2024年度の介護保険改正により、訪問看護の現場は大きな転換期を迎えています。特に長時間訪問看護加算については、算定要件や対象者の見直しが行われ、事業所運営や看護師の働き方に直接的な影響を与えています。しかし、多くの訪問看護ステーションや看護師が、この改正の本質的な意味や実務への影響を十分に理解できていないのが現状です。本記事では、介護保険改正による訪問看護の変化を徹底解説し、現場で本当に必要な知識と対策をお伝えします。
2024年度介護保険改正が訪問看護に与えた衝撃

介護のイメージ
2024年度の介護保険改正では、訪問看護の質の向上と効率化が大きなテーマとなりました。特に注目すべきは、長時間訪問看護加算の見直しです。この改正の背景には、医療依存度の高い在宅療養者の増加と、訪問看護師の労働環境改善という二つの重要な課題があります。
改正前は、長時間の訪問看護を提供しても報酬が十分ではなく、事業所の経営を圧迫する要因となっていました。今回の改正では、こうした課題に対応するため、算定要件の明確化と報酬体系の見直しが行われています。ただし、この変更は単なる報酬アップではなく、より質の高いケアの提供を前提とした制度設計になっている点を理解することが重要です。
長時間訪問看護加算の全体像を理解する
長時間訪問看護加算は、通常の訪問看護の時間を超えて1時間30分以上のケアを提供した場合に算定できる加算制度です。医療保険と介護保険の両方で適用可能ですが、それぞれ対象者や算定要件が異なるため、正確な理解が欠かせません。
医療保険における長時間訪問看護加算の実態
医療保険での長時間訪問看護加算は、より重症度の高い利用者を対象としています。具体的には、15歳未満の超重症児または準超重症児、特別訪問看護指示書に係る指定訪問看護を受けている方、そして特別管理加算の対象者が該当します。
超重症児とは、運動機能が座位までに制限され、各種医療処置が必要な状態が6か月以上継続している児童を指します。超重症児判定スコアが25点以上の場合は超重症児、10点以上25点未満の場合は準超重症児と分類されます。これらの児童に対しては、週3回までの算定が認められており、より手厚いケアの提供が可能になっています。
特別訪問看護指示書は、主治医が週4日以上の頻回な訪問看護が必要と判断した際に交付される重要な書類です。退院直後や急激な容態悪化時、末期の悪性腫瘍患者などに対して交付され、通常は14日間を期限として月1回の交付が原則です。ただし、気管カニューレを使用している利用者や真皮を超える褥瘡がある利用者については、月2回までの交付が可能となっており、より柔軟な対応が認められています。
算定には明確な要件があります。1回の訪問看護の時間が1時間30分を超えることはもちろん、訪問看護計画書および訪問看護報告書に長時間訪問看護が必要な理由と具体的な内容を記載することが必須です。この記載が不十分な場合、算定が認められない可能性があるため、丁寧な記録管理が求められます。
介護保険における長時間訪問看護加算の特徴
介護保険での長時間訪問看護加算は、要介護者または要支援者で特別管理加算の対象となる利用者に対して適用されます。医療保険との大きな違いは、支給限度額との関係です。この加算は支給限度額に含まれるため、ケアマネジャーとの綿密な連携が不可欠となります。
算定要件として、訪問看護報告書に実施した看護内容の詳細な記載が求められます。保健師、看護師、准看護師のいずれが訪問しても同じ単位数を算定できる点は、人員配置の柔軟性という観点から評価できるポイントです。
ただし、注意すべき点として、訪問看護ステーションが独自に定めた利用料の支払いは受けられません。支給限度基準内でのケアプラン策定が必要となるため、他のサービスとのバランスを考慮した計画的な運用が求められます。
訪問看護事業所が直面する新たな課題と対策
収益と労働時間のジレンマをどう解決するか
長時間訪問看護加算の導入は、一見すると事業所の収益向上につながるように思えます。しかし現実には、働けば働くほど報酬が見合わないという深刻な課題が存在します。看護師が長時間訪問することで人件費が増加し、加算による収益増を相殺してしまうケースが少なくありません。
この課題に対処するためには、訪問看護のケア内容を根本から見直す必要があります。優先度の明確化と効率化を図り、本当に長時間訪問が必要なケースを精査することが第一歩です。また、他の加算との戦略的な組み合わせにより、時間と報酬のバランス改善を目指すことも有効な手段となります。
具体的な対策としては、近隣の訪問先をまとめて訪問するルート最適化や、看護師のシフト調整による労働時間の見直しが挙げられます。これらの取り組みを総合的に実施することで、持続可能な事業運営を実現できる可能性が高まります。
ケアマネジメントとの連携強化が成功の鍵
長時間訪問看護を提供する際には、他サービスとの綿密な調整が不可欠です。特に介護保険では月の支給限度額が定められているため、ケアマネジャーとの連携なしには適切なサービス提供ができません。
長時間訪問看護により多くの点数を使用すると、利用可能な他のサービス時間が制限されてしまいます。例えば、本来予定していた訪問介護の時間を削減せざるを得なかったり、通所サービスの利用回数を減らさなければならない状況が発生します。こうした事態を避けるためには、利用者の生活全体を見据えた計画的なサービス調整が求められます。
看護の質向上という最大のメリット
長時間訪問看護加算には課題がある一方で、看護の質を大幅に向上させる可能性を秘めています。十分な時間をかけて利用者の状態を観察し、細やかなケアを提供できることは、利用者とその家族にとって計り知れない価値があります。
特に医療依存度の高い利用者に対して、じっくりと専門的なケアを提供できることで、看護師自身のスキルアップにもつながります。複雑な医療処置や高度な観察技術を必要とするケースに関わることで、看護師の専門性が飛躍的に向上し、それが事業所全体の強みとなっていきます。また、家族の介護負担を軽減し、レスパイトケアとしての役割も果たせるため、在宅療養の継続性を高める重要な要素となります。
実務で今すぐ押さえるべき5つのポイント
改正後の制度を効果的に活用するためには、実務レベルでの正確な理解が必要です。まず第一に、対象者の要件を正確に把握することが基本となります。医療保険と介護保険では対象者が異なるため、利用者ごとに適切な保険を選択する必要があります。
第二に、訪問看護計画書と報告書の記載内容を充実させることです。長時間訪問が必要な理由を具体的かつ説得力のある形で記録することで、算定の根拠を明確にできます。第三に、ケアマネジャーとの定期的な情報共有体制を構築し、サービス調整を円滑に進めることが重要です。
第四に、看護師のスケジュール管理とルート最適化により、効率的な訪問体制を整備することです。最後に、電子カルテなどのITツールを活用し、記録業務の効率化と算定漏れの防止を図ることで、業務全体の質を向上させることができます。
介護保険改正と訪問看護に関する疑問解決
長時間訪問看護加算は週に何回まで算定できますか?
対象者によって算定回数が異なります。特別訪問看護指示書に係る指定訪問看護を受けている方や特別管理加算の対象者に対しては週1回まで、15歳未満の超重症児または準超重症児、15歳未満の特別管理加算対象児に対しては週3回まで算定が可能です。この違いを正確に理解し、適切に運用することが求められます。
加算を算定した日以外に長時間訪問を行った場合はどうなりますか?
長時間訪問看護加算を算定した日とは別の日に1時間30分を超える訪問看護を行った場合、差額費用を「その他の利用料」として利用者から直接受け取ることが可能です。ただし、この場合は事前に利用者への十分な説明と同意が必要となります。
介護保険での長時間訪問看護加算は支給限度額に含まれますか?
はい、介護保険における長時間訪問看護加算は支給限度額に含まれます。そのため、ケアプランを策定する際には、他のサービスとのバランスを考慮し、利用者の生活全体を見据えた計画的な運用が不可欠です。ケアマネジャーとの綿密な連携により、最適なサービス提供を目指しましょう。
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まとめ改正を味方につける訪問看護の未来
2024年度の介護保険改正による訪問看護の変化は、単なる制度変更ではなく、在宅医療の質を高めるための重要な転換点です。長時間訪問看護加算の適切な活用により、医療依存度の高い利用者に対してより質の高いケアを提供できる環境が整いつつあります。
課題として、収益と労働時間のバランス、他サービスとの調整など、解決すべき点は確かに存在します。しかし、これらの課題に真摯に向き合い、効率的な運営体制を構築することで、看護の質向上と事業所の持続的成長の両立が可能となります。制度を正確に理解し、実務に活かすことで、訪問看護はさらに社会に必要とされる存在となっていくでしょう。今こそ、改正内容を深く理解し、あなたの訪問看護ステーションの強みを最大限に発揮する時です。
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