「お風呂、どうしよう…」「家のお風呂で入れてあげたいけど、なんだか不安…」。在宅介護で誰もがぶつかる大きな壁が「入浴」です。身体を清潔に保つだけでなく、リラックス効果や血行促進など、入浴は利用者さんの心身の健康に欠かせません。でも、狭い浴室での介助は想像以上に大変で、滑って転倒したり、腰を痛めてしまったりするリスクも潜んでいます。
この記事では、そんな在宅介護の入浴にまつわる不安や悩みを解消するために、介護の専門家だからこそ知っている「失敗しない7つの秘訣」をまとめました。ただサービス内容を解説するだけでなく、要介護度別の選び方や知られざる注意点、そして介護者さんの負担を劇的に減らす具体的な方法まで、すぐに役立つ情報をたっぷりお届けします。ぜひ最後まで読んで、安心できる入浴方法を見つけてください。
在宅介護の入浴は3つの選択肢から選ぶ！特徴と費用を徹底比較
介護のイメージ
在宅介護で入浴をサポートする方法は、大きく分けて3つの選択肢があります。利用者さんの身体状況や、介助する側の負担度合い、そして費用などを考慮して、最適な方法を選びましょう。
自宅の浴室を使う「訪問介護」の入浴介助
まず、一番身近なのが「訪問介護」です。ホームヘルパーさんが自宅を訪問し、利用者さんの状態に合わせて入浴介助をおこなってくれます。浴槽をまたぐのが不安な場合や、体を洗うのを手伝ってほしい場合などに利用します。
メリットは、なんといっても住み慣れた自宅のお風呂で入浴できること。利用者さんがリラックスして過ごせるのが大きな利点です。費用も他のサービスに比べて安価な傾向にあります。ただし、利用者さんの身体状況によっては、自宅の浴室では対応できない場合もあります。例えば、浴槽をまたぐのが困難な場合や、浴室での自立歩行が難しい場合は注意が必要です。
専用の浴槽を使う「訪問入浴介護」と「介護予防訪問入浴介護」
自宅のお風呂での入浴が難しい場合に利用するのが、「訪問入浴介護」です。看護師1名と介護職員2名の合計3名が訪問し、自宅に専用の浴槽を運び込んで入浴サービスを提供します。
入浴に特化したデイサービス「通所介護（デイサービス）」
在宅介護の入浴は、実は施設でおこなうという選択肢もあります。デイサービス施設に通い、施設内の特殊浴槽を利用して入浴するのです。特殊浴槽とは、利用者さんが座ったまま入浴できる椅子型の浴槽や、寝たまま入浴できるストレッチャー型の浴槽など、身体が不自由な方でも安全に入浴できる設備のことです。
デイサービスの入浴は、利用者さんの身体状況に合わせて、専門のスタッフが介助してくれます。また、入浴だけでなく、食事やレクリエーションなど、他の利用者さんとの交流も楽しめます。デメリットとしては、外出準備や移動の負担があることです。利用者さんが施設に慣れるまで時間がかかることもあります。
要介護度別「入浴の選択肢」選び方ガイド
利用者さんの身体状況によって、適した入浴方法は異なります。ここでは、要介護度別にどのサービスが適切なのか、具体的な例を挙げて解説します。
要支援・要介護1～2の軽度者向け
要支援や要介護1〜2の方は、身体を自分で動かせる部分も多いため、「訪問介護」の入浴介助や「通所介護（デイサービス）」の利用を検討しましょう。自宅のお風呂で入浴介助を受けることができれば、利用者さんも安心できます。デイサービスも、他の利用者さんとの交流の場にもなり、心身のリフレッシュに繋がります。
しかし、足腰が弱って浴槽をまたぐのが難しくなった、一人で体を洗うのが不安になったなど、身体状況の変化に応じて入浴方法を見直す必要があります。そんな時は、迷わず担当のケアマネジャーに相談しましょう。
要介護3～5の重度者向け
要介護3〜5になると、自宅の浴室での入浴は難しくなるケースがほとんどです。そんな時は、「訪問入浴介護」が有力な選択肢となります。寝たきりの方でも、専用の浴槽で全身を温め、清潔に保つことができます。また、看護師が常時見守ってくれるため、体調の変化にもすぐに気づくことができます。
知られざる「訪問入浴介護」の真実｜なぜ要支援者にはほとんど利用されないのか？
「訪問入浴介護って、要支援でも利用できるって聞いたけど、あまり使われてないって本当？」
元の記事にもあったように、実は要支援者が利用する「介護予防訪問入浴介護」は、全国でも年間わずか5,079件と、非常に利用件数が少ないのが現状です。これはなぜなのでしょうか？
その最大の理由は、「介護予防訪問入浴介護の利用条件が厳格だから」です。厚生労働省は、利用者の身体状況が在宅の浴室では入浴が困難で、かつ他の介護サービスでは代替できないと判断された場合に限って、介護予防訪問入浴介護の利用を認めています。つまり、デイサービスや訪問介護など、他のサービスで入浴が可能な場合は、そちらの利用を促されるケースがほとんどなのです。
介護に関する疑問解決！利用者さん・介護者さんによくあるQ&A
在宅介護の入浴について、利用者さんや介護者さんからよく寄せられる質問にお答えします。
Q1訪問入浴介護は、要介護認定がなくても使えますか？
訪問入浴介護は、介護保険が適用されるサービスなので、要介護または要支援の認定を受けている方が対象になります。ただし、緊急を要する状況など、やむを得ない場合は認定申請中でもサービスを利用できる場合があります。まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しましょう。
Q2訪問入浴介護の料金はどのくらいかかりますか？
訪問入浴介護の料金は、介護保険が適用されるため、自己負担額は原則として1割（所得に応じて2割または3割）です。利用料金は、地域や事業所によって異なりますが、介護保険適用前の金額は1回あたり約12,000円（要介護者）です。
Q3訪問入浴サービスはどんなことをしてくれるの？
訪問入浴介護のサービスは、看護師1名と介護職員2名の3名が訪問し、自宅に専用の浴槽を運び込んで入浴をおこなうだけでなく、入浴前の体調チェックや、入浴後の皮膚状態の確認までおこなってくれます。
介護者さんの負担を劇的に減らす7つの秘訣
在宅介護の入浴で一番大変なのは、やはり介護者さん自身の負担です。入浴介助は、腰痛や転倒のリスクも高く、精神的にも疲れてしまいます。そこで、介護者さんの負担を減らす7つの秘訣をご紹介します。
- 自宅の浴室に手すりや滑り止めマットを設置する小さな工夫ですが、転倒リスクを減らし、利用者さんが安心して動けるようになります。工事を伴う場合は、介護保険の住宅改修費助成制度が利用できる場合があるので、ケアマネジャーに相談しましょう。
- シャワーチェアや浴槽内いすを活用する立ち座りが難しい利用者さんには、シャワーチェアや浴槽内いすを使うことで、安定した姿勢で入浴できます。これも介護保険の福祉用具レンタル・購入の対象になる場合があります。
- 利用者さんができることは、できるだけお任せする利用者さんが自分で洗える部分があれば、無理に介助せず、お任せしましょう。自立を促すことが、利用者さんの自信にもつながります。
- 無理をしない、完璧を目指さない毎日全身入浴にこだわらず、体調がすぐれないときは清拭（身体を拭くこと）だけでもOKです。時には専門のサービスに頼ることも大切です。
- 介護用品を上手に使うシャワーボトル、スポンジ、長い柄のブラシなど、さまざまな介護用品が市販されています。介護者さんが楽に介助できるアイテムを積極的に活用しましょう。
- 専門家である訪問介護員や看護師に助言を求める入浴介助のプロから直接アドバイスをもらうことで、より安全で効率的な方法を学ぶことができます。
- 介護保険サービスをフル活用する訪問介護、訪問入浴介護、デイサービスなど、さまざまなサービスを組み合わせて利用することで、介護者さんの負担を大幅に減らすことができます。
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まとめ｜「入浴」は利用者さんと介護者さん両方にとって大切な時間
在宅介護における入浴は、利用者さんの身体を清潔に保つだけでなく、心身のリフレッシュ、そして介護者さんとの大切なコミュニケーションの時間でもあります。
もし今、在宅での入浴に不安や悩みを抱えているなら、まずは一人で抱え込まず、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみてください。利用者さんの状態や家庭の状況に合わせた最適なサービスを一緒に見つけてくれます。
そして何よりも大切なのは、無理をしないことです。介護者さんの心身の健康が、利用者さんの安心にもつながります。専門のサービスを上手に活用して、介護を乗り越えましょう。
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