訪問看護事業所を運営されている皆さん、2024年の介護保険改正によって、収益構造が大きく変わることをご存知でしょうか。「加算の算定条件が複雑すぎて理解できない」「どの加算を優先的に取得すべきかわからない」「改定内容の把握が追いつかない」という声を、現場から多く耳にします。実は、この改正を正しく理解し活用できるかどうかで、事業所の収益は年間で数百万円も変わってくる可能性があるのです。本記事では、訪問看護事業所の経営者やマネージャーが知っておくべき加算・減算の全体像を、2024年改定の重要ポイントとともに、実務で即活用できる形で徹底解説します。
介護保険における加算・減算の基本的な考え方

介護のイメージ
加算と減算は、単なる点数の増減ではありません。これらは国の医療・介護政策の方向性を示す羅針盤なのです。加算は国が推進したい取り組みやサービスの質向上を促す仕組みであり、減算は改善が必要な領域や避けるべき状況を示しています。
例えば、緊急時訪問看護加算や特別管理加算の算定率が高い事業所は、重症者や医療依存度の高い利用者への対応力が評価されます。これは地域包括ケアシステムにおいて、在宅医療の受け皿としての役割を果たしている証です。一方で、業務継続計画未策定減算や高齢者虐待防止措置未実施減算は、事業所の基盤整備が不十分であることを意味し、早急な対応が求められます。
2024年の改定では、ターミナルケアの充実や専門性の高い看護師の活用、口腔ケアとの連携強化など、より質の高い在宅療養支援を目指す方向性が明確になりました。この流れを理解することで、今後の事業戦略が見えてきます。
2024年改定で特に注目すべき加算の変更点
緊急時訪問看護加算の新設と段階評価
最も大きな変更点の一つが、緊急時訪問看護加算の段階評価導入です。従来の一律評価から、緊急時訪問看護加算(Ⅰ)として指定訪問看護ステーションで600単位、病院または診療所で325単位という新たな区分が設けられました。この加算(Ⅰ)を算定するには、緊急時訪問における看護業務の負担軽減に資する十分な業務管理体制の整備が必要です。
具体的には、ICTを活用した情報共有システムの導入や、オンコール体制の明確化、緊急対応マニュアルの整備などが求められます。既存の緊急時訪問看護加算は加算(Ⅱ)として残されており、指定訪問看護ステーションで574単位となっています。この26単位の差は、年間で考えると大きな収益差につながるため、体制整備への投資価値は十分にあると言えるでしょう。
ターミナルケア加算の評価向上
在宅での看取りを推進する国の方針を反映し、ターミナルケア加算が2,000単位から2,500単位へと25%も引き上げられました。これは訪問看護ステーションが果たす看取りの役割の重要性が、より高く評価されたことを意味します。
ターミナルケア加算を確実に算定するためには、24時間連絡体制の確保はもちろん、主治医との密な連携、利用者とご家族への丁寧な説明と同意取得、そして詳細な記録の作成が不可欠です。特に記録においては、終末期の身体症状の変化だけでなく、利用者とご家族の精神的な状態の変化、看取りを含めた各プロセスでの意向把握とアセスメント、対応の経過まで記載する必要があります。これらの要件を満たすには、スタッフの教育と記録システムの整備が重要になります。
口腔連携強化加算の新設
2024年改定で新たに創設された口腔連携強化加算は、訪問看護と歯科医療の連携を評価する画期的な加算です。月50単位と単位数自体は大きくありませんが、この加算が持つ意味は重要です。
高齢者の誤嚥性肺炎予防や栄養状態の改善において、口腔ケアの重要性は年々高まっています。この加算を算定するには、利用者の口腔の健康状態を評価し、その結果を歯科医療機関と介護支援専門員に情報提供する必要があります。さらに、診療報酬で歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関と連携体制を構築し、文書で取り決めることが求められます。地域の歯科医療機関との良好な関係構築が、この加算活用の鍵となるでしょう。
確実に算定したい重要加算の実践ポイント
看護体制強化加算で事業所の質をアピール
看護体制強化加算は、事業所の総合力を示す重要な指標です。加算Ⅰでは月550単位、加算Ⅱでは月200単位が算定できます。この加算を取得している事業所は、緊急時対応、特別管理、ターミナルケアという訪問看護の核となる3つの領域で高い実績を持つことを証明できます。
加算Ⅰの算定には、緊急時訪問看護加算の算定率50%以上、特別管理加算の算定率20%以上、ターミナルケア加算の算定実績が前12ヶ月で5名以上、そして看護職員の割合が60%以上という条件を満たす必要があります。これらの条件をクリアすることは容易ではありませんが、事業所の質の高さを対外的に示す最良の方法であり、ケアマネジャーからの信頼獲得にもつながります。
特別管理加算の算定漏れを防ぐ
特別管理加算は、医療依存度の高い利用者へのケアを評価する加算ですが、意外と算定漏れが多い加算でもあります。加算Ⅰは月500単位、加算Ⅱは月250単位と決して小さくない単位数です。
重要なのは、利用者が対象状態に該当するだけでなく、計画的な管理を実施していることを明確に記録することです。また、24時間対応体制加算または24時間連絡体制加算の算定が絶対条件となっています。在宅悪性腫瘍患者、気管切開患者、留置カテーテル使用者などが加算Ⅰの対象となり、在宅酸素療法や在宅中心静脈栄養などが加算Ⅱの対象となります。定期的に利用者の状態を見直し、該当する方を見逃さないことが重要です。
専門管理加算で専門性を収益に変える
専門管理加算は月250単位で、専門研修を受けた看護師の価値を評価する加算です。緩和ケア、褥瘡ケア、ストーマケアの専門研修修了者や、特定行為研修修了者が計画的な管理を行った場合に算定できます。
特定行為研修修了者による加算算定は、今後さらに重要性が高まるでしょう。気管カニューレの交換、胃ろうカテーテルの交換、褥瘡の壊死組織除去など、特定行為を実施できる看護師の存在は、事業所の競争力を大きく高める要素となります。スタッフの研修受講を計画的に進めることをお勧めします。
見落としがちな減算への対応策
加算の取得に目が向きがちですが、減算への対応も同様に重要です。2024年現在、特に注意すべき減算が3つあります。
まず高齢者虐待防止措置未実施減算です。虐待防止委員会の定期開催、指針の整備、定期研修の実施、担当者の配置という4つの要件を満たさない場合、所定単位数の1%が減算されます。これは全利用者に適用されるため、影響は決して小さくありません。
次に業務継続計画未策定減算です。感染症や災害時の業務継続計画が未策定の場合、同じく1%の減算となります。BCPの策定は、減算回避だけでなく、実際の緊急時対応力の向上にもつながる重要な取り組みです。
最後に同一建物減算です。事業所と同一建物に居住する利用者へのサービス提供は効率的である反面、減算の対象となります。利用者の居住形態を把握し、正確な算定を心がけることが必要です。
訪問看護事業所の収益を最大化する戦略的アプローチ
加算・減算を理解することは、単なる点数計算ではありません。これは事業所の経営戦略そのものです。どの加算を優先的に取得するか、どのような利用者層をターゲットとするか、スタッフにどのような研修を受けてもらうか、こうした判断が事業所の将来を左右します。
まず現状を正確に把握しましょう。過去6ヶ月から1年の算定実績を分析し、取得できている加算と取得できていない加算を明確にします。次に、取得可能性の高い加算から優先順位をつけます。例えば、緊急時訪問看護加算の算定率が45%であれば、あと少しで看護体制強化加算の要件を満たせる可能性があります。
スタッフ教育への投資も重要です。専門研修や特定行為研修の受講支援は、短期的にはコストですが、中長期的には専門管理加算という形で回収できます。また、スタッフのスキルアップは、サービスの質向上と職員満足度の向上にもつながります。
地域連携の強化も忘れてはいけません。退院時共同指導加算や口腔連携強化加算の算定には、医療機関や歯科医院との良好な関係が不可欠です。日頃からの顔の見える関係づくりが、結果的に加算算定につながるのです。
介護保険改正と訪問看護に関するよくある質問
2024年改定で最も影響が大きい変更点は何ですか?
緊急時訪問看護加算の段階評価導入とターミナルケア加算の単位数引き上げが、多くの事業所に影響を与える変更点です。緊急時訪問看護加算(Ⅰ)を算定するには業務管理体制の整備が必要ですが、26単位の差は年間で大きな収益差になります。またターミナルケア加算が500単位増えたことで、在宅看取りへの取り組みがより評価されるようになりました。事業所の方向性や強みに応じて、どちらに注力するか戦略的に判断することが重要です。
加算算定のために最低限必要な体制は何ですか?
多くの重要加算の前提となるのが、24時間対応体制です。緊急時訪問看護加算や特別管理加算の算定には、24時間連絡体制または24時間対応体制の整備が必須です。また、定期的なスタッフミーティングの開催、個別研修計画の作成と実施、健康診断の実施など、基本的な事業所運営体制も多くの加算の要件となっています。まずはこれらの基盤を確実に整えることから始めましょう。
加算の算定状況を改善するにはどうすればよいですか?
まず現状の詳細な分析から始めます。どの加算がどの程度算定できているか、算定できていない理由は何か、要件のどの部分が満たせていないのかを明確にしましょう。次に、取得可能性の高い加算から優先的に取り組みます。例えば、緊急時訪問看護加算の算定率を上げるには、利用者への説明と同意取得の徹底が必要です。また、スタッフ教育や記録の充実など、体制整備に時間がかかる加算については、中長期的な計画を立てて取り組むことが大切です。
減算を避けるために今すぐできることは何ですか?
高齢者虐待防止措置と業務継続計画の整備を最優先で進めてください。これらが未実施の場合、全利用者に対して1%の減算が適用されます。虐待防止については、委員会の開催記録、研修実施記録、指針の作成、担当者の明確化を確実に行います。業務継続計画については、厚生労働省が提供するひな形を参考に、自事業所の実情に合わせた計画を策定しましょう。これらは減算回避だけでなく、実際のリスク管理にも有効です。
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まとめ
2024年の介護保険改正は、訪問看護事業所に新たな機会と課題をもたらしました。緊急時訪問看護加算の段階評価、ターミナルケア加算の引き上げ、口腔連携強化加算の新設など、重要な変更点を正しく理解し、自事業所の強みを活かした加算取得戦略を立てることが、収益の安定と成長につながります。
加算・減算は単なる点数ではなく、国の政策方向性を示すものです。これを理解することで、今後の事業展開の方向性も見えてきます。まずは現状を正確に把握し、優先順位をつけて一つずつ確実に対応していくことが大切です。スタッフ教育への投資、地域連携の強化、記録の充実など、基本的な取り組みを着実に進めることで、結果として加算算定率は向上します。
本記事で解説した内容を参考に、皆さんの事業所がより質の高いサービスを提供しながら、安定した経営を実現されることを願っています。改正への対応は大変かもしれませんが、それは同時に事業所の体制を見直し、レベルアップする絶好の機会でもあるのです。
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