介護現場で「家に帰りたい」「ごはんはまだ?」「誰もわかってくれない」と何度も訴えられると、優しくしたい気持ちがあっても、忙しさの中で返事が雑になってしまうことがありますよね。けれど、その訴えは単なるわがままではなく、不安、寂しさ、痛み、混乱、尊厳を守りたい気持ちが言葉になって出ているサインかもしれません。傾聴の目的は、すべての訴えをその場で解決することではありません。「この人は私を雑に扱わない」と感じてもらい、安心の土台を作ることです。
この記事でわかることを先にまとめます。
- 利用者の訴えの奥にある本当の気持ちを読み取る視点。
- 否定せず、だまさず、スピーチロックを避けて聴く具体策。
- 忙しい現場でも今日から使える短時間の傾聴技術。
利用者の訴えは「困らせる言葉」ではなく「助けて」の翻訳

介護のイメージ
同じ訴えを繰り返す理由を記憶だけで片付けない
認知症の方が同じ訴えを何度も繰り返すと、「さっき説明したのに」と思ってしまうかもしれません。けれど、ご本人の中では毎回が初めての不安です。「ごはんはまだ?」の背景には空腹だけでなく、時間感覚の混乱、見通しのなさ、置いていかれる怖さが隠れていることがあります。「家に帰りたい」は、住所としての家ではなく、安心できる場所へ戻りたいという心の叫びであることも多いです。
事実より先に感情を受け止める
「さっき食べましたよ」「今日は息子さんは来ませんよ」と事実だけを伝えると、職員側は正しく説明したつもりでも、利用者さんには「信じてもらえなかった」と届くことがあります。最初の一言は説明ではなく、「お腹が空いた感じがするんですね」「息子さんに会いたくなったんですね」と、感情の名前を返すことから始めましょう。事実確認は、そのあとで十分です。
傾聴の前に整えるべき3つの姿勢
目線を下げるだけで会話の温度が変わる
立ったまま見下ろして話すと、たとえ優しい言葉でも急かされている印象になります。可能なら椅子に座る、車椅子の方には膝を落として目線を合わせる、騒がしい場所から少し離れる。これだけで「今、あなたの話を聴く時間です」という非言語のメッセージになります。傾聴は耳だけでなく、姿勢で伝えるケアです。
表情、声、間を相手に合わせる
悲しそうに話す方へ明るすぎる声で返すと、気持ちの温度差が生まれます。逆に、不安そうな方に落ち着いた低めの声で「そう感じたんですね」と返すと、相手の呼吸が少しずつ整うことがあります。相づちは多ければよいわけではありません。「うんうん」と急いで連発するより、少し間を置いて「それは心配でしたね」と返すほうが深く届きます。
触れるケアは許可と距離感が命
肩や手に軽く触れることで安心する方もいますが、誰にでも有効ではありません。触れられることが苦手な方、過去の経験から警戒する方もいます。触れる前に「手を添えてもいいですか」と確認する。表情がこわばったらすぐ離れる。触れるケアは技術ではなく、相手の境界線を尊重する姿勢があって初めて成り立ちます。
利用者の訴えを傾聴するコツ7選
最初の10秒は止まって聴く
忙しいときほど、返事だけして体は別の作業を続けがちです。しかし利用者さんは、言葉より職員の態度を見ています。最初の10秒だけでも手を止め、顔を向け、「どうされましたか」と聴く。その短い集中が、後の長いやり取りを減らすことがあります。
否定語を受容語に変える
「違います」「無理です」「できません」は、正しくても心を閉じさせます。「そう思われたんですね」「帰りたくなるくらい落ち着かないんですね」「一緒に確認しましょう」に変えると、会話が対立から共同作業へ変わります。受け入れることは、事実を曲げることではありません。まず気持ちを置く場所を作るということです。
スピーチロックを避けて選択肢を渡す
「座ってて」「動かないで」「ちょっと待って」は、現場でつい出やすい言葉です。ただ、繰り返されると利用者さんは自分の行動を奪われたように感じます。転倒リスクがある場面でも、「ここで一緒に待ちましょう」「立ちたい理由を教えてください」「私が横にいますね」と言い換えると、制止ではなく伴走になります。
訴えを「身体」「感情」「環境」に分けて見る
「帰りたい」と言う方に、会話だけで対応しても落ち着かないことがあります。寒い、痛い、トイレに行きたい、席が落ち着かない、周囲が騒がしいなど、身体や環境が原因のこともあるからです。傾聴は心だけを見る技術ではなく、生活全体を観察する技術です。
| 訴えの言葉 | 隠れている可能性 | 最初の対応 |
|---|---|---|
| 家に帰りたい | 安心できない、役割を失った、夕方で不安が強い | 帰りたい気持ちを受け止め、落ち着く場所や馴染みの話題へつなげる |
| ごはんはまだ? | 空腹、時間の不安、予定が見えない | 食事時間を短く伝え、飲み物や会話で待つ時間を支える |
| 誰も来てくれない | 孤独、家族への思い、見捨てられ感 | 寂しさを言葉にして返し、家族の話を無理なく聴く |
| 痛い、つらい | 身体症状、恐怖、理解してほしい気持ち | 痛みの場所や強さを確認し、必要時は看護職や上司へ共有する |
質問は「なぜ」より「どんな感じですか」
「なぜ帰りたいんですか」と聞かれると、責められているように感じる方もいます。「どんな感じがしますか」「どこが落ち着きませんか」「今、一番心配なことは何ですか」と聞くと、気持ちを話しやすくなります。特に認知機能が低下している方には、質問を短く、一度に一つだけにしましょう。
記録に「言葉」だけでなく「背景」を残す
「帰宅願望あり」だけでは、次の職員が同じ対応を繰り返すだけです。「夕方に多い」「食堂が騒がしいと増える」「娘さんの話をすると落ち着く」まで記録すると、チームのケアが変わります。良い傾聴は、その場の優しさで終わらず、次の人が同じ安心を再現できる情報に変わります。
職員自身の余裕を点検する
傾聴がうまくいかない日は、技術不足ではなく疲労が原因のこともあります。イライラしている、声が強くなっている、返事が短くなっていると気づいたら、一度深呼吸し、可能なら他職員に交代を頼みましょう。自己覚知はきれいごとではなく、利用者さんと自分を守る安全管理です。
忙しい現場で使える30秒傾聴の手順
全部をじっくり聴けない場面でも、雑に扱わない方法はあります。大切なのは、短くても順番を間違えないことです。
- 手を止めて顔を向け、「どうされましたか」と一度受け止めます。
- 利用者さんの言葉を短く繰り返し、「心配なんですね」と感情を添えます。
- 今すぐできることと次にすることを、短い言葉で具体的に伝えます。
- 対応できない場合も、「何分後に戻ります」ではなく「この介助が終わったら戻ります」と見通しを伝えます。
- 戻ったら必ず声をかけ、「待ってくださってありがとうございます」と尊重を言葉にします。
この流れを守るだけで、「放置された」という感覚を減らせます。忙しいから傾聴できないのではなく、忙しいからこそ短くても信頼を落とさない型が必要なのです。
やってはいけない対応と言い換えの考え方
否定、無視、ごまかし、だます声かけは信頼を削る
「そんなこと言わないで」「さっきも聞きました」「大丈夫大丈夫」といった言葉は、職員に悪気がなくても、利用者さんには拒絶として届くことがあります。また、実際には来ない家族を「もうすぐ来ます」と伝えるような声かけは、その場を収めても信頼を失う危険があります。安心させたいときほど、嘘ではなく「会いたいですね」「連絡できるか確認しますね」と、現実と気持ちの両方を守る言葉を選びましょう。
正論よりも順番が大事
事実を伝えること自体が悪いわけではありません。ただし、順番を間違えると傷つけます。「もう食べました」ではなく、「まだ食べていない感じがして心配なんですね。記録を一緒に確認しますね」。このように、感情、確認、説明の順にすると、利用者さんは否定されたと感じにくくなります。
「訴えの言葉」ではなく「訴えが出た場面」を見る

介護のイメージ
介護現場で一歩踏み込んで考えたいのは、利用者さんの言葉そのものよりも、その訴えが出た直前に何が起きていたかです。同じ「帰りたい」でも、昼食後に出るのか、夕方に出るのか、入浴前に出るのか、職員交代のタイミングで出るのかによって、意味がまったく変わります。
たとえば、夕方になると毎日のように「家に帰らなきゃ」と立ち上がる方がいます。これを単に「帰宅願望」と記録して終わらせると、対応は毎回その場しのぎになります。けれど、よく観察すると、夕食前のざわざわした時間、職員が忙しく動き回る時間、窓の外が暗くなり始める時間に不安が強くなっていることがあります。つまり、ご本人は「家に帰りたい」と言いながら、実際には落ち着ける役割や居場所を失っている不安を訴えているのです。
この場合、「ここがあなたの家ですよ」と説明しても効果は薄いです。それよりも、「そろそろ夕方で落ち着かない時間ですね。洗濯物を一緒に畳んでもらえますか」と、役割を渡したほうが落ち着くことがあります。介護で大切なのは、言葉に言葉で返すだけではなく、訴えが出にくい状況を先に作ることです。
現場では、「あの人はいつも同じことを言う」と職員間で言われがちですが、実際には同じことを言わせている環境がある場合も少なくありません。照明が暗い、席が落ち着かない、隣の利用者さんの声が大きい、職員の動きが慌ただしい、トイレに行きたいと言い出しにくい。こうした小さな要因が積み重なって、訴えとして表に出てきます。
だからこそ、利用者さんの訴えを聴くときは、「何を言っているか」だけでなく、「いつ、どこで、誰の前で、何の後に言ったか」を見る視点が欠かせません。これは経験を積んだ介護職ほど自然にやっている観察です。逆に言えば、この視点を持つだけで、新人でも対応の質がぐっと上がります。
「今すぐ対応できない」ときに信頼を失わない返し方
介護現場でよくあるのが、同時に複数の利用者さんから声をかけられる場面です。トイレ介助中に別の方から「ちょっと来て」と呼ばれる。食事配膳中に「寒い」と言われる。転倒リスクのある方が立ち上がっている横で、別の方が「話を聞いて」と訴える。理想論だけでは回らないのが現場です。
ここで大事なのは、すぐ対応できないこと自体よりも、待たせ方です。利用者さんが傷つくのは、待たされたことよりも、「自分は後回しにされた」「面倒くさがられた」と感じたときです。
よくない返し方は、「あとでね」「今忙しいから」「ちょっと待ってて」です。職員側は悪気なく言っていても、利用者さんには拒否されたように響きます。特に不安が強い方や認知症の方は、「あとで」がどのくらい先なのか見通しを持ちにくいため、さらに不安になって同じ訴えを繰り返すことがあります。
現実的には、次のような返し方が使いやすいです。
| よくある場面 | 避けたい返し方 | 信頼を残す返し方 |
|---|---|---|
| 別の介助中に呼ばれたとき | 今無理です。 | 声をかけてくれてありがとうございます。この介助が終わったら、必ずお話を聞きに行きます。 |
| 同じ質問を何度もされたとき | さっきも言いましたよ。 | 心配になりますよね。もう一度一緒に確認しましょう。 |
| すぐに希望を叶えられないとき | できません。 | 今すぐは難しいですが、できる方法を一緒に考えますね。 |
| 転倒リスクがあり立ち上がったとき | 座ってください。 | 立ちたい理由がありましたね。私が横に行くので、一緒に動きましょう。 |
ポイントは、感謝、理由、次の行動を短く入れることです。「声をかけてくれてありがとうございます」と言われるだけで、利用者さんは自分の訴えが迷惑ではなかったと感じやすくなります。そして「この介助が終わったら」と具体的な区切りを伝えると、ただ放置された印象になりにくいです。
さらに重要なのは、言ったからには戻ることです。戻れなかった場合、次から同じ言葉は信用されません。数分後でもいいので、「先ほど声をかけてくれましたよね」とこちらから戻る。これを続けると、利用者さんの中に「この人はちゃんと戻ってくる」という安心が育ちます。傾聴は会話中だけの技術ではなく、約束を小さく守る積み重ねでもあります。
訴えが強い人ほど「正面から説得しない」ほうがうまくいく
現場でよく悩むのが、強い口調で訴える利用者さんへの対応です。「なんでこんなところにいるんだ」「あんたじゃ話にならない」「家族を呼べ」と怒りをぶつけられることがあります。このとき、職員が正面から説得しようとすると、かえって火に油を注ぐことがあります。
怒りが強いときの利用者さんは、理屈を聞く状態ではなく、まず自分の不安や悔しさをわかってほしい状態です。そこで「ここは施設です」「ご家族には連絡済みです」「今は帰れません」と正論を重ねると、ご本人にとっては「自分の気持ちを否定された」と感じやすくなります。
こういうときは、まず言葉の勢いに巻き込まれないことです。職員が焦って早口になると、相手の興奮も上がります。声の音量を少し下げ、話す速度も落とし、真正面ではなく少し斜めの位置に立ちます。真正面は対決の姿勢に見えやすいため、斜めの位置から「びっくりされましたよね」「納得できない気持ちがありますよね」と返すほうが入りやすいです。
体験的に言えば、怒っている方に一番効きにくいのは「落ち着いてください」です。言われた側は「落ち着けないから怒っているんだ」と感じます。代わりに、「急に言われたら嫌ですよね」「それは腹が立ちますよね」と、怒りそのものを一度置ける言葉を返すほうが、結果的に落ち着くことがあります。
ただし、暴力や転倒の危険がある場合は別です。無理に傾聴しようとして近づきすぎる必要はありません。距離を取り、他職員を呼び、周囲の利用者さんを守ることが先です。介護の傾聴は、自己犠牲ではありません。安全を確保したうえで、相手の尊厳を守ることが本質です。
「話を聞く」と「要求を全部受け入れる」は違う
傾聴を学び始めると、「聴いたら全部叶えないといけないのでは」と不安になる人がいます。けれど、これは大きな誤解です。傾聴とは、相手の要求をすべて通すことではなく、相手の気持ちを雑に扱わないことです。
たとえば、夜中に「今すぐ外へ出たい」と言われたとします。安全面から、そのまま外へ出すことはできません。だからといって「無理です」と切ると不穏が強まります。この場合は、「外に出たいくらい落ち着かないんですね」と気持ちを受け止めたうえで、「今は夜で危ないので、玄関の近くまで一緒に行って空気を感じてみましょうか」「少し温かいお茶を飲んでから考えましょうか」と、代替案を出します。
介護では、要求の奥にあるニーズを見ることが大切です。「外へ出たい」の奥には、閉じ込められ感、息苦しさ、家族への心配、身体の違和感、眠れない不安があるかもしれません。表面の要求をそのまま叶えられなくても、奥にあるニーズに近づけば、落ち着く道が見えることがあります。
これは家族対応でも同じです。ご家族から「もっと見てください」「なぜ気づかなかったんですか」と強く言われると、職員は責められたように感じます。しかし、その奥には「大切な家族を任せている不安」があります。まず「ご心配をおかけしました」「不安なお気持ちになりますよね」と受け止めたうえで、事実と今後の対応を伝える。これも広い意味での傾聴です。
利用者さんの訴えを減らす「先回りケア」の考え方
訴えに対応する力も大切ですが、本当に現場が楽になるのは、訴えが爆発する前に気づけるようになったときです。これを先回りケアと考えるとわかりやすいです。
たとえば、毎日15時ごろに「まだ帰れないの」と不安になる方がいるなら、15時になってから対応するのではなく、14時45分に声をかけます。「そろそろお茶の時間ですね。今日は一緒に窓際の席に行きましょう」と先に関わるだけで、不穏が軽くなることがあります。
トイレの訴えが強い方も同じです。何度も「トイレ」と言われてから対応すると、職員も焦り、本人も不安になります。記録を見て排泄リズムをつかみ、訴えが出る少し前に誘導する。これだけで、本人の安心感も職員の負担も変わります。
先回りケアで見るポイントは、以下のようなものです。
- 訴えが出やすい時間帯、場所、人、音、照明、席順を観察します。
- 空腹、眠気、寒さ、痛み、便秘、尿意など身体の不快が隠れていないか確認します。
- 本人が安心しやすい言葉、物、習慣、役割、職員との関係を記録して共有します。
リストにすると当たり前に見えますが、忙しい現場では意外と抜けます。特に「誰が対応すると落ち着くか」は重要です。相性のよい職員がいるなら、その職員の声かけを観察して、言葉の選び方や距離感をチームで共有すると、個人技だったケアが施設全体のスキルになります。
現場でありがちな困りごとへの実践的な考え方
「話が止まらない利用者さん」には終わり方を先に作る
話を聴くことは大切ですが、いつまでも話が終わらず業務が進まないことがあります。このとき、急に「では行きますね」と切ると、利用者さんは置いていかれた感じになります。最初に「5分だけですが、しっかり聴きますね」と枠を作ると、終わり方が自然になります。
終えるときは、「大事なお話を聞かせてくれてありがとうございます。続きは昼食後にまた聞かせてください」と、話を価値あるものとして扱います。終わらせることは冷たいことではありません。終わり方に敬意があるかが大切です。
「職員によって態度が変わる人」はわがままではない
利用者さんの中には、ある職員には穏やかなのに、別の職員には強く当たる方がいます。これを「人を見ている」と悪く受け取りがちですが、実際には声の高さ、話す速度、触れ方、表情、距離感、過去の関わりなどが影響していることがあります。
対応がうまい職員は、無意識に相手の安心スイッチを押しています。「名前を呼んでから話す」「急に後ろから近づかない」「説明を短くする」「選択肢を二つに絞る」など、細かい工夫があります。うまくいく人の真似をすることは、介護ではとても実践的な学びです。
「何を言っても拒否される人」には関係づくりを急がない
入浴拒否、服薬拒否、食事拒否など、何を提案しても「嫌だ」と言われることがあります。この場合、説得の言葉を増やすほど拒否が強まることがあります。まずは介助目的を一度横に置き、雑談や挨拶だけの関係を作るほうが近道になる場合があります。
「お風呂に入りましょう」ではなく、「今日は寒いですね」「その服、よくお似合いですね」と、要求を含まない関わりを重ねる。利用者さんから見れば、毎回何かをさせようとする人より、ただ気にかけてくれる人のほうが安心できます。介助は信頼の上に乗るものです。信頼がないまま技術だけで押すと、拒否は強くなります。
記録と申し送りで傾聴の質は決まる
良い対応ができた日ほど、記録に残す価値があります。なぜなら、利用者さんの安心は偶然ではなく、再現できるケアに変える必要があるからです。
「不穏あり」「訴え多い」だけの記録では、次の職員は困ります。書くべきなのは、訴えの内容、出た場面、対応、反応です。たとえば、「16時頃、食堂が騒がしくなったタイミングで『家に帰る』との発言あり。窓際へ移動し、故郷の話を聴くと10分ほどで表情落ち着く。洗濯物畳みを依頼すると集中して取り組まれた」と書けば、次の対応につながります。
申し送りでも、「今日も帰宅願望がありました」だけでは不十分です。「夕方のざわつきがきっかけになっていそうです」「役割をお願いすると落ち着きました」と共有することで、チーム全体が同じ方向を向けます。
傾聴は一対一の技術と思われがちですが、実はチームケアです。一人の職員が上手に聴いても、次の職員が否定的に返せば安心は崩れます。だからこそ、うまくいった声かけを共有する文化が必要です。
個人的にはこうしたほうがいいと思う!
個人的には、利用者さんの訴えに対して「どう返すか」だけを学ぶより、まずこの人は何を守ろうとしてこの言葉を出しているのかを考えたほうがいいと思います。ぶっちゃけ、介護の本質はそこにあります。
「帰りたい」と言う人は、施設から逃げたいだけではなく、自分の人生の続きに戻ろうとしているのかもしれません。「ごはんはまだ」と聞く人は、食事の時間を知りたいだけではなく、置いていかれる不安を確認しているのかもしれません。「痛い」と繰り返す人は、痛みそのものだけでなく、「誰か私を気にして」という孤独を訴えているのかもしれません。
現場では、きれいごとだけでは回らない日があります。人手が足りない、ナースコールが重なる、記録も終わらない、家族対応もある。そんな中で毎回完璧に傾聴するのは無理です。でも、だからこそ「雑に扱わない最低ライン」を持つことが大事だと思います。手を止めて顔を見る。否定から入らない。できないときも理由と次の行動を伝える。戻ると言ったら戻る。この小さな誠実さが、介護ではものすごく大きいです。
そしてもう一つ大事なのは、職員一人の優しさに頼りすぎないことです。優しい人ほど抱え込みます。でも、抱え込む介護は長く続きません。利用者さんの訴えが多いなら、「あの人は大変」で終わらせず、時間帯、環境、身体状況、関係性、声かけの成功例をチームで見える化したほうがいいです。個人の根性ではなく、チームの知恵で支える。これが現実の介護では本当に必要です。
結局、利用者さんの訴えを傾聴するコツは、優しい言葉を覚えることだけではありません。相手の尊厳を守りながら、現場が続けられる形に落とし込むことです。気持ちは受け止める。でも、全部は背負わない。要求は丸のみしない。でも、感情は置き去りにしない。個人的にはこうしたほうが、ぶっちゃけ介護の本質をついてるし、現場の介護では必要なことだと思う。利用者さんを安心させる介護は、職員が無理をし続ける介護ではなく、相手の声をチームで受け止め、生活の中で安心に変えていく介護です。
利用者の訴えを傾聴するコツに関する疑問解決
何度も同じ訴えをされるとき、毎回同じように聴くべきですか?
毎回長く聴く必要はありません。ただし、毎回雑に扱わないことが大切です。最初に気持ちを受け止め、同じ訴えが続く時間帯、場所、体調、周囲の刺激を記録してみてください。繰り返しの訴えは、本人の中で解決していない不安が形を変えずに出続けている状態です。対応を個人技にせず、チームで原因を探ると改善しやすくなります。
「家に帰りたい」と言われたら、どう返すのがよいですか?
いきなり「帰れません」と言うより、「帰りたくなるくらい心配なんですね」と返すほうが会話が続きます。その後で「家ではどんなことをしていましたか」「誰が待っている感じがしますか」と聞くと、役割、家族、安心感など背景が見えてきます。落ち着いてきたら、お茶を飲む、馴染みの歌を聴く、昔の仕事の話をするなど、安心につながる行動へ移します。
傾聴しても怒りが強い場合はどうすればよいですか?
興奮が強いときは、説得より安全確保が先です。距離を取り、声を低くし、周囲の刺激を減らします。無理に触れたり、正面から詰め寄ったりしないでください。少し落ち着いて言葉が入る状態になってから、「怖かったですね」「嫌だったんですね」と短く返します。傾聴は相手の怒りをすぐ消す魔法ではなく、怒りの奥にある不安へ近づく入口です。
新人でも自然に傾聴できるようになる練習法はありますか?
まずは「繰り返し」と「感情の言語化」だけ練習しましょう。「息子が来ない」に対して「息子さんが来なくて寂しいんですね」。「頭が変になった」に対して「自分でも不安になる感じがあるんですね」。完璧な返答を探すより、相手の言葉の奥にある気持ちを一つ返す練習を積むほうが、現場では役立ちます。
まとめ
利用者さんの訴えを傾聴するコツは、特別な話術ではありません。目線を合わせる、否定しない、感情を先に受け止める、スピーチロックを避ける、背景を記録する。この小さな積み重ねが、利用者さんの「ここにいても大丈夫」という安心につながります。介護の現場では、すべての願いを叶えられない日があります。それでも、訴えを邪魔な声として処理するのか、一人の人の大切なサインとして受け取るのかで、ケアの質は大きく変わります。今日からまず一つ、返事の前に手を止めて顔を見ることから始めてみてください。その数秒が、利用者さんの不安を安心へ変える最初の一歩になります。



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