職員以外も働いていますので、介護現場以外の人にも参考になる内容や労災に認定されなかった場合の対応策なども書いていますので、参考になったら嬉しいです。

介護士がコロナに感染したらどうする?

介護士がコロナに感染したら介護施設としてどうする?

介護士がコロナに感染したら介護施設としてどうする?

考えたくもないですが、常に最悪のケースは想定しながら動かないといけません。

それぞれ、介護施設で考え方や対応方法について、違いがあるとは思いますが、現場の職員がコロナに感染したことが判明した場合、介護施設として、私は7つのことをしなければいけないと考えています。

介護士がしなくてはいけない7つのポイント

  • 接触のあった利用者の検査を保健所に要請する。
  • 感染した介護士と接触した可能性が高い職員の検温をする。
  • 検温をして発熱がある場合は、接触した利用者の検査を保健所に要請する。
  • 検査の結果、職員や利用者へ感染が判明した場合は、入院して病院にて治療をしてもらう。
  • 各担当の福祉課(行政)に報告をする。
  • 感染者が出たことをすべての家族へ連絡をする。
  • 利用者すべての検温をして現状の報告をすべての家族にする。

順番が前後することはありますが、新型コロナウィルスに現場の介護士が感染した場合のやらなければいけないことは概ねこの7つです。

7つの根拠としては、介護士が感染症した場合、厚生労働省が定めている「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」において、感染症に感染した場合は、「発生状況の把握」「感染拡大の防止」「医療処置」「行政への報告」「関係機関との連携」 の5つをすることで迅速な対応ができるとあります。

先ほど紹介した7つは、「発生状況の把握」「感染拡大の防止」「医療処置」「行政への報告」「関係機関との連携」 をわかりやすく具体的に表した7つになっています。

つまり、最低限7つを押さえておけば「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」にも対応した内容になるので、介護士がコロナに感染した場合どうしたらいいのか迷わずに対応できます。

しかし、あくまで、現場の介護士がコロナに感染した場合の介護施設としての手順になります。

今回の本題は、介護士がコロナに感染した後の労災についてのお話ですので、次の項目では、コロナウィルスに感染した時の労災の条件についてお話していきます。

コロナウィルスに感染した時の労災の条件

コロナウィルスに感染した場合は、一定の条件を満たせばすべて労災扱いです。

コロナウィルスによる労災の条件は3つあります。

コロナウィルスの労災になる3つの条件
先生のイラスト

  • 介護、医療の現場の職員は、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則労災。
  • 介護、医療の現場ではない職員の場合は、感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合は労災
  • 複数の感染者が確認された職場や顧客との近接や接触の機会が多い労働環境の場合は労災

介護士や看護士など、介護従事者や医療従事者は、業務外で感染したことがあきらかになる場合以外は全部労災!業務外で感染したことを立証できなければ労災という条件なので、「介護」「医療」の現場で働いている人は、感染した時点で99%は労災の認定になります。

他には、コンビニやスーパーなどの小売業、バスやタクシーなどの人を運ぶ運送業、育児サービスを提供する保育士やベビーシッターなど、客と近づいたり接触したりする機会が多い職種は、業務によって感染した可能性が高いとして感染経路が分からなくても個別に判断することにしています。

また、職場内で感染した人が出た場合や感染した顧客に営業を行っていた場合など、感染の原因が明らかに仕事にある場合についても労災になるとのことです。ブラック企業でこんな時期にもかかわらず、飛び込み営業で移動を頻繁にしなければいけなかった人でも職場や顧客から感染者が発生して感染経路が証明できれば、ちゃんと労災になります。

労災のイメージ図

労災のイメージ図

つまり、コロナウィルスに感染した場合、感染経路が不明だった場合、介護や医療はほぼ100%で労災、その他の接触する可能性がある職種についてはケースバイケースで業務で接触する可能性が低い職種は、労災の認定がむずかしいということです。

労災になるものとならないもの具体例

労働基準監督署に質問してみた。

労働基準監督署に質問してみた。

新型コロナウィルスについて労災になるものを、労働基準監督署に直接電話して確認をしてみました。

結論、労災については、調査後のケースバイケースというのが労働基準監督署の回答でした。

しかし、これで引き下がったら記事にしてる意味がありませんので、自分自身疑問が多かった「労災になる場合」「労災がむずかしい場合」突っ込んで聞いてみました。
※私が聞いたのが横浜市内のですので、各管轄で異なる場合があります。詳細が知りたい場合は、あなたの管轄の労働基準監督署に確認した方が正確です。

労災になるものの具体例

労災になるケースは、あきらかに労働中に新型コロナウィルスに感染したと断言できる場合が対象になります。在宅勤務の方を始め、コンビニやスーパーなどの小売店やタクシーやバスの運転手など労災になる可能性があります。コロナウィルスに感染してほぼ確実に労災になるのは、医療や介護の現場で働いている人です。

医療や介護の現場で勤務している人は、感染経路が不明でも労災の対象になるとの通達がきています。つまり、介護職や医療職の人は99%で労災認定になるということです。

もちろん、介護や医療の施設で働いている人の全員が現場で働いているわけではありませんので、新型コロナウィルスに感染した人で労災が認められるには3つ条件があります。

先生のイラスト
労災がみとめられる3つの条件

  • コロナウィルスに感染したことがわかる。
  • どこで感染したか特定できる。(例外あり)
  • 業務によって感染したと認められる。

労災は、労働基準監督署が調査が入り3つ条件があるのかないのかを職種別に見ていきます。調査の際に3つの条件を満たしていれば、どんな職種であっても労災として処理されるでしょう。3つの条件だけじゃイメージしずらいと思いますので、具体例を5つ挙げます。

【具体例1】
介護の現場で働いており、毎朝は電車で出勤、日中はお風呂介助やレクをおこなったりしていました。その夜、帰宅後に37.5度以上の発熱、次の日の朝に保健所へ連絡して検査をしてもらったところ自分が感染していることがわかった。しかし、感染経路は特定できなかった。
【具体例2】
朝おきたら37.5度以上の発熱だった為、保健所や病院に連絡して検査してもらった結果、コロナウィルスに感染していることがわかった。職場にも報告し、労災の請求をしてもらった。時間はかかったが、労働基準監督署の調査の結果、同じ時間に乗り合わせていた常客が感染していた。
【具体例3】
副業でスーパーで働いていた、体調が悪くなったため早退した。帰宅後体温を測ったら、37.5度以上の発熱があったため、保健所や病院に連絡後にコロナウィルスの感染がわかった。スーパーを利用している近所に住んでいる人からコロナウィルスに感染した人が出た。
【具体例4】
こんな時期にも関わらず、会社の命令で取引先や新規の飛び込み営業を行っていた。数日たって、味覚や嗅覚の異常を感じたので病院にいったらコロナウィルスという結果が出た。労働基準監督署の調査の結果、新規で飛び込みをしたお客様が感染していることがわかった。
【具体例5】
職場内でコロナウィルスに感染した人がでた、感染した人は自宅待機を命じられ、そのほかの社員は通常通り業務を行うよう業務命令があった。個人的に味覚や嗅覚の異常を感じたので病院にいったらコロナウィルスという結果が出た。

労働基準監督署の話と厚生労働省の通知を総合して判断すると、労災が認められる最低条件は「コロナウィルスに感染したことがわかること」「感染経路がある程度特定できること(例外あり)」「業務によって感染したという蓋然性(確実に業務が原因)があること」この3つの条件を満たさなければ、労災になることは極めて難しいでしょう。

労働基準監督署の調査が、どこまで行うのかによって異なりますが、感染者が無症状かつ無自覚の場合、感染経路は特定は不可能に近いでしょう。労働基準監督署や厚生労働省は国の機関です。証拠や根拠が不十分で、感染経路の特定ができない=労災は99%おりないと思った方がいいでしょう。

逆に、介護現場や医療現場で勤務している人は、99%で労災になるということになります。しかし、1%だけ労災がむずかしいケースがあります。

次の、労災がむずかしい具体例でなぜ難しいのかを説明します。

労災がむずかしい具体例

労災の対象として、判断しずらい難しいケースもあります。労働基準監督署に聞いても実際に調査しないと分からないが、非常に労災に認定するのが困難なケースも存在するとのことでした。これから紹介するケースに該当している場合は介護や医療の現場で働いていても労災と認められない場合があります。

大きく分けて、労災と認定されるのが難しいケースのパターンを3つ挙げさせていただきます。

労災がむずかしい3つのパターン
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  • 在宅勤務で仕事を継続していた。
  • 生活を共にしている人物が感染していた。
  • 海外や国内旅行の履歴がある。

労災は、業務中に感染したことが明確になっていないと、労災認定されないため、調査が入って3つのパターンに該当している場合は、仕事中に感染したことを証明するのが難しくなってしまいます。

【具体例1】
在宅勤務中に体調が悪くなり、検査したらコロナウィルスに感染していた。家族以外と接触していないにも関わらず感染した。もちろん家族は症状は出ていない。感染経路が不明確なため、労災の認定は難しい
【具体例2】
4人家族で暮らしていて、同時期に2人コロナウィルスに感染したことが発覚した。自分は症状は出なかったが、後日症状が出た。
【具体例3】
業務外で海外や国内の旅行歴があって、帰国・帰省してから数日後にコロナウィルスに感染したことが発覚した。

具体例を挙げさせていただいた内容は、すべて業務に関係ない部分が感染経路になっているケースです。

在宅勤務であっても労災を認めるとなっていますが、冷静に考えて現実問題、無理だと私は考えています。理由は、在宅勤務中に感染したという証明がとても困難だからです。個人的には、厚生労働省は在宅ワークが多くなっている状況があるのだから具体例を交えてちゃんと説明する責任があると思います。

厚生労働省の発表は緩和されている職種もありますが、自分の職種と照らし合わせて、緩和されていない職種もあるということを認識しておいた方が良いと思います。

また、バスや電車の通勤で感染したと思われる場合は、通勤以外の感染源が否定された場合のみ、労災として認められるケースがありますが、確実にバスや電車で感染したとは言い切れないのが現実です。乗っていたバスや電車から重篤な感染者が出れば認められそうですが、コロナウィルスに感染したら必ず症状が出るとは限らないので、やはり証明が難しいところですね。

つまり、労災がむずかしいケースとは、「あきらかに業務とは別の要因が感染経路だったんじゃないか?」と思われる場合ということになります。

労災がダメだった時の切り札

労災が使えない時のとっておきの切り札!

労災が使えない時のとっておきの切り札!

コロナウィルスの感染経路が特定できな場合の多くは、労働基準監督署としては、労災はおりないという結論になると思います。

しかし、それじゃ労働者は困るんですよ!

コロナウィルス感染者が増加している日本において、保健所や病院など検査機関もパンクし始めています。また、感染したら重症にならない場合は自宅療養になるケースが多いため、労災の申請をしたところで、労災認定までに数か月から数年かかるケースもあります。

調査に時間がかかるだけかかってダメでした、労災の対象になりませんてなったら、元も子もないです。

そんな労災がダメだった時の切り札は「傷病手当金の申請」することをおススメします。

傷病手当金は,仕事とは関係ない傷病で休業した労働者が、会社から十分な報酬が受けられない場合に、健康保険協会などから受けることができる手当金です。

傷病手当金は、最大1年6ヶ月間、おおむね給料の3分の2(70%弱)の支給がされます。

傷病手当金は、会社と主治医の証明をもらって申請書を提出すれば、労災よりも早く受給できます。イメージがしやすいように簡単な対比表を用意しました。

労働者災害補償保険 傷病手当金
条件
  • 業務上の事由又は通勤による負傷や疾病による療養であること
  • 労働することができないこと
  • 賃金を受けていないこと
  • 業務外の事由による病気やケガの療養のための休養であること
  • 仕事に就くことができないこと
  • 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
  • 休業した期間について給与の支払いがないこと
待機期間
  • 休業の初日から3日目までは支給なし。この期間は、業務災害の場合、事業主が休業補償。
  • 休業4日目以降に仕事に就けない場合に支給。連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかった場合。
給付 給料の80% 給料の70%

もっとも、労災保険の休業補償給付と、傷病手当金の両方を受給することはできません。

そこで、労災申請と、傷病手当金の申請をして、傷病手当金の受給後に労災認定されれば、

労災保険から休業補償給付が支給されるので、それですでに支払われた傷病手当金を返還すればいいのです。

労災の休業補償給付は給料の80%で、傷病手当金は給料の70%弱なので、労災認定されれば,傷病手当金を十分に返還できます。というか、労災の方が良いですよね。

そのため、在宅勤務だろうとどんな職種であろうとも、仕事中に新型コロナウイルスに感染したものの、感染経路の調査に時間がかかりそうであれば、労災申請をしつつ、傷病手当金を受給するのがいいと考えます。

まとめ

まとめ

今回のまとめです。

介護・医療の現場は不安と緊張の中、業務を続けています。

国民の命に関わってくる業務の為、止まることは出来ません。

介護士としての視点だけで考えれば、今回の緩和は不安だった気持ちを緩和させてくれるものになると思います。

労災がむずかしいケースに該当しなければ、介護士はほぼ100%労災の認定を受けられる内容なので、もしコロナウィルスに感染したとしても隠す必要性はまったくないですし、むしろ隠していたことが発覚すると労働者本人の責任も問われてくると思いますので、心配せずに労災の申請をしましょう。

コロナウィルスの労災になる3つの条件
先生のイラスト

  • 介護、医療の現場の職員は、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則労災。
  • 介護、医療の現場ではない職員の場合は、感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合は労災
  • 複数の感染者が確認された職場や顧客との近接や接触の機会が多い労働環境の場合は労災

労災がむずかしい3つのパターン
先生のイラスト

  • 在宅勤務で仕事を継続していた。
  • 生活を共にしている人物が感染していた。
  • 海外や国内旅行の履歴がある。

労災になるケースとむずかしいケースをちゃんと理解していれば、あなたが損をすることはありません。

介護の現場において、人不足は深刻ですが、今回の案件でも、もし出勤させるような会社や法人があるとするのであれば、そこはあなたの働く環境ではないので、転職をしましょう。介護の業界は動き続けているので、こんな時期だからといって、「転職を避けた方が良いんじゃないか?」と悩んでいるのであれば、常時人不足なんですから、正直関係ないです。

正直、医療介護業界じゃない職種の方は、労災認定になるまでに時間がかかったりすると思います。そんな時は、傷病手当金を活用することによって最低限の金額を得ることができると思います。

個人的な考えとしては、在宅ワークしてる最中に感染したら99%は、労災認定にならない気がします。感染経路が業務に関係していると言いづらいですからね。

もちろん、状況によると思います。

今後、厚生労働省が今後Q&Aで労災になったケースを情報開示すれば、コロナウィルスに対する労災の具体例や範囲がわかるようになるので、個人的には私の考えが間違っていて、もっと労働者に寄り添った、柔軟な労災の対応ができるものと信じたいものです。



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