2024年の介護保険制度改正により、介護職員の賃金は確実に上昇しています。しかし、現場で働く介護職員の多くが「まだ十分ではない」と感じているのが現実です。この記事では、改正による具体的な変化と、なぜ現場の満足度が低いのか、そして今後の展望について詳しく解説していきます。
2024年度介護保険改正で実現した賃金改善の実態

介護のイメージ
介護クラフトユニオンが実施した調査結果によると、月給制の介護職員では平均7,414円(2.9%)、時給制では7,022円(4.7%)の賃金上昇が確認されました。これは2024年3月から7月にかけての変化で、改正の効果が数字として現れています。
職種別に見ると、最も大きな改善を見せたのはサービス提供責任者で4.0%増、続いて生活相談員が3.4%増、入所介護員が3.3%増となっています。一方で、ケアマネジャーは2.2%増、看護職は1.7%増と、職種による格差も明らかになりました。
この背景には、処遇改善加算の対象となるサービスと、そうでないサービスの違いがあります。ケアマネ事業所や訪問看護ステーションでは処遇改善加算が設けられていないため、改善幅が小さくなっているのです。
処遇改善加算の一本化による新しい仕組み
2024年度の大きな変更点は、これまで別々だった3つの処遇改善加算を「介護職員等処遇改善加算」として一本化したことです。この新しい仕組みでは、4つのレベルが設定されています。
最高レベルの新加算Iでは、訪問介護の場合、加算率が24.5%に設定されています。これは従来の3加算合計22.4%より2.1ポイントの上昇です。ただし、この加算を取得するには、介護福祉士を30%以上配置するなどの厳しい要件をクリアする必要があります。
新加算IVでも、従来の12.4%から14.5%へと2.1ポイント上昇しており、すべてのレベルで加算率の改善が図られています。この一本化により、事業所にとって分かりやすく、より効果的な処遇改善が期待されています。
現場職員が感じる「まだ足りない」という現実
賃金が上昇したにも関わらず、月給制では32.4%、時給制では41.9%の職員しか現在の賃金に満足していないという厳しい現実があります。その最大の理由は「社会的な平均賃金より低い」ということで、約半数の職員がこの点を不満として挙げています。
2023年の税込年収を見ると、月給制で396万円、時給制で188万円となっており、他業種と比較すると依然として低い水準にあることが分かります。特に、介護職員の多くが「さらなる介護報酬の引き上げが必要」と考えており、約6割がこの意見を支持しています。
この背景には、介護業界特有の課題があります。24時間365日のケアが求められる中で、夜勤や休日出勤が常態化しており、精神的・肉体的負担が大きいにも関わらず、それに見合った報酬が得られていないと感じる職員が多いのです。
財源問題と制度持続性のジレンマ
処遇改善を進めるためには当然ながら財源が必要です。介護報酬の財源は税金、保険料、利用者負担の3つで構成されており、報酬の引き上げは国民負担の増加に直結します。
団塊の世代が2025年度には全員75歳以上となり、2040年にかけて現役世代人口が急激に減少する中で、制度の持続可能性が大きな課題となっています。社会保障審議会では「現役世代の負担は限界に来ている」という声が多く上がっている一方で、「サービス確保を軽視すれば介護離職が増加する」という指摘もあります。
この問題を解決するためには、単純な報酬引き上げだけでなく、生産性向上やICT活用による効率化、介護助手の活用などを組み合わせた総合的なアプローチが必要です。また、地域包括ケアシステムの深化により、医療と介護の連携を強化し、より効率的なサービス提供体制を構築することも重要な要素となります。
今後の制度改革に向けた動向と展望
2027年度の介護保険制度改革に向けた議論がすでに始まっています。その中で重要なポイントとなるのは、より効果的な介護職員の処遇改善方法の検討です。現在の加算方式だけでなく、基本報酬への組み入れや、地域特性を考慮した柔軟な報酬設定なども議論されています。
また、人材確保の観点から、外国人介護職員の受け入れ拡大や、介護ロボット・AIの活用による業務効率化も重要なテーマとなっています。これらの技術革新により、介護職員の身体的負担を軽減し、より専門性の高い業務に集中できる環境を整備することが期待されています。
地域医療介護総合確保基金の活用により、各自治体が地域の実情に応じた人材確保策を実施することも推進されており、地域格差の解消に向けた取り組みも注目されています。
よくある質問
2024年の改正で自分の事業所の処遇改善はどのくらい期待できますか?
職種やサービス種別により異なりますが、処遇改善加算を適切に取得している事業所では、月額で数千円から1万円程度の改善が見込まれます。ただし、事業所が新加算のどのレベルを取得するかによって大きく変わるため、勤務先に確認することをお勧めします。
なぜ介護職員の賃金は他業種より低いままなのですか?
介護保険制度では報酬が公定価格で決められており、市場原理による賃金上昇が起こりにくい構造があります。また、サービスの対価を直接利用者から受け取るのではなく、保険制度を通じて支払われるため、財源の制約が賃金水準に直接影響しています。
今後、介護職員の待遇改善は期待できますか?
人材不足が深刻化する中で、待遇改善は避けて通れない課題となっています。ただし、財源の問題もあるため、報酬改善と併せて、働きやすい環境づくりや生産性向上による総合的な処遇改善が進められると予想されます。
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まとめ
2024年度の介護保険改正により、介護職員の処遇改善は確実に前進しました。しかし、現場の声を聞くと「まだ十分ではない」という厳しい現実があります。今後は、財源の確保と制度の持続可能性を両立させながら、より効果的な処遇改善策を見つけていく必要があります。介護職員一人ひとりが安心して働き続けられる環境を整備することが、日本の超高齢社会を支える基盤となるのです。
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