高齢者は重症化しやすいとされる新型コロナウィルス。
もし、ご利用者に感染してしまったら…。なんて思うだけでゾッとします。
2020年2月22日に、老人保健施設の職員(ドライバー)の60代男性が、新型コロナウィルスに感染していたことがニュースで報じられました。介護施設にもコロナウィルスの魔の手はもう来ています。
じゃあ、私たち、介護施設で働いている職員は今後どうしたらいいのか。現状できる対策はないのか。
介護施設の高齢者が感染するかしないかの感染拡大の瀬戸際が今です!
厚生労働省の発表している情報や各自治体の発表している情報を、紐解きながら介護施設が行わなければいけないことや新型コロナウィルスの危険にあわないためにできる限りの最良の対策についてお話していきたいと思います。
※この記事は、2020年2月25日に作成しました。新型コロナウィルスの最新情報については、WHOや厚生労働省の公式ホームページを参照してください。
厚労省が発表している情報を紐解け!
2月24日に厚労省は、「社会福祉施設等(入所施設・居住系サービスに限る。)における感染拡大防止のための留意点について」という通知を各自治体にしている。ちょっと文章が長いので、簡単に要約した文章を引用文の下に添えてあります。
職員、子ども、障害者や高齢者のみならず、面会者や委託業者等、職員などと接触する可能性があると考えられる者含めて、マスクの着用を含む咳エチケットや手洗い、アルコール消毒等により、感染経路を断つことが重要であり、「高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版」等を参照の上、対策を徹底すること。
職員は、各自出勤前に体温を計測し、発熱等の症状が認められる場合には出勤を行わないことを徹底すること。なお、過去に発熱が認められた場合にあっては、解熱後24時間以上が経過し、呼吸器症状が改善傾向となるまでは同様の取扱いとする。該当する職員については、管理者に報告し、確実な把握を行うよう努めること。ここでいう職員とは、利用者に直接介護サービスや障害福祉サービス等を提供する職員だけでなく、事務職や送迎を行う職員等、当該事業所のすべての職員やボランティア等を含むものとする。
面会については、感染経路の遮断という観点で言えば、可能な限り、緊急やむを得ない場合を除き、制限することが望ましい。少なくとも、面会者に対して、体温を計測してもらい、発熱が認められる場合には面会を断ること。
委託業者等についても、物品の受け渡し等は玄関など施設の限られた場所で行うことが望ましく、施設内に立ち入る場合については、体温を計測してもらい、発熱が認められる場合には入館を断ること。
高齢者、基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患)を抱える者又は妊婦については、37.5℃以上又は呼吸器症状が2日以上続いた場合には、保健所等に設置されている「帰国者・接触者相談センター」に電話連絡し、指示を受けること。これら以外の者は、37.5℃以上又は呼吸器症状が4日以上続いた場合には、保健所等に設置されている「帰国者・接触者相談センター」に電話連絡し、指示を受けること。
症状が継続している場合や、医療機関受診後、診断結果の確定までの間については、「高齢者介護施設における感染対策マニュアル(改訂版)」の P50からのインフルエンザの項での対応も参考としつつ、感染拡大に留意すること。
具体的には、
・疑いがある利用者を原則個室に移すこと。
・個室が足りない場合については同じ症状の人を同室とすること。
・疑いのある利用者にケアや処置をする場合には、職員はサージカルマスクを着用すること。
・罹患した利用者が部屋を出る場合はマスクをすること。
など。疑いがある利用者とその他の利用者の介護等に当たっては、可能な限り、担当職員を分けて対応すること。
※厚生労働省「社会福祉施設等(入所施設・居住系サービスに限る。)における感染拡大防止のための留意点について」から一部引用。
ちょっと長くなってしまってごめんなさい。要するに、2月24日の通知で厚労省が何を言いたいかをまとめるとポイントは5つです。
- 介護施設に来るすべての人は、「マスク」「咳エチケット」「手洗い」「アルコール消毒」をしなさい。
- 介護施設の職員やボランティアは、介護施設に来る前に体温を測りなさい。
- 面会は、緊急時以外はダメです。
- ご利用者で、37.5℃以上又は呼吸器症状が2日以上続いた場合は「帰国者・接触者相談センター」に電話。
- ご利用者が、疑われる症状が出たら隔離しなさい。
新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために、国が各自治体に対して発表した通知ですので、日本全国の介護施設が対応をしなければいけなくなります。
各自治体に出しているのであれば、関係ないと思う方もいらっしゃると思いますので、補足としてザックリ説明しますと、介護施設に指導する立場にあるのが各自治体なので、各自治体に通知されているということは、介護施設に指導という形で通知されるという図式になります。
(厚生労働省→各自治体→介護施設)
厚生労働省としても、介護施設の職員が新型コロナウィルスに感染した人がいたという事実を重く受け止め、指針として通知したと考えられます。
通知が出るまでは、面会については介護施設の方で対応を任されていました。面会謝絶にする場所もあれば、限られたフロアだけの面会を可能にして対応している介護施設もありました。
ですが、ここまで大々的に新型コロナウィルスについて対応をまとめた指針が出てしまった以上は、ご利用者の命の安全を守る為にも必要なことだと思います。
じゃあ、何すればいいの?
じゃあ具体的に職員やボランティアや委託業者や介護サービスを利用している家族が何をしなければいけないのか。
「職員、ボランティア、委託業者」と「ご利用者の家族」とで何をすべきなのか簡単に箇条書きにしてまとめました。
もし、何をしていいかわからない方は、参考にしてください。
- 毎朝検温(37.5℃以下で呼吸器系に異常が無いかどうか)
- 感染予防(マスク、手洗い、うがい、アルコール消毒をする)
- 体調管理(ご飯を食べる・睡眠をしっかりとる)
- 毎朝検温(37.5℃以下で呼吸器系に異常が無いかどうか)
- 感染予防(マスク、手洗い、うがい、アルコール消毒をさせる)
- 体調報告(今日の体調について介護職員に報告する)
介護施設や福祉施設のサービスを提供している人やサービスを利用している人はお互いの為、ひいては介護サービスに関わっているすべての人の為に箇条書きした3つは必ず行ってください。
新型コロナウィルス対応の介護業界の懸念点
2月24日に厚生労働省が通知した、新型コロナウィルス対応について、いくつか大きな問題に発展しそうな心配ごとがあります
- 面会ができない期間が長期化する
- 37.5℃以上というハードルが低すぎる
- 徹底や管理が困難
- 訪問介護の職員に負担がかかる
デリケートな内容であるがために、他のWEBサイトでは触れていなかったのかなと思いますが、「介護スタッフとしてちょっと切り込んで話しないといけないな」と感じたのでお話していきます。
面会ができない期間が長期化する
新型コロナウィルスが鎮静化するまで、面会の制限をしなければいけなくなります。
介護施設側からみると、別になんてことのないことです。むしろ、感染している可能性がある人を老人ホームなどの施設から遠ざけることができるので、とても安全かつ効果的です。
しかし、家族の立場を考えると会えないということは精神的に不安定になる原因になりえます。
もし、介護施設に入所している家族が37.5以上の発熱があると報告を受けた場合、多くの方が「コロナじゃないよね?」って思いますよね。
ご利用者の健康維持や生命を守る為ということで面会制限をかける。理屈はわかるが、人の気持ちは理屈ではどうにもならない場合があります。
面会できない状況が、長期化した場合に、人の気持ちのケアをどう考えていくのか。
介護施設のスタッフとして、ご家族の気持ちに寄り添って「問合せ」や「やり場のない怒り」をケアすることが重要です。←どこまでやればいいんだよ…。
面会ができない期間が長期化しているのは当たり前という考えで接していると、ご家族の心身を不安定にするだけですので、丁寧かつ適切な対応が必要です。
37.5℃以上のハードルが低すぎる
新型コロナウィルスと判断する要素が難しい以上、判断は間違っていません。
しかし、介護をしている人であれば1度聞いたことがあるかもしれませんが、感染症の疑いがある場合は38℃以上もしくは平熱より1℃以上の体温上昇を発熱ととらえます。10月~3月ぐらいはご利用者も体調不良になることが多いです。特に風邪やインフルエンザの流行期にもなります。そんな季節に検査キットもない中で、新型コロナウィルスと断定することが困難なのは当たり前ですよね。
また、国の指針である37.5℃以上って意外とハードルが低いので困惑しているかと思います。今までの感染症対策を再度検討しなおさなければいけない。新しく感染症対策を練ろうにも、国が指針を出してくれないと、動くに動けない。現場レベルで考えると、非常に微妙な設定で困惑する場面が増えると予測できます。
徹底や管理が困難
面会を制限したとしても、コロナウィルスに感染しないとは言い切れません。
職員や外部業者がコロナウィルスに感染していたら、ご利用者に感染する可能性はあります。
もちろん、検温して37.5℃以下で症状も出てないから、職員は出勤しているし外部業者もスタッフを派遣していると思います。
しかし、どこまで信じられるのか。誰の責任でどう管理するのか。
厚労省の通知文には管理者との記載があります。管理者という事は、老人ホームであれば施設長にあたります。企業であれば所長か社長ですよね。
「施設長が管理しろよ!」と記載はあっても、ただの責任を取る人と感じ取れる文面ですね。具体的に対応策を国や各自治体の高齢施設課がきちんと指導してあげなければいけないのに…。
責任を取るのは当たり前と思いますが、保守派の施設長であれば職員に対して過剰な対応をしそうな気がして、働いている身としては不安です。徹底や管理をきちんとやらなければいけない感染症対策において、あまりにも内容が弱いのは明らかです。
管理や徹底が難しいと思う理由は他にもあります。
介護施設でご利用者を隔離できる条件は、「確実に感染している」と認められる場合に限ります。
それ以外の場合は、身体拘束の概念からご利用者の行動の制限をしてはいけないことになっています。もちろん、ケースバイケースなので一概にすべてに当てはまるわけではありません。
厚生労働省は、「疑いがある利用者を原則個室に移すこと。」と示しています。私は、「この対応できる施設はどれだけいるのだろう。」と疑問に思っています。
なぜなら、空き部屋がある介護施設は限られているからです。特別養護老人ホームであれば、人気の為、空き部屋はありません。有料老人ホームや老健などでも空き部屋の調整をすることは困難でしょう。
隔離したくてもできない状況にある多床室タイプの老人ホームや空き部屋が無い介護施設は、感染者の疑いがある人が出た時どうしたらいいのか。
管理徹底が一番重要である感染症対策にもかかわらず、穴だらけの指針です。
訪問介護の職員に負担がかかる
今回のコロナウィルス介護業界の救世主になるのは、訪問介護で働いているヘルパーさんです。
コロナウィルスの感染拡大防止のために、デイサービスやショートステイなどで、今まで受け入れていた人も1度体調不良なども含め発熱をした場合、熱が下がった後は、訪問介護を進めるように行政からの指導がありました。理由は、疑わしき人物と濃厚接触するリスクを軽減するためです。
- デイサービスは多くの人が外部から集まる
=集団感染のリスクが高い - ショートステイは外部の人が入替が多い
=ウィルス感染した人を受け入れてしまうリスクがある - デイサービス+ショートステイ+コロナの疑い
=受け入れ拒否しろ
少しでも疑いのある人を、排除していこうというのは賛成ですが、その影響で、訪問介護のヘルパーさん達に負担がモロに集中します。
ババ抜きのように、別の人に押し付ける形になってしまっているので、訪問介護の職員に旨味を持たせられるように、補助金や助成金などで対応できれば良いですが、国としては当たり前みたいな対応なので不満が溜まって離職に繋がってしまう。担い手がいなくなってしまうリスクを含んでいます。
ただでさえ、介護業界は担い手不足で、苦しんでいます。この局面で訪問介護へ集中とまたイメージが悪くなったり、悪い噂が立つようになるので、訪問介護のヘルパーの手当や介護報酬を手厚くするなどしていかないと、ジリ貧になっていってしまいます。
まとめ
介護施設の新型コロナウィルスへの対応について現状できる対策としては、最良だとは思います。
しかし、懸念点はいくつかあります。
- 長期化すれば、面会できないことでご利用者やご家族の精神状態が不安定になる点
- 今までの感染症対策とは違うので現場に負担がかかる点
- 介護現場で徹底した管理をする為には、あまりにも国の指示が弱い点
- 訪問介護の職員がパンクする可能性がある点
つまり、現状の対策としては最良だけれども、完璧とは程遠い対応なので、今からでも先回りして対応していかないと4つの懸念点が現実のものになってしまいます。
介護と濃厚接触している者として、1人1人が感染症対策への意識を高めることが、新型コロナウィルスの拡散を防ぐ一番重要なことだと思います。しかし、心配な部分があることをあなたも感じているのではないですか?
こんな時だからこそ、介護の分野、日本の高齢者の感染症対策について、もう一度何がご利用者にとって一番最良なのかを追求していくのが介護のプロではないだろうか。私の心配事がただの杞憂で終わってくれることを願っています。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
この記事が為になったと思ったら、TwitterやInstagramもやっていますのでフォローしてくれたら嬉しいです。
コメント